緊急雇用安定助成金も12月1日から雇用調整助成金同様、助成率・上限額が変更になる予定だそうで。(11/2のリーフレットより)
そういえば、雇用調整助成金(以下、雇調金)については長々と書いていましたけれども、緊急雇用安定助成金(以下、緊安金)については書いていなかったなあ、と今日気づきました。この助成金の2つ、仕組み的にはほとんど同じなのであえて緊安金だけを取り上げているホームページも殆どないでしょうが、対象者が雇用保険被保険者かどうかだけの違いではないことは確か。そこで今回は、緊安金の支給要領から雇調金と違っている規定を書いてみることにしました。
1/16追記 12月末 緊急雇用安定助成金が令和5年3月末で終了予定と厚生労働省のHPで発表されております。
- 前段
- 休業の中身 支給要領0101
- 対象事業主 支給要領0301
- 対象労働者 支給要領0303
- 助成金の計算方法 支給要領0402
- 確認書類 支給要領0304
- 賃金の確認 支給要領0805
- 特例
- まとめ
前段
雇用調整助成金は、雇用保険法、雇用保険法施行規則の規定に基づいていますが、緊安金は職発0310第2号に基づきます。ちなみに「職発0310第2号」*1で検索しても検索の上位にはでてきませんでしたので、この通達の中身は不明。
休業の中身 支給要領0101
緊急雇用安定助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業を限定としています。雇調金はそもそもコロナの影響による休業に限定されていませんので、コロナの特例が終われば通常に戻るということになりそうですが、緊安金はコロナ対応が終われば終了*2。ちなみに緊安金は税金からでています。保険料を払っていない人が対象ですので雇用保険料からではありません。
対象事業主 支給要領0301
雇調金の場合は雇用保険適用事業所であることが必要ですが、緊安金の場合は雇用保険適用事業所でない場合もありうるので、労災の事業所も追加しています。労災加入の事業所=労働者がいる、ということだからでしょう。あと個人経営の農業の場合も規定があります。また、緊安金は生産指標の比較はありますが、雇用量要件の規定がありません。週20時間未満の労働者の数が増加するというのは、事業拡大というのではなく色々なパターンがありそうだからでしょうか。
対象労働者 支給要領0303
わかりやすいくいうと、原則、雇調金は雇用保険被保険者が対象で、緊安金は雇用保険被保険者以外の労働者が対象。尚、支給要領0303で対象外の人について細かく規定されています。日雇労働者や、退職・解雇予定の人が除外されるのは雇調金と同じですが、雇調金より対象外の規定が多いです。しかも、改正を重ねて対象外の人が増えています。対象外の規定は以下の通り。多分ここが一番ややこしいのではないかと。
イ雇用関係の確認ができない者
請負とか業務委託とか役員とか労働者でない人のことを言っているのでしょうが、表現上雇用関係が「ない者」ではありません。「確認ができない者」です。労働者であることがわからない人は対象外と読み取れます。推測ですが「確認できない」というのは、労働者ということは労働基準法等で作成が義務付けられている書類はあるよね?ということかと。ちなみに、雇調金にはこの規定はありません。雇用保険加入時に労働者であることを確認しているということかと。(代わりに、被保険者期間6か月未満という規定があります。)
ロ法人の取締役等
従業員から取締役になる時に雇用保険被保険者から外れます。(例外あり)
雇用関係でなく委任関係になるためです。では、雇用保険被保険者でない役員が休業した場合は緊安金の対象…とはならないです。なぜなら労働者でないので。この規定は役員は対象外だと念押ししているのかと思います。尚、雇用保険に加入できる役員もいますがその場合は雇調金の対象になりうるでしょう。あと、FAQを見るに個人事業主の同居親族とかも原則対象外です。なぜなら労働者ではないので(繰り返し)。雇調金も緊安金も、労働者の休業に関する助成金です。
ハ二ホ 省略(雇調金と同様であるため)
へト役員が、関係する他社で雇用された場合
この規定は雇用調整助成金と同じような規定ではありますが、コロナ前にはなかったと思われる要件ですので解説。(私、令和2年春ごろの支給要領がパソコンに保存しているんです。)
要領の文章は長いですが要はロの補足として、対象外である役員を別のグループ会社で労働者として雇用して(へ)、または、2つの会社でお互いに役員を交換しあって、交換先の会社で”労働者”として雇用して(ト)、緊安金(雇調金も同様)を受け取ろうとする場合は対象外となるという規定です。この規定は当初はなかったはずなので、この方法を使っていたところで問題でもあったんでしょうねえ。会社の役員が別の会社で雇用されていること自体は違法でないと思いますが、勝手知ったるグループ会社や知り合いの会社間で調整したうえでの雇用関係を作るのは対象外とするということでしょう。尚、この規定に出てくる業務取扱要領20351(1)を検索すると、どうやら労働者性があるかどうか判断する基準のようです。労働者であるかどうかは、この労働者性があるかないかと置き換えても過言ではないかと。
助成金の計算方法 支給要領0402
計算方法は、原則と小規模の特例。特例は雇調金と同じ。原則は、雇調金と違い、結論としての助成金総額は、特例でもかわらないであろうこと。(全事業所の計算をしたわけでないので、一致しない場合はあるかもしれません)。支払われた休業手当総額が計算のベースであること。労働保険申告書の労災のところの数値を使うのは適切とはいえないからでしょうか。要するに、労働保険申告書ベースの1日当たり平均賃金は正社員の賃金に近く、パートの職員と比べて高い。労働保険料申告書ベースで助成金を支払うと、パートの賃金を超えた金額になりうるでしょう。この差額が会社の懐に入るとなると、どんどん休業してしまう、ということに。
確認書類 支給要領0304
雇調金と微妙に違います。例えば、労働者本人の氏名/年齢/住所が確認できる書類が規定にあります。雇調金の場合、雇用保険被保険者の人は雇用保険被保険者番号があり、加入/喪失手続きが義務付けられており、おそらくデータ管理をされているため一人につき一つの事業所でしか加入できないはず(原則)ですが、緊安金の場合は、雇調金のように申請書に番号を記入する欄がありません。よって、その労働者が実在するかどうか確認するためでしょうね。マイナンバーは使わない、もしくは使えない?
賃金の確認 支給要領0805
最後の2行*3が特殊。雇調金と違います。前半は、助成金の申請により休業と就業の1週間の所定労働時間がわかるので、雇用保険の加入要件である週20時間以上の労働日(休業する時間)がある場合は、そもそも緊安金で申請する以前に、雇用保険の加入手続きをするものだということかと。(学生等例外除く)後半は労働関係法令違反についてですが、これは最低賃金法違反とかが入るのだと私は思ってます。他もあるかもしれませんが、事案処理という言葉がおっかないのであまり触れないでおこうと思います。
特例
緊安金自体が特例みたいなものなのに、さらに特例があるのがコロナ対応の予測できなさを物語っている気がします。特例自体は雇調金と変わらないので省略。尚、最低賃金に関しての休業規模要件の特例も令和4年3月31日で終了しているようなのでこれも省略。
まとめ
ややこしいのは対象労働者が誰かと、シフト制の場合の休業日、休業時間の指定でしょうか。知り合いに、労災保険に加入している者は全員”緊安金”の対象労働者だという主張をする人がいましたが、どこを読んでもそのような規定は見つかりません。それに労災というのは、雇用保険と違い誰が労災に加入してるというような届け出の必要はない。労災の保険料の計算のベースにその人の給料を入れたからといって加入したといえるだろうのか?…正直、知り合いの主張があっているかどうかは私にはわかりません。
雇調金と違うのは、助成金の計算方法/確認用の書類/休業だけで教育訓練と出向がないこと。理由は恐らく週20時間未満の労働者にする教育訓練とは?通常の業務に関連したものは対象ではないですし。それに週20時間未満の労働者を出向させないだろう、ということかと。
以上。3000字超え。
雇調金と緊安金、名前の変換ミスしまくりで何度も書き直しました。"きんあんきん"と入力しても当然変換されない。