けーせらーせらー

仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

休職者・休業者の業務の引継ぎについて

さて仕事の話。

第1四半期をまたぐこの時期に、仕事の担当割が変わった。

具体的に書くと、これまでの仕事はそのままで、メンタル疾患で休職してしまった同僚の仕事を引き継いだ。業務量は簡単にいうと倍になった。

前段:引継ぎの問題点

はっきりいって、休職して仕事が中途半端の状態のものを引き継ぐのは骨が折れる。

私はかつてメンタル疾患で休職した身だ。だから休職すること自体を否定したくない。ただ引き継いだ人からみると、苦労でしかない。

退職したわけではないので、新しく人を雇うというわけにもいかない。いつ終わるかわからない休職期間中だけという雇用期間で業務をこなせる契約・派遣社員などそうそういない。定期異動の時期でもないので人員の補充も難しい。

今回はメンタル疾患であるが、これは他の病気の休職でも、育児休業、介護休業でも同じことである。

育児休業というと「周りのみんなで助け合ってやっていきましょう。会社組織はそうするに体制を整えなさい、また政治や行政はそうするように指導しなさい」という正論をかざす人がいるが、その休職・休業期間中限定で引き継いだ人、新たに雇われた人のことへの配慮が欠けている。

誰かを雇えばいいという人は、その雇われた人のことを考えているのか。例えば”育休代替”というう名目だったら雇用期間が定まっていてもいいのか。休業していた人が復帰したら、どんなに成果をあげても解雇する、仕事を休職・休業した人に明け渡す、その重みをわかっているだろうか。

代わりにやっている人の業務量の増加を考えているのか?暇で時間を持て余す人はそうそういないし、もしそういう暇な人がいるならば、残念ながらその暇な人は仕事ができなくて業務を与えられていない可能性が高い。そんな人に任せても上手くいかない。タイミングよく、閑散期と休職、休業期間がかみ合うほど世の中都合よくできていない。

休職、休業した人の”代替要員”、”業務量が一時的に増加”する人まで”配慮”しないと、いつまでたっても育児休業の取得や、介護、病気離脱者の社会復帰という困難な問題は解決しない。だがこれは普通誰でも問題意識はあるが解決策は持っていないが現状だと思う。

まあテレビのコメンテーターなどが適当なことをいうが、あの阿呆どもはそんなことまで配慮していないだろう。気にも留めてないだろう。何より彼らは明日仕事があるかもわからない個人事業主。休職・休業などという収入の一定額を補償される労働者ではないし、常にだれかと椅子とりゲームの世界で戦っているのだから、彼らにとっては他人事だろう。

問題点の具体例

話がだいぶそれたので、話を戻そう。私はその引継ぎの話を引き受けた。上司は拒否権込みで話を振ってきたが、私は自分自身が過去メンタル疾患で休職し、代わりにやってもらったことがある*1ので、引き受けた。

だが実際引き受けて、仕事を代わりにやってみて気づいたことがある。

病気による休職前の人の仕事の精度はかなり低い

今回私はその休職者の人が元気だった時の仕事ぶりを知っているので、その精度の低さ、病気になるとここまで能力が落ちるのかと驚いている。そして今現在も間違っていたことを正しく直すことにいまだに骨を折っていて終わりそうにない。つまり引き継いだ業務が軌道に乗っていない。私も休職前の仕事の精度はたぶんそうだったのだろう。休職した人の文句をいう人がでてきても仕方がない。

まあ、それは病気という理由を鑑みればミスが増えることは想定内ではあった。

一番ネックなのはお客様だ。お客様にとって担当者の病気は関係のないことだ。担当者が別の人間ならばこのミスの影響を受けなかった。そのお客様にたまたま担当した社員のミスの不利益を肩代わりさせるわけにはいかない。ミスの代償は会社側が背負うべきだろう。

だがそれは本来は組織の長や、直属の上司が病気がわかった時にカバーしておくべき問題だ。組織としてどう補償するかはその立場にいる人が決めるとして、最初のお客へのファーストコンタクトは私がすることになるので、どうするか思案中である。

また話が変わるが、仮に病気でなかったとしても、他人の業務の引継ぎというのは個人差はあれど基本こういうものである。他人が見たら間違いに気づきやすい。多分1人で行動しているうちでは見落としがあったり、期限やノルマという焦りがあったり、誤解があったりするからであろう。それを修正するのが上司の役割だと思うのだが、世の中の上司というのは部下のカバーをする役割を忘れている人も多い。

たまに他人の仕事のミスを見つけてえらそうにしている同僚や上司がいるが、現に私の近くにもそういうアホがいてその間違いを見抜ける自分のほうがさも優秀だと周りにアピールするアホがいる。こういうアホを”評論家”という。

他人の間違いや判断ミスは結果論。そして、そもそも他人の間違いを見つけるほうが自分でやることよりも容易い。そのことをわかっているほうが当たり前。厳密にいうと、他人のミスをみつけたことを他者にアピールする人間は自分は無能だとアピールしているアホである。

ただ間違いは間違い。どうすれば間違いが減るかというのは難しい問題だが、お客への間違いを知らんわ、とも言えない。これが引継ぎのつらいところである。

自分の担当業務の遅れ

はっきりいって精度も速度も数字も落ちた。信じられないケアレスミスもおこしそうになった。業務量が増えるが、期限が同じだとこんなものだ。本来の一人の業務を超えているのだからこれはこれとして仕方がないと思っているが、これまた問題なのは、引継ぎに協力もしない者のほうが優秀だと評価されることだ。だから引継ぎをしない、他人の仕事のカバーをしない方がよい。

ただこういう人間を蔓延らせる原因は上司や管理職、経営者にある。普段の個人の業務のみを評価している組織は、他人に協力する人間はバカをみる。同じ仕事を今まで通りにする方が失敗しないし精度も数字も維持できる。組織が現状維持だと衰退していくのは誰でも知っているが、責任逃れ、前例主義、数字主義、個人主義が蔓延している職場では、今までどおりにすることが一番である。

周りの”理解”

この”理解”という言葉はなにかと最近使われているのだが、どうも他人の考えを変えさせる、という押しつけがましい意味を含むようになってしまった。

よって言葉を言い換えると、周りにとって、その休職が腑に落ちるかどうかで協力体制が変わるということに気づいた。正直いって周りにとってみたらなぜメンタル疾患で休職したのか理由はプライバシーの観点から公表されたないが、いざ引き継ぐ側にとってその原因がわからないことには対応しづらい。

仕事の内容、または対応する顧客が理由でメンタル疾患になったりすると、その仕事には関わりたくないのが普通である。誰もメンタル疾患にはなりたくないのが本音だからである。

また自分を含めた人間関係が原因でメンタル疾患になったのなら、その疾患を引き起こした加害者の懲罰としての引継ぎの意味合いを持つ。「お前たちのせいでメンタル疾患になったのだから、お前たちが責任をとれよ」といわれてもそれではモチベーションがあがらない。

そして、仕事というのはどこまでいっても椅子取りゲームである。一時的に離脱した人の業務をしている間に、自分の本来の椅子、つまり自分の担当業務が他人が取って代わられてしまうことがありうる。私も実はというと、この自分の業務を、春の異動で他部署にいった人が戻ってきて取って代わられるという噂が流れていたので、取って代わられるぐらいなら引継ぎをする必要はないと考え、その噂が本当かどうか確認できるまで悶々として、引継ぎのスタートが出遅れた。ぶっちゃけ、モチベーションが下がったままである。

あと、引き継いだ仕事がどんな状態なのかというのは引継ぎ者以外は知らない点も問題で、本来の業務を怠っていると誤解される点もつらい。

ただ、この問題は上司の手腕でなんとでも問題は縮小できることである。つまり上司が悪い。

椅子は確保しておくと引継ぎ者に確約すること、今までの業務の停滞することを理解していると伝えておくこと、協力することを評価すること、メンタル疾患の理由を職場の人間も休職者の名誉も傷つけず、また個人情報を広めない範囲で伝えておくことで、縮小は可能だ。それを怠った上司には正直幻滅している。

問題が解決しない理由

ただ、上記の対策を直属の上司が対応しても、問題が”縮小”するだけであって、問題自体は解決しない。

その理由は3つある。

1つ目は、組織というのは、個人の事情は別に”数字”で判断するものであること。休職という労働者が減らずに業務が増えれば、当然今までの業務の”数字”は減る。1人当たりの数字も減る。

ただ”数字”を見ること自体はなんら悪いことではない。問題の根本的解決を図るのならば、その減った理由までを探るからである。そこに人員減少の理由があるのならば、組織としての問題、上司の問題、個人の問題まで図る。だが今の会社は東京本社が各支社の”数字が減った”だけで騒ぐから、上司がどう行動しても、東京本社に逆らえない以上どうにもならない。”数字”は休職、休業という労働者1人1人の事情までは汲みできるほどの時間はない。しかも「働き方改革」の名のもと残業時間は増やせない。この残業時間も、厳しく言えば、東京本社の人事部の責任逃れのため。人が減った分は時間外労働をしないと業務を回せるはずがないのだが、業務量はそのままに、残業なしで、と平気でこんなことをいう。こんな人間が本社で責任者をしている以上、地方支社の上司がどうこうしようが問題は解決しない。

2つ目は、同じ業務をしている人との比較で”遅れ”が生じることである。当然、兼務と専業だと遅れが生じることは誰でもわかるのだが、この兼務状態が解けて専業に戻った時に、上司の頭の中でその兼務状態の期間分の”遅れ”が消えてしまうのである。

最後の3つ目がお客様である。繰り返しになるがお客にとって、会社の専業、兼業状態など関係ない。自分の担当者が兼業になって遅れが生じるならば、専業の人に担当を代えてくれ、といってくるだろう。そうなると肩代わりした私の”顧客量”は減る。当然、私の売上が減る。イコール私の評価は下がる。

だから問題は解決しない。縮小するだけである。

結論として、休職・休業した人がいる組織は、引継ぎをする人間とその組織の長はどうやっても損をする。それをどれだけ縮小できるかは、会社全体の組織体制にかかっている、と自最初に阿呆といったマスコミと同じ答えになる。

つまり、問題は解決しない。

営利企業の解決策と私個人の願望

では問題の解決策は何か?実は簡単である。

休職・休業者は退職させて新しい人を迎えるのが正解である。私も現に解雇された。

つまり私は損をしている。しかし、私はそれをわかったうえで引き受けたし、引き受けたことでわかったことも受け入れるつもりである。正直、今の会社の東京本社の目の前の”数字”しか見ていないアホっぷりには反吐がでる。だが、営利企業としてそれは正しいだろう。経営者も、株主から、株価、配当金、今後の業績予想という数字で判断されるのだから。

別に他者貢献とか、自己犠牲とか大層なことをいうつもりはない。営利企業としての上記の正しさを私が認めたくないだけである。休職・休業者を守ることができる営利企業が増えてほしいという願望があるからである。それは自分がメンタル疾患で解雇された自身の経験からくるものであるが、メンタル疾患が治ったからといって、営利企業の正しさに従いたくない。

あと今の組織も、今回のことを教訓に急な休職者・休業者へのバックアップ体制を構築すべく、誰かが誰かのバックアップできるようにする方針で順次体制構築中である。上司はその場しのぎで何も考えていないわけでないことがわかったし。その方針、姿勢に賛同した、という面もある。

ただし。

そのメンタル疾患の休職の原因がその引き継いだ業務か顧客であって、自分もメンタル疾患になりそうだったら…私は逃げる。メンタル疾患はならないのが一番だし、なったとしても軽い段階で休む方が恢復が早いからである。自分の身は自分で守るのが鉄板である。

 

※補足 なお今回の記事は、組織や個人を特定しないようにした結果、文章の中に事実でない箇所も紛れ込ませているのでご留意いただきたい。

*1:私の場合は結局退職したし、その頃は人は余っていたぐらいの不景気だったので上記の話とは事情が違うが