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雇用関係助成金の私見㉔ キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース(前編)

今回から3回に渡って、年収の壁突破という強い言葉で華々しく登場したキャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」についての記事を書くことにした。

さて令和6年度版のパンフレットを今年になってから初めて見た。本当に「キャリアアップ助成金」なのか?と思うぐらい、大分見やすいパンフレットになっているし、漫画版まで作るし、総理大臣のYouTube動画まで作る力のいれようである。だが…

先に私なりの結論を述べる。

会社にとっては、”現時点”ではこの助成金ができたこと、この助成金の獲得を目的にした、この助成金の支給要件を満たすための賃上げや所定労働時間の延長をするメリットはほとんどないと思う。

当然これでは言葉足らずなので若干の追記をするが、一旦記事を区切る。

もしこの助成金のこのコースを利用するメリットがあるとしたら、この要件に当てはまるような対策を、この助成金の存在の有無に関係なく実施する予定であった会社ぐらいだろう。あと、私は日本のすべての会社の状況を理解しているわけではないし、こういう場合だとメリットがあるのか、という事例があるかもしれないので、絶対必要ない、と言い切れいない。

もう少し【社会h兼適用時処遇改善コース】について、踏み込んでみる。このコースは【手当等支給メニュー】、【労働時間延長メニュー】、【併用メニュー】の3つのメニューがある。

なぜ、3つわかれているか?ザックリいうと、年収の壁対策として、手取り額が減った分を①賃金を上げることで補うか、②労働時間を延ばすことで補うか、の2パターンがある、ということである。併用は文字通り①と②のミックス型である。

手当等支給メニュー

こちらが上記①の賃金アップにより手取り額を解消させる方法である。今回、年収の壁対策として、標準表報酬月額、賞与額に算入しなくても良い賃金として【社会保険促進手当】というのが登場した。

労働者にとっては賃上げしてもらうことは良いことではあるが、会社側にとっては賃金負担額が増えるばかりで金銭的メリットはほぼないといってよい。助成金はその会社が負担する額をすべて補う金額ではない。

労働保険料は、労災の時とか、雇用保険は、助成金と、離職による労働者とのトラブルを失業保険とう存在により減らす効果があり、会社にもメリットがあるが、社会保険に関しては会社にとってはメリットがない。そもそも、社会保険料を会社が折半して負担すること自体が変な話であり、業務外の病気、介護、退職後の年金は労働者の懐に入るもので会社には金銭的メリットがないといっても過言ではない。よって、わざわざ会社が積極的に社会保険料の負担を背負おうとするメリットはない。

そもそも、従業員の確保のため賃上げするのならば、社会保険に入らず賃上げした方が労働者の手取り額は増える。

労働時間延長メニュー

パートの所定労働時間をたかだか数時間延ばして賃金もあげてまで社会保険料負担を背負うならば、また事務負担を増大させるならば、助成金に関していえば、いっそのこと所定労働時間を延ばして正社員を増やして「キャリアアップ助成金」の「正社員化コース」を狙うか、特定求職者雇用開発助成金や、トライアル雇用助成金などの雇い入れの助成金の方を検討した方がいいと思う。

私は去年からの「キャリアアップ助成金」の「正社員化コース」の助成金額アップはそういう狙いだと思っている。エビデンスはない。

まあ、会社側にとって見たら、労働時間が延長したことにより年収、月給が増えることは当然と言えば当然なので、手当等支給メニューよりは手がだしやすそうではある。

ただし、労働者側からみたら、労働時間が増えても手取りが変わらないならば、実質時給換算で賃下げである。

ただし、このコースを事前に理解しておいても損はない

年金の制度は変わる可能性がかなり高い。今年度から議論が開始されていて令和7年度末までには年金制度の改正(改悪)が決まる可能性が高いこと、また、総理大臣が助成金について動画をあげていたり、わざわざ計画届受理件数を公表したりしていることを考えると、今後利用率が低ければ、助成金にさらなる変更がある可能性、テコ入れがある可能性、厚生労働省の営業攻勢(または強引な強制)がある可能性があるので、このコースの理解と今後の動向を注視しておくことはなんら損はないと思う。

あと、130万円の壁については、12月の繁忙期でのパート労働者の労働調整に頭を悩ませている会社は価値がありそうなので、検討する価値はある。ただ2年間限定。2年後に何があるかというと、おそらく前述の年金改正。そういったところも含めて将来的なことを視野にいれておく必要があると思う。

まとめ

身も蓋もないことを言えば、年収の壁をそう簡単に解消できるのならば、もう〇万円の壁の問題が言われ始めたころには対応し、解消できている。会社、労働者双方への追加負担なしでは解消できないから、今でも壁が残っている。

ちなみに、年収の壁をなくす方法は政府はわかっている。それは、健康保険料の非扶養者の保険料負担なしと、国民年金の第3号被保険者をなくすこと。つまり、会社・配偶者である被扶養者に追加負担させること。これを令和7年度以降に実施する(段階的な廃止も含む)かどうかが、焦点である。といっても、それを強行したら国民の反発は必至だし、政治的に実行できるかは別の問題である。

しかし、年収の壁突破、と強い言葉を使っている割には解決策としては微妙であり、とても突破できているようには思えないのだが…。

さてこのコースや、各メニューのもう少し詳しい記事は別説明にて。

 

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