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雇用関係助成金の私見㉘ 賃金要件・資格等手当要件

雇用関係助成金私見。今回は、主に人材開発支援助成金の中の一部のコースと人材確保等支援助成金の建設関係のコースで適用される【賃金要件、資格等手当要件】についての記事である。

助成率を上乗せする仕組みとしてはかつて【生産性要件】というものがあったが、これが令和4年度をもって廃止され、代わりに【賃金要件】【資格等手当要件】というものが令和5年度から登場した。

つまり、通常の助成金に上乗せできる要件が「生産性向上」から「賃上げ」に移ったということである。

この上乗せ要件がどのようなタイミングで行われているかの私見の記事である。

生産性要件

雇用保険被保険者1人当たりの利益額が行為を実施した年と3年前(助成金のコースによっては3年後もあるので注意。)と比較して上昇した場合に加算。

尚、1人当たりの【生産性】工場は、1人あたりの【営業利益】向上と似たようなものだが、助成金における【生産性】は厳密には【営業利益】とは異なる。

というのも、この【生産性】は、【営業利益】から人件費と減価償却費やリース料などは費用に含めないで利益計算する独自の計算方式を採用しているからである。【生産性向上】とはどういう仕組みか、というのはまだ計算式のExcelが「業務改善助成金」ホームページで残っているので、そちらでの計算式を見たほうが早い。

何が言いたいかと言うと、営業利益の場合、人件費を減らしたり、設備投資を減らし減価償却費やリース料を減らすことで営業利益を増えるが、この助成金上の【生産性】には加味されない。助成金が人件費、設備投資を減らすことを誘導することを防ぐためなのだと推測する。

尚、生産性要件については令和4年度をもって廃止されたとリーフレットに書いてあるが、「業務改善助成金」では廃止されずに残っている。また令和4年度に開始(計画届を提出)した助成金についてはまだ申請可能なものもある。「業務改善助成金」だけ残しているのが当初不思議だったが、業務改善助成金は「生産性向上」に資する設備投資への助成金でもあるので、上乗せとしては生産性が向上しているかどうかの方が適切だし、賃上げしないと業務改善助成金は受給できない。

また、キャリアアップ助成金の正社員化コースにはこの【生産性向上】の上乗せがあったが、生産性要件が廃止された後に【賃金要件・資格等手当要件】は適用されていない。恐らく正社員化コースが【賃上げ】を要件としていて被っているからであろう。かわりに【人材開発支援助成金】による【教育訓練、職業訓練】を実施すると上乗せされる。以前もあったが、対象となるコースが拡大している。

賃金要件・資格等手当要件

ザックリいえば、賃上げしたら加算しますよ、という要件。

通常のものを申請した後に、賃上げ要件を満たした場合、後日申請する形になっている。尚、おおもとの助成金が不支給の場合は当然加算されない。建設関係の助成金は解雇要件がないものが多かった記憶があるが、この上乗せ加算については解雇要件があるので注意。

今回の記事作成の趣旨

わたしはこの賃上げ要件としての【賃金要件】【資格等手当要件】というのがよくわかっていなかったのでこれまで記事にしなかった。具体的には、この2つの要件の”区別”がつかなかったからである。

【賃金要件】には基本給が、【資格等手当要件】は手当が上昇する区別なのか?と最初は思ったが、【賃金要件】にも手当は含まれるし、【資格等手当要件】も賃金総額の比較なので基本給も含まれる。しかし要件を満たす上昇率は賃金要件は5%アップ、資格等手当要件は3%アップで違いがある。

ちょっと何言っているかよくわからなかった。

しかし、最近もしかしてこういう意味じゃないか、とふと読んでいて気づいた。おそらく、1枚紙のリーフレットだけを見ていたからピンとこなかった。

以下、私見ではあるが説明してみたい。尚、今でも疑問が解消されていないこともあるので、それは疑問点として書いておくことにする。

用語の定義

まずは、この要件についての用語の定義を確認したい。小さい字ではあるが、この用語の定義を確認することでこの区別が、意味あいが朧げに見えてきたためである。定義は、人材開発支援助成金、人材育成支援コースの支給要領から引用する。

賃金の定義・・・労働基準法11条の賃金のことではない。

06014イ

対象労働者の毎月決まって支払われる賃金(06014、06053、06055及び06067で「賃金」とあるのは「毎月決まって支払われる賃金」のことをいう。)

1枚のリーフレットでは賃金総額の比較と書いてあるが、上記の支給要領をみるに、この”賃金”総額というのは、毎月支払っている賃金の総額、という意味だろう。そりゃそうだ、単純なその月の賃金の総額の比較ならば、例えば残業代を増やせば、つまり時間外労働を増やせば達成できることになる。そういう意味ではないだろう。

繰り返しになるが、この要件における【賃金】というのは、上記のとおり、【毎月決まって支払われる賃金】のことをいう。

労働基準法11条において賃金とは、”労働の対価”として使用者から労働者に支払われるすべてのもの、と規定されているが、この助成金の要件”賃金”はすべてのものではない。

具体的には残業代、歩合給など変動するものや、家族手当や住宅手当など個人の事情によるものは含まれない。よって、この要件における【賃金総額】というのは、給与明細上の総支給額とイコールになるとは限らない。(基本給と固定の手当だけだとイコールになる場合がある。)

毎月決まって支払われる賃金

以下、引用。

0200定義 な 毎月決まって支払われる賃金        

基本給及び諸手当をいう(労働協約就業規則又は労働契約等において明示されているものに限る。)。

諸手当に含むか否かについては以下による。

(イ) 諸手当に含むもの

労働と直接的な関係が認められ、労働者の個人的事情とは関係なく支給される手当

役職手当、資格手当、資格ではないが労働者の一定の能力に対する手当等)。

(ロ) 諸手当に含まないもの   

a 月ごとに支払われるか否かが変動するような諸手当

(時間外手当(固定残業代を含む)、休日手当、夜勤手当、出張手当、精皆勤手当、報奨金等)          

b 労働と直接的な関係が薄く、当該労働者の個人的事情により支給される手当

(家族手当(扶養手当)、通勤手当、別居手当、子女教育手当、皆勤手当、住宅手当等)

(ハ) 上記(イ)、(ロ)以外の手当については、手当ての名称に関わらず実態により判断するものとする。

ただし、

上記(イ)に挙げた手当であっても、月ごとに支払われるか否かが変動するような手当と認められる場合は諸手当から除外し、

上記(ロ)に挙げた手当であっても、例えば以下のように、月ごとに支払われるか否かが変動しないような手当は諸手当に含めることとする。        

a 扶養家族の有無、家族の人数に関係なく労働者全員に対して一律支給する家族手当     b 通勤に要した費用や通勤距離に関係なく労働者全員に対して一律に支給する通勤手当 c 住宅の形態(賃貸・持家)ごとに労働者全員に対して一律に定額で支給する住宅手当

要するに、基本給+労働に関する固定手当が対象。上記(ハ)については、時間外計算などの際のおおもとの給料に含まれる手当に似たようなものだと思う。

尚、下記の資格等手当は、この毎月決まって支払われる賃金に含まれるということになるし、賃金総額にも含まれることになる。

資格等手当

0200ら 資格等手当

訓練実施後において、実施した訓練及び職務に関連した資格、知識又は技能を有している者に対して”毎月決まって支払われる手当”

人材開発支援助成金における訓練は職務に関するものでないと基本ダメだし、専門知識やスキル=技能を取得するものでないと基本ダメなので、こういう表現になったのだろう。

具体的には月10,000円とかの資格手当、技能手当、職務手当などが該当するだろう。そして職務・資格・技能を有しているという理由ではない手当、例えば”皆勤手当”を創設して支払ったとしても、資格等手当には該当しない。

尚、私はいまだ解消していない解釈がある。

それは上記の”及び”をどう解釈すべきかである。

つまり”及び”である以上、訓練+資格 or 知識 or 技能で、訓練に無関係で支給された資格手当はこの”資格等手当”に該当しないと解釈していた。だが、下記建設用のガイドブックから引用を見ていただくとわかるように、実施した訓練について記載のないもの定義のものもあり、訓練に無関係であっても対象になりうるのではないかとも今は思っている。

 資格等手当とは、職務に関連した資格、知識または技能を有している者に対して毎月決まって支払われる手当をいう。

要件の違いは、比較する起点である。

賃上げしたかどうか、つまり賃金の上昇率は、【どこかの地点を基準として】その前後を比較することにより判断することになる。その基準地点がこの2つの要件は明確に違う。

ざっくりいえば、この2つの要件の大きな違いはその起点となる要件である。

賃金要件

訓練終了後の1年以内に【賃金改定】をしたタイミングが起点となる。つまり改定日を基準として賃金改定前3か月と賃金改定後3か月を比較する。その差が5%アップしていれば達成。

つまり賃金要件というのは、基本給か固定手当の改定(増額)を契機とした、賃金総額の賃上げのことを指す。

資格等手当要件

訓練を受講したことによって訓練受講者が”新たに”取得できる手当を起点として比較する。

資格”等”手当というのは資格手当だけではないという意味。例えば、その訓練によって資格を取得したのならば資格手当になるが、その訓練によって新たな職務に就くことができるようになった場合の職務手当も資格”等”手当に該当する。

その資格手当などを取得した時期を起点として、その手当取得前3か月とその手当取得後の3か月を比較する。その差が3%アップしていれば達成。

つまり、資格等手当要件と言うのは、訓練等が修了した後に新たに資格、職務、技能に関連した手当が支給されることを契機とした、賃金総額の賃上げのことをさす。

違い 資格等手当要件は、就業規則などにあらかじめ規定する必要があるが、賃金要件との違いはあるか?

資格等手当要件

以下、引用。

06014ロ 資格等手当要件

資格等手当の支払について就業規則労働協約又は労働契約等に規定をした上で、訓練修 了日の翌日から起算して1年以内に全ての対象労働者に対して実際に当該手当を支払い、 賃金を3%以上増加させていること。

つまり、では根拠なく、資格手当を支給しましょう、というのはダメ、ということ。そして、後付けで就業規則等に規定してもダメ、ということ。

気になるのは、上記太字で書いた、”又は”。つまり就業規則労働協約に規定がなくても労働契約に規定があればよいということになるのではないか?

賃金要件

以下、再び引用

06014イ 賃金要件

対象労働者の毎月決まって支払われる賃金について、訓練修了日の翌日から起算して1年以内に、5%以上増加させていること(賃金改定後の最初の賃金支払日が訓練終了日の翌日から起算して1年以内に含まれている必要がある。)。

先ほどにも書いたが、賃金要件は賃金”改定”前後での比較である。その改定については、例えば昇給月とかそういう規定はなく、改定の根拠をあらかじめ示す必要はなさそうだ。要するに、訓練修了から1年以内に賃金改定により賃上げした給料を支払っておけばよい。

ただし、上に赤字に書いてある通り、毎月決まって支払われる賃金が対象である。基本給をアップすれば問題なかろうが、たとえば資格等手当に該当しない固定手当を改定した場合はどうだろうか?例えば特別手当とか、危険手当とか、処遇改善加算手当とか、会社独自の〇〇手当とか、あらたに作った手当とか。

これについては、再び毎月決まって支払われる賃金の定義を引用。

0200定義 な 毎月決まって支払われる賃金        

基本給及び諸手当をいう(労働協約就業規則又は労働契約等において明示されているものに限る。)。

そう、諸手当は、資格等手当と同じで就業規則等に明示されている必要がある。となると、この両者の違いはあるのか?。

あるとすれば基本給であるが、この赤字の”限る”が基本給にかかるかどうかであろう。私は昇給に関しては労働契約の絶対的明示事項でないので、この”限る”はあくまで諸手当にかかるのではないかと推測しているが、この要領を読む限り基本給がアップしたことを雇用契約書で確認できないといけないのではないかとも思っている。

よって、この違いについては?と表記した。

違い 提出書類の違い

支給申請時に添付する書類は以下のとおり違っている。

ヘ 賃金増額改定前後の雇用契約
 (賃金要件の場合のみ

ト 賃金増額改定前後3か月又は資格等手当支払前後3か月の賃金台帳等

チ 資格等手当について規定をした労働協約就業規則又は労働契約
 (資格等手当要件の場合のみ

資格等手当は就業規則などで規定しておく必要があるからであろう。一方、賃金要件は賃金を改定すればいいのだから、その前後の雇用契約書等が必要となる。

そして、?となった。雇用契約書と労働契約等は何がどう違うのか?と。

現時点で私にはその違いが不明である。

同じ 比較する賃金総額の中身の違い

賃金要件、資格等手当要件、どちらも【賃金総額】を比較する。改定(増額)された基本給や固定手当、新たに支給された固定手当を比較するのではなく、それらはあくまで比較することのできる要件であって、賃上げしたかどうかの確認はどちらも【賃金総額】である。

以下、伝えやすくするため具体例を挙げてみる。尚、達成・未達成と表現しているのは私なりの理解であるので、あっている保証はない。鵜呑みにせず、正解は労働局や専門家に確認してほしい。

賃金要件 具体例

前      基本給 20万円+役職手当5万円=25万円

賃金改定 基本給 21万円+役職手当5万円=26万円

賃金総額 (26万円×3か月)÷(25万円×3か月)=1.04 → 4%アップ

基本給   (21万円×3か月)÷(20万円×3か月)=1.05 → 5%アップ

基本給を改定し5%アップさせても、賃金総額の上昇率が5%未満なので未達成である。

資格等手当要件 具体例

前      基本給 30万円+役職手当5万円 +資格手当制度なし=35万円

賃金改定 基本給 30万円+役職手当5万円+資格手当1万円=36万円

賃金総額 (36万円×3か月)÷(35万円×3か月)=1.02 → 2%アップ

該当手当のみ  1万円増額 → 0からなので割り切れない。

手当のみ (6万円×3か月)÷(5万円×3か月)=1.2 → 20%アップ

資格手当を増やし手当を3%以上増額させても、賃金総額は3%未満の上昇率なので未達成である。

尚、小数点の処理(切りあげ、きり捨て、そのまま)は不明。例えば、上昇率が4.66%だったりするときに、小数点切上で5%になるかどうかは不明。

違い 教育訓練休暇付与コースは開始の起点が違う

最初の説明で比較する地点を書いたが、基本的には訓練終了後の翌日から起算して1年以内にその地点およびその地点に関する賃金の支払い日がないとダメである。

ただし、教育訓練休暇付与コースについては、この”訓練修了”ではない、別の基準がある。

具体的に見てみよう。

0303 賃金要件・資格等手当要件

次のイ又はロの要件を満たす場合は、0400に掲げる表のうち、「訓練修了後に賃金を増額した場合」の助成額を加算して支給する。

イ  賃金要件   対象労働者の毎月決まって支払われる賃金について、

教育訓練休暇制度の場合は、制度導入・適用計画期間の最終日の翌日から起算して1年以内に、

長期教育訓練休暇制度の場合は、支給要件を満たす休暇の最終取得日(150日を超える場合は150日目)の翌日から起算して1年以内に、

教育訓練短時間勤務制度の場合は、支給要件を満たす制度の最初の適用日の翌日から起算して1年以内に5%以上増加させていること(賃金改定後の最初の賃金支払日が各制度の起算日の翌日から起算して1年以内に含まれている必要がある。

また、1201ルにより「長期教育訓練休暇制度の場合は、支給要件を満たす休暇の最終取得日(150日を超える場合は150日目)の翌日から起算して1年以内」とあるのは、

長期教育訓練休暇制度の場合は、支給要件を満たす休暇の最終取得日の翌日から起算して1年以内」とする。)。

 

1200 附則 1201 人への投資の促進に係る特例(令和4年4月1日施行分) 

ル 賃金要件・資格等手当要件

0303 イ及びロ中「長期教育訓練休暇制度の場合は、支給要件を満たす休暇の最終取得日(150 日を超える場合は 150 日目)の翌日から起算して1年以内」とあるのは、「長期教育訓練休暇制度の場合は、支給要件を満たす休暇の最終取得日の翌日から起算して1年以内」とする。

訓練終了日ではないということだが、ではいつかというと、通常、長期、短期で異なる。とてもややこしいので気を付けられたい。

まとめ

以上である。説明がややこしいので理解しにくいだろうがまとめると、

・訓練対象者全員に訓練終了後、就業規則等に規定された資格手当などを支給した結果、賃金総額が3%あがったら、【資格等手当要件】

・訓練対象者全員に訓練終了後、基本給などを改定して増額した結果、賃金総額が5%上がったら、【賃金要件】

という理解を私はしている。間違っているかもしれないので、ここに書いたことを鵜呑みにしないで、実際は自社の状況を労働局やハローワークや専門家に確認されたい。

尚、注意しないといけないのは以下のとおり。

・訓練終了後の翌日から起算して1年以内に、改定または追加した手当の給料を支払うこと

・前後3か月の比較であるため、雇って3か月もたたないうちに改定しても対象とならないこと

・訓練対象者全員が対象であり、1人でも賃上げが満たない場合は追加支給されないこと(自己都合退職などの例外あり)

・この前後半年の間に賃金総額の比較対象とならない変動手当などを不用意に下げたりしないこと(下げた理由が合理的かどうかの判断は労働局の判断になるため)

・支給申請のタイミングが後3か月分継続して”支払った日”の翌日から起算して5カ月以内と変わっているので気をつけること

よし、これで上司Bに説明できるな…。