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人材開発支援助成金の私見Ⅵ 事業展開等リスキリングコース 令和6年度版

以前書こうと思っていた【人材開発支援助成金】のなかの【事業展開等リスキリングコース】についての記事である。令和5年度版は既に1年前に記事にしたが、今回令和6年度版として記事を作成することにした。コース自体の中身はそれほど変わっていない。変わったのは、その中身についての不明な点がガイドブックのリニューアルと、令和5年度のどこかでいつの間にか公表されていた事業主向けQ&A。これにより明確になった個所があったからである。

 

はじめに(令和6年度版と令和5年度版の比較)

令和5年度(下記にリンクを貼っておく)は、このコースは、令和5年度の厚生労働省助成金の「推し」だということを記載したが、問題があった。というのも、記事作成当時、対象となる訓練内容になるか、ならないのか、どっちなんだい?というのが多すぎたのである。

その記事を作成してからかなり時間が経過した後【事業主向けQ&A】がでて、さらに令和6年度版のガイドブックでかなりわかりやすくなった。

一方で、要件が厳しくなった面もある。その点について触れたくなったので、前回の記事を修正するのではなく、令和6年度版としての記事を新たに作成することにした次第である。

尚、いつも書いているが、下記の事柄はあくまで私個人の解釈であり、内容については保証しかねる。あくまで私個人の理解用、アウトプット用。匿名ブログを使っている点でお察しいただきたい。

kesera22.hatenablog.com

コースの概略

まずはコースのおさらい。この【事業展開等リスキリングコース】は令和4年12月に、令和8年度までの期間限定コースとして、新規に登場したコースである。以下の、限定した専門知識やスキルの習得については、別途新コースにして、助成金額を増やしたイメージである。デジタル化は【人への投資促進コース】でもあるが、要求するレベルが高かったと判断したのか、ITSSレベルとかいう専門性を図る基準を用いていない。

要件(対象となる訓練)

内容としては、以下の3点の事柄を行うにあたって必要となる、専門知識やスキルを習得するための訓練に対し、その経費、賃金(一部例外あり)の一部を助成する制度である。

  1. 企業が新規事業を始める場合(事業展開)
  2. デジタル化、DX化を推進する場合
  3. グリーン・カーボンニュートラルを推進する場合

事業展開は別の事業所にとっては既存の事業に繋がるので、該当するかどうかはその企業の今行っている事業次第である。

また、訓練内容が特定されてはいるが、企業の状況や仕事内容によっては、【人材育成等支援コース】にも該当する訓練が、DX化、グリーンカーボンニュートラル化にもつながる可能性がある。つまり、どちらでも申請可能な場合がある。

助成率

・賃金助成は1時間当たり960円(大企業は480円) 

 ※Eラーニング、通信制、定額制訓練には賃金助成はない

・経費助成は経費の75%(大企業は60%)

・1事業所あたりの助成金の上限額は脅威の1億円である。

・定額制サービスに関しては、訓練時間あたりの経費助成の上限がない。

破格の助成率、これが【推し】といった理由である。

他のコースと違うところ

解雇要件がない

他のコースには、計画届の提出日の前日の6か月前から支給申請日までの間に事業主都合による離職がないことが要件になっている。しかし、このコースにはこの解雇要件がない。

私の勝手な推測だが、人を解雇せざるをえないほど既存事業の足元が揺らいでいる会社に新規事業への進出を促しているのかもしれないし、DX化の進展で余剰人員が出てきた時に解雇した場合に不支給にしない、ということかもしれない。DX化して人を他の人手不足の事業や会社に転職させようとしている?恐ろしいところだな、厚生労働省

賃金要件、資格等手当要件がない

助成率が高いためであろうか、いわゆる賃上げ要件である、賃金要件、資格等手当要件という助成金の加算要件がない。

他のコースでは対象外となる訓練でも、事業展開を除き対象となりうる。

他のコースでは、下記の2点は対象外となるが、このコースの中で企業内でデジタル化・DX化・カーボンニュートラル化を進めるうえでの訓練に関しては対象外ではない。

①職業、または職務に間接的に必要となる知識・技能を習得させる内容のもの、は対象になりうる。

おそらく、デジタル部門やそのデジタル関連の職種でなくても、”間接的”に関与する場合でも対象となるわけだ。勿論、その対象労働者の仕事に間接的でもない、つまり全く関係しない場合は対象外であろう。

②職業、または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの、は対象になりうる。
(例)接遇・マナー講習等社会人としての基礎的なスキルを習得するための講習 等

例としての接遇・マナー講習を受けるのがデジタル化・DX化の訓練か?と思うので、おそらくこの具体例はダメだろうが、デジタル化、CO2削減に関する知識は【社会人としての基礎的なスキル】とも解釈できるわけであるからか、対象外から外れている。

令和5年度からの変更点

はっきりしない点を整備し、Eラーニングや通信制、同時双方向、定額制のルールの厳格化、他のコースの簡略化と相対的な比較により、結果として要件が厳しくなったといえる。

Eラーニング等を自宅等でやる場合は就業規則等で【テレワーク】の規定が必要

これはこのコースに限らず、人材開発支援助成金のすべてのコースで令和6年度改正になった模様だ。どういうことかというと、Eラーニングや通信制、同時双方向、定額制訓練はどれも受講者の自宅で実施する場合がある。この場合、人材開発支援助成金はあくまで業務命令で行っているのだから、自宅でやっていても仕事であるから、当然賃金が発生する。これは令和5年度までもそうであったのだが、例えばEラーニングだけだと、出勤簿や賃金台帳の提出が不要なので、その時間を管理しているか、賃金を支払っているかは、様式のチェックだけで良かった。

これが就業規則等で自宅等で訓練させる場合は、テレワーク用の就業規則を、計画届提出までに原則整備すべし、に変わったのである。

自宅ではやるのは構わないが、その時間分はテレワークとしての労働、という位置づけにしたのであろう。

また以前記載のあった、業務の”合間の時間”で訓練、という表現はガイドブックを見ても見当たらない。

となると”仕事として普段働く事業場で受講する”、ということになるのだろう。果たして、仕事中にEラーニングとして動画を見たり、通信制で添削課題を問いたりするのが短時間ならともかく、現実的にありえるのか?Eラーニングや通信制、定額制は賃金助成もないのに。

尚、自宅等で自習してはならないというわけではないが、あまりにも自習時間が多いと、それは業務命令の労働でなく、無賃の自習を会社が労働者に押し付けたんじゃね?ということになる。(事業主向けQ&A)

ということで、令和6年度以降は、Eラーニングや通信制、定額制の利用はしにくくなるのではないかというが私の推測である。

そしてこれは私の妄想だが、Eラーニングや通信制が調べてみると労働時間外で賃金も出ていなかった場合が多かった結果か、もしくはコロナ禍のテレワーク推奨が終り、会社に出勤できない、という状況ではなくなったからではないかと思っている。

つまり、もうコロナ禍もすぎたし、もとのとおり通学制を利用するか、または遠隔地ならば同時双方向の通信制を会社に出勤して勤怠管理できる状態で受講しろ、ということだと思う。

尚、自宅等と書いたが、厳密には自宅かサテライトオフィスでの受講の場合である。だた私は、サテライトオフィスの定義はよくわかっていない。例えば所属部署以外の事業場で受講する場合は該当するのか?とかわからないことが多いので、説明は省略する。ネット上のガイドブックのアドレスをクリックしたら、テレワークに関する専用ページに飛ぶ仕様になっていることに最近気づいた。色をつけたほうがいいのでは?

定額制訓練は受講可能講座数の5割以上が対象外訓練の講座だとアウト

これも令和5年度にもあったと思うのだが、明確に改正点として列挙された。

定額制訓練はどのコンテンツを受けるかは自由であり、対象となるコンテンツを受ける時間が受講者全員で10時間以上になれば助成対象となり得た。10時間以上になった時点で支給申請できるので、それ以降何を見ようとも自由。(ただし、ほとんどの時間、趣味のコースを受けていたら助成対象となるかどうかまでは不明。もしかしたら、その事実が反映したら助成金返還になる可能性だってあると思う。)

これがまず、コンテンツ一覧のうち、受講可能講座の5割以上は支給対象となる訓練でないとダメになった。趣味か、それが専門知識かスキルになるのか?というのがコンテンツの半数を超えると対象外となる。

この要件が地味にキツイ。”受講予定”でなく、”受講可能”なコンテンツ一覧の中から対象となる”数”が5割あるかどうか、である。となると、受講する気のない不要なコンテンツも含めて中身一覧を確認しないといけない。コンテンツが多すぎると逆に足を引っ張る。

上記のテレワーク就業規則とあわせて、定額制訓練を利用する会社は去年よりぐっと減るのではないか?と私は思っている。エビデンスはない。

ただし、この要件を明確化した理屈は想像できる。すっ飛ばして見ることも可能だし、金額の上限もないし、やりたい放題できる。ぶっちゃけ、10時間分だけ受講して、後は趣味全開か、目的達成のためではない自己の取りたい資格のための講座を1年間(1年超えの計画はできない)好きな時間に受け続けて、助成金で75%負担してもらう、という不適正な利用も理屈上可能。

ぶっちゃけ、定額制訓練は不支給リスクが高くなったと思うので、会社として利用するのはかなり微妙、というより、通学制か、会社で同時双方向性の通信訓練で受講するほうに誘導したいのでは?と邪推した。

資格・試験の受験時期と、助成対象費用の明文化

以下、ガイドブックより引用。

支給対象となる資格・試験の受験料について、当該資格・試験に係る訓練課程の修了後6か月以内であることが必要となりました。また、資格・試験について、あらかじめ受験案内等に定められている資格証明書類の発行費用や、受験の前提として必須となる検査に係る経費も支給対象経費として申請可能になりました。

国家資格などの受験料も助成対象なのがこのコース。ただ、何回でもいいのか、いつまでなのか、対象となる費用は受験料だけなのかとかが不明瞭だった。これが令和6年度版で明文化した。これは前よりはわかりやすくなった。

対象外となる訓練の具体例

令和5年度版の記事を見てもらえればわかるのだが、対象となる訓練かどうかというのがよくわからないというのが私の感想。そう思ったのは私だけではなかったのであろう、事業主向けQ&A、ガイドブックで対象外となる、または対象となる具体例が列挙された。また、なぜか”ドローン”という文字が消えている。単に”ドローン”といっても、建設業で使うドローンは3次元設計とかいう言葉になるのだろう。

対象となる訓練というのは難しいので、以下、対象外となる訓練の具体例をガイドブック13ページと事業主向けQ&Aから引用する。

単にデジタル機器を使用して文章・数値の入力や、書式・レイアウトの変更程度の初歩的な操作を行う内容のみの訓練は対象になりません。

ざっくりいうと、Excelの文字入力、Wordの文章入力、書式レイアウト変更程度の”初歩的”な対象外ということであろう。マイクロソフトに限らず、例えばグーグル関連のアプリも該当するだろう。

初歩的な、というのはどこまでのレベルなのかは不明瞭だが、少なくともはじめてExcelを触る人用ではない。助成金としては対象外、ということだろう。

何をもって、デジタル化と定義しているのかは不明。正直、Microsoft officeの使い方は今時検索すれば無料で調べられるし、その殆どが個人が勝手にできるだろうに、それを雇用保険料を使って助成する意味がわからない。

まあ、行政機関が方眼Excelを使うところだからなあ…。

単に既存のアプリやシステムを購入してその操作方法を習得する場合や、コンサルタントによる指導は、対象になりません

アプリやシステムの操作方法を学ぶ場合は対象外。例えば、新しくインボイスに対応した経理ソフトを購入したので、その操作方法を購入先企業から教えてもらいました、はダメ。タブレットを購入してそこにアプリを入れて操作方法を学びましたもダメ。デジタル化、DX化(デジタルソフト購入とその操作により、業務時間短縮した)にはならない。

あとコンサルタントの単なる指導はどのコースでも基本はダメである。ただ、指導といってもどんな指導がダメかは書いていない。経営指導ならそう書くだろうし。多分、指導といっても内容次第であって、コンサルタントという肩書の人が講師だとダメという意味ではないと思う。

訓練カリキュラム全体として単なる事例の紹介や、言葉の定義の紹介のみを内容とするも
のに終始するなど、企業がDX 戦略等を進めていく上での具体的な手法等を習得する訓練に該当しないものは、支給対象となりません。

DX関連の言葉の定義を学ぶだけ、DX化の他社の事例紹介の時間は訓練時間ではない、ということだろう。

A12 ~略~当該事業所の業務マニュアル等を題材にして、実際の事業活動で利用するツールを作成する場合は、通常の事業活動として遂行されるものを目的とするものと考えられるため対象外となる可能性があります。

仕事で使うアプリを作成する時間は、そういう仕事上の業務であって、訓練ではないということだろう。

補足

上記が対象外訓練であるが、厚生労働省のホームページで実際の文章を読んでもらうとわかるのだが、単に上記のこと”だけ”をした場合は対象外になるのであって、他の対象となる訓練と組み合わせて、全体的なカリキュラムの始めの数時間とかにそのようなものがあっても対象となりうるのである。

これは甘いというか、柔軟というか、訓練カリキュラムの構成によっては全部の時間が対象になりえる表現である。例えば、他のコースだと、対象外の時間と対象の時間が混じっている場合は、一部を除き、対象外の時間は賃金助成から外れるし、実訓練時間から外れるので10時間ぎりぎりだと不支給になりかねない。

だが、このコースのこの文章を見るに、全部の時間が対象になりえるのでは?と私は解釈している。勿論、私や事業所が決めることではなく、労働局判断ではあるが。

また、最近は生成AIの活用が一気に広がってきた。この場合生成AIに関して対象になるかというと、例えばchatGPTについて習うのは対象になるではないかと思う。根拠は事業主Q&AのQ13と、ガイドブックのデジタル化の具体例からだが、今後ホームページなどで明確化される可能性はあると思う。

一方で、通常の事業活動の一環から切り離して、訓練用に別途用意された作業環境において、ツールの作成を目的としたアプリケーションの活用方法を学ぶ訓練であって、企業独自のツール開発を目的としない場合については対象となり得ます

あと、対象外になるかならないかの案内は、人への投資促進コースの定額制訓練のガイドブックも含めて各所に散らばっている。この記事だけでは追いきれないが、対象か対象外かはガイドブックと事業主向けQ&A(人への投資促進コースとかも)を読むことをお勧めする。

最後に

以下の文章は完全に私見である。

前年、私はこれを【推し】といった。すまん、嘘をついたかもしれない。

その理由と言うのは訓練内容が限定的だし、いくら助成率が高いからと言ってもその講座自体を見つけるのが困難だからである。まあ、もともと遅れているところにはいいかもしれないが。あと、助成金補助金が多くなったりする場合、よからぬところが言い寄ってくるのが常である。どうも明らかに胡散臭い業者からの勧誘が会社に来ているようだ。

過去の記事でも言ったが、激アマ助成金補助金とか、高額助成金とかで紹介されている場合はそういう輩が登場するサインでもある。雇用調整助成金とか、業務改善助成金とかでもそういった理由で記事にしなかった部分があると過去に書いたが、どうもこのコースもその臭いがしてならない。

といってもなんの証拠もない。不正、不適正と判断する立場でも能力もない。単に胡散臭いと思うだけである。胡散臭い者には手を出さないので実害もでていない。利用するかどうかは各社の判断だろう。当たり前だが、支給率100%の助成金補助金はない。一方で、知名度はなくとも良心的なところも当然あるだろう。不支給になった場合、その金額を全額負担しても受講したいと思える講座なら受講するスタンスでよいと思う。

知らない相手に丸投げするような経営者は、YouTube動画を見て「激アマだって。やろう」という人だろうし…うん、まあ、その被害は自己責任だし、私がとやかく言う筋合いではないな。