けーせらーせらー

仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

パワハラの加害者にならない為には、パワハラとは何か学習を。

今回はパワハラの加害者にならないための話。
前置きです。当然のことですが、パワハラを容認しているわけではありません。加害者に認定されるのを避けるテクニックを伝授、という意図は全くありません。パワハラがなくなればいいと思っています。
今回の記事を書く発端について。パワハラで訴えられるのを恐れた管理職が必要な指導を放置している事案を見聞きしたから。その結果、誤った行動を放置すれば、下手をすれば事故につながりかねない。では、そこまで管理職を委縮させているパワハラとは何ぞや、と改めて整理した次第です。
以下の記事は私のアウトプットであり、私見です。尚、私は弁護士ではありません。パワハラについては検索すると色々なHPで確認可能です。専門知識の習得や、事業所側として対応や、実際に被害にあわれた場合の対応は今回の記事では書かれていません。
何度も言います。パワハラを容認しているわけではありません。ですがパワハラという言葉に委縮しないためにはパワハラというものを理解する必要があると思い記事を書きます。ですが実際被害にあわれた方にとっては気分を害する記事になるかもしれません。なので、ここからはバックを推奨します。

パワーハラスメントが世に広まって久しい。暴力が減ること、上司のガン詰め、過剰なノルマとノルマ未達成時の脅迫、過酷な労働が減っていくことは望ましいことである。
だが、勘違いする人が発生するのも世の常。自分の考えとは違う仕事の指示を受けた時もパワハラ、自分のミスを指摘されただけでパワハラ、無断欠勤を咎められただけでパワハラと訴え始める人もでてきた感がある。パワハラを日本語にすると、力による嫌がらせ。自分のプライドが傷ついたことで成立するものではないのだが、改めて職場でのパワハラとは何か、整理したい。

職場のパワハラには、3要件(概念)と6つの行為を定義している。

まず、3要件について

職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる
①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるものであり、
①から③までの要素を全て満たすものをいう。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。

管理する立場と管理される立場、上司と部下の関係の場合は①に該当しやすい。②も暴力はもってのほかだが、言葉の暴力は感情のまま発言をすれば該当する可能性がある。③の就業環境が害されるというのは、一人一人の感情がどうであるかが基準ではないが、場合によっては該当する可能性がある。
また、要素が満たされるのは、上司の主観でも、部下の主観でもない。客観的に見て判断されるので、その意に反して①②③すべて該当する”可能性”がある。だから委縮する。

さて、世の中には色々な人間がいる。仕事をさぼる者に対する必要な指導はあてはならない事例としてとりあげられており、暴力を振るうなどを除き、該当する確率は低い。
タチが悪いのは、「真面目で一生懸命だが、その職務に適性がないタイプ」「正義感または心配性が強すぎて、先走ってしまい組織的行動から外れるタイプ」への対応である。このタイプの行動が周りの同僚やお客にも悪影響をあたえてしまう場合は要注意である。放置しておくと、お客や他の従業員への悪影響も懸念される。管理職としてはそこを軌道修正していく必要があるが、こういうタイプの従業員は、なぜ正しいことを直すよう指導されるのかと思われ、伝わらないケースもある。

この場合、どうすべきか。管理職としては、強い言葉をもって指導するか、指揮命令権を行使せざるをえまい。その行動をなんとかしてやめさせないといけない。
しかし、その強い言葉での指導が、指揮命令権の行使が、結果としてパワハラとして訴えられてしまう恐れがある。相手にとってみたら正しいことを止められ、誤ったことを強要してくるからである。パワハラの要件にも当てはまると判断して訴えてくるのである。

さて、自分が管理者の場合どうするか。自分がパワハラの加害者として訴えられることも覚悟して腹を据えて指導するか、または放置するか。

ちなみに会社、組織、自分の上司は訴えられた場合自分を守ってくれないものと考えてくれた方がいい。上記のパワハラの定義を見るとわかるように、客観性、相当性、必要性、という定義はケースバイケース。誰もあなたの行為は大丈夫と事前に太鼓判を押してはくれない。最終的には、双方の意見を踏まえての裁判での判断になる。

どうするかは、最終的に管理職としてのあなたの判断である。パワハラで訴えられるのを恐れて放置した結果、その部下が他人の身体や財産等に損害を与える重大なミスを引き起こし、あなたの監督責任を問われても、それはあなたの判断の結果である。就業規則にきちんと定義している会社は今は多いが、それは絶対ではない。

では、指導し是正を促すことを決断した場合、次にパワハラに該当する行動、6つの分類をまずは確認する。

①身体的な攻撃
②精神的な攻撃
③人間関係からの切り離し
④過大な要求
⑤過小な要求
⑥個の侵害

①の身体的な攻撃は、要するに暴力である。物にあたる場合も該当する。ただ、これはわかりやすい。暴力を振るわなければいいのだから。

②の精神的な攻撃は、まずは「言葉のチョイス」である。指導する際に、バカ、お前はダメだ、サルでもできる、などの差別的侮辱的な言葉をチョイスしなければいい。そして、毎日、または長時間にわたって同じ内容で叱らない。的確な言葉、簡潔、タイミングを見計らって叱る。また意味不明な懲罰を課さない。就業規則の書き取りをさせる、などはこれに該当するためである。①よりはるかに該当する要件が多い。ついカッとなってとか、自分の腹の虫がおさまるまで叱るというのはやめた方がいい。

③の人間関係からの引き離しは、具体的にはその担当から一人だけ外す、という行為が該当する。安全に関する緊急対応以外では、仕事を一人だけ外した結果、する仕事がなくなるというのは避けたほうがいいだろう。それなら、担当替えや異動を考えたほうがいい。

④の過剰な要求は、高いノルマや、業務を遂行するために長時間労働休日労働を強いる結果になる場合があてはまるだろう。世間的に認知されるパワハラはこの④と①であろう。ただその”ノルマ”、”求める成果”が”高い”かどうかというのは判断が難しい。扱う商品、本人の経験、会社の状況によって異なるであろうから、全社全労働者一律の線は引けないからである。尚、長時間労働は、今は法令で明確なラインが引かれたので、それをオーバーしないよう心がける。長時間労働をしていたとは知らなかったではすまされない。労働時間にしろ、求める成果にしろ、適切なラインを部下とのやりとりを通じて引く、というのは管理職という職に求められる仕事であろう。怠ってはいけない。

⑤の過小な要求は、要するに虐めに近い扱いか、懲罰のような仕事のことが該当するのだろう。想定に反して、結果的にその人には簡単すぎた仕事だったというだけでは該当しないのではないか。その結果を知りつつ長期にわたり、その仕事しか与えなかったというなら話は別だが。言葉の定義どおり、いじめ、嫌がらせになっていないか、確認する。

⑥の個の侵害を避けるのは、本人が話そうとしないプライベートにむやみに踏み込まなければいい。飲み会に無理に誘わなければよい。

さて、今回のケース。真面目だが適性がないか、暴走するタイプへの対処である。
指導する場合は②の精神的攻撃に当たるのかどうか確認する。与えた仕事が④過度なのか⑤過小か確認する。指導しても従わない場合、やむを得ず担当から外した場合に③人間関係の切り離しになるかどうか確認する、といったところか。繰り返しになるが、パワハラにあたるかどうかは客観性と相当性が大事な要素なので、だれも事前にこの指導なら大丈夫と太鼓判はおせない。

私見になるが、指導に関してはもう腹を括ってするしかないと思っている。そもそも私はこれまでに会社や社会から自分が受けた理不尽としかいえない行為と結果から、はなから会社や社会が自分を助けてくれるとは思っていない。自分は叱る時は、短時間で、間をあけて、特定の人に偏らないよう心掛けている。怒りの感情が発生した時に、即座に怒りにまかせて発言するのは避けようと思っている。なので、アンガーマネジメントを自己流で学習している。それでも、怒らないといけない場合はある。(これは以前の記事に書いたので省略)怒った結果、訴えられるならばそれも仕方あるまい。
ただ、③④⑤は最近、誰かと相談したうえで適宜決めるほうがいいだろうと思っている。一人の判断は絶対に感情が入るし、人の評価も人それぞれで、個人の偏見というのは必ずあることがわかってきたからだ。自分が絶対正しいと思いあがってはいけない。

さて、これまで上司側に対する話であったが、自分が部下として、被害者になったと思った場合も少し触れる。私は当然考えている。私はもう今は我慢せず、声をあげている。それで干されようが、退職することになろうがかまわない。仕事に殺されてたまるか。

結局、上司だろうが、部下だろうが、自分を大事にすることが最優先である。自分が犠牲になれば、自分が我慢すれば、という考えは、自分が生きてこそだ。

また、ニュース等でお見掛けする、パワハラにより被害にあわれた方達のことを忘れてはならない。推測だが、3要素と6つの行為は過去の事例を踏まえ定義されたのではないか。①暴力、②研修と称した人格否定、③1人部屋、④過大なノルマ、寝る時間もない残業、新人のレベルを無視した膨大な職務⑤シュレッダー係、⑥プライベートへの過干渉。過去の悲劇があったから、パワハラが法令で禁止されたことを忘れてはいけない。

最後に。くれぐれも、会社のため、会社のルールに沿って、などという大義を掲げて自分の行為を正当化しないことである。そういうときに悲劇が起きる。そもそも、会社のためという考えなんぞ、国のため、といって戦争を仕掛けているどこかの独裁者と同じである。もし自分の行為が会社のためとしか説明できないのならば、その指導は一度立ち止まったほうがいい。