巧遅は拙速に如かず

仕事、自己啓発、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

雇用関係助成金の私見㉙ キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース(前編)+最低賃金引上げについて

今回は久しぶりに雇用関係助成金の記事である。およそ2カ月ぶりに助成金のことを新規に書く気になったのは、10月に最低賃金の引上げが迫っていること、そして、その対応するのにはあまり時間が残っていないことに今更気がついたからである。

タイトル通り「キャリアアップ助成金」の話がメイン。キャリアアップ助成金に興味のない方もいるので、ここで改行する。

 

前置き:最低賃金の引き上げについて

最低賃金は毎年10月1日頃に改定される。

実際の最低賃金額がいくらになるのかは、各都道府県労働局で審議をしたうえで公式ホームページで発表されるだろうから、ここでは取り上げない。

ただこれまでの報道などをみるに、令和6年10月頃からの最低賃金は、令和5年8月段階の今より時給換算で50円前後アップするのは確実であろう。

※9月2日補足 念のため補足しておくが、発効日が毎年10月1日ときまっているわけではない。ただ例年10月1日が多いため、以下説明する発効日を10月1日として説明しているが、報道をみるに、都道府県によって発効日は異なり、今年に関しては11月1日が発効予定日の都道府県も登場した。ただ、多くの都道府県はだいたい10月初め頃から、と思っておいた方がいい。尚、正式な発効日は前もって発表される。

最低賃金が時給換算で50円上がる、というのは結構インパクトがある。最低賃金の全国平均が1000円ぐらいだとして、そこから50円あがるということは、全国平均で賃金が5%前後アップする、ということだ。労働者にとってはこの物価高の中では朗報ではある(もっと上げろという意見もあるだろうが、据え置きとか、1円~10円単位の端数処理とかよりはましである。)が、会社側にとってはインパクト大である。人件費5%上昇というのはかなりの負担である。月給制の正社員でも最低賃金にひっかかる人もいるのではないか。

そして、こういうとき、国は激変緩和策、負担軽減策として、助成金の案内をしてくる。助成金なんて面倒くさい、直接賃金を補助しろ、とかはもっともな意見であるが、国が民間企業の労働者の賃金を払ったら、それはもう資本主義ではない何かになってしまうのでやらないだろう。(だったら、民間企業の賃金について最低ラインを決めるな、と反論もあろうが、それはもう法律でそう決まっているから私がどうこういう話ではない)

そこで、賃金を直接補助はできないが、民間企業の支援策として使われるのが、助成金とか補助金である。今回はその中の厚生労働省の労働局管轄の助成金を取り上げる。

9月20日追記

これまで最低賃金法を下回る賃金を支払っていたが、これから最低賃金法を守るために賃上げする、というケースは、助成金の対象外だと私は認識している。よって以下の説明は、大前提として、これまで最低賃金以上の賃金を支払ってきた会社が、令和6年10月1日頃の最低賃金の引上げをもって、現状のままの時給、月給だと、最低賃金を下回ってしまう場合のことを想定している。違法行為を放置していた企業がこれから法律を守る場合に貰える助成金ではない。

以上誤解がないよう最初に断っておく。

最低賃金対応として思いつく助成金について

さて、ではその最低賃金の引き上げに対応できる助成金として私が今思いついたのは以下のとおりである。

・業務改善助成金

・人材開発支援助成金をはじめとする【賃上げ】の上乗せ加算

・キャリアアップ助成金

業務改善助成金については、過去に記事で書いた。毎年10月を前に最低賃金アップを見込んで賃上げして、設備投資もこのタイミングで考えるのが良いよ、と。過去に書いたので省略。

・人材開発支援助成金をはじめとする【賃上げ加算】の上乗せについても、過去の記事に書いた。これは訓練後に訓練をした対象労働者の賃金をアップすれば対象になる。この中には【賃金要件】と【資格等手当要件】という2つのものがあるが、【賃金要件】については、訓練前後で固定的賃金が5%アップ(昇給)する必要がある。

5%アップなんて無理じゃね?と思っていたが、上記に書いた通り、今回の最低賃金の引上げは5%前後になる可能性が高い。つまり、ここ1年以内の訓練を実施した対象労働者全員が最低賃金レベルぐらいだったら、上乗せ加算の対象になりえるのでは?と思う。

・そして最後はキャリアアップ助成金である。これにはいくつかのコースがある。

①「正社員化コース」は正社員化して3%賃金をアップさせるのが要件。今回の賃上げを機に正社員化してしまえば、3%の賃金アップのハードルは下がる。

②「社会保険適用時処遇改善コース」は、最低賃金には無関係だが、これだけ最低賃金があがれば、同じ労働時間でも10月以降に、106万円の壁、130万円の壁を突破する可能性がでてくる人もいるだろう。おりしも10月以降から、106万円の壁の適用対象となる事業所の被保険者数がこれまでの100人超から50人超にかわる。このタイミングで社会保険加入義務が新規に発生する非正規労働者がいる会社は検討材料になりうる。

1月の労働時間:週20時間×年間52週÷12か月=86.67時間

月収88,000円÷86.67時間=1015.3…円 

1016円×20時間×52週÷12か月=88,053円>88,000円

よって、最低賃金の時給が1016円以上(所定労働時間が20時間の場合。20時間超の場合、例えば21時間の場合は、968円になる。)になって、かつ特定適用事業所の会社は社会保険に入るか、週所定労働時間を20時間未満にするか、要確認であろう。

(特定適用事業所になる時期、社会保険加入の時期がいつになるかは未確認なので、そこは各自確認してほしい。)

③賃金規定等改定コースも同様で、賃金規定を作り、基本給の賃金規定を3%増額改定すれば、助成対象となる。

そこで気づいた。…あれ、「賃金規定等改定コース」については、記事にしたことがないんじゃね?と。

そこで、今回改めて「賃金規定等改定コース」について記事にしたい。

賃金規定等改定コース

対象者(有期雇用労働者等全員が原則。ただし例外あり)

ガイドブックから引用する。

有期雇用労働者等※1の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用した場合に助成します。

※1 一部の有期雇用労働者等の賃金を増額する場合は、その区分が雇用形態別または職業別、その他合理的な理由(部門別等)に基づき区分している場合に限り、本コースの対象対象労働者と認められます。

 

「有期雇用労働者等※1」が重要。要するに、原則は有期雇用労働者全員の基本給が賃金規定または賃金テーブルに基づいて、3%以上増額改定しておく必要がある、ということである。

まず「3%以上増額改定」について理解しておく必要がある。

改定日と比較して基本給が単純に3%以上アップしているかどうかではなく、賃金規定または賃金テーブルにおいて、その区分が3%以上増額改定する必要がある。

つまり、賃金規定または賃金テーブルで、たとえば1等級〇円、2等級〇円と規定(または一覧表)が必要で、その〇円の部分が3%以上アップする必要があるということ。

単純に、労働条件通知書で時給1,000円と書いてあったのが、時給1030円になったから3%アップという意味ではない。

また一部、つまり何人か3%以上増額していない有期雇用労働者がいた場合は、”合理的な理由がない限り”はアウト。しかも、この対象者分だけ助成金額が減らされる、という意味ではない。全員分アウト、つまり不支給である。

尚、有期雇用労働者等が対象なので、正社員はもともとこの助成金の対象ではない。正社員の基本給を3%アップしても、このコースの助成対象ではないが、逆を言えば正社員の基本給を3%アップしなくでも不支給にもならないであろう。

以下、支給要領から引用

3002 支給対象事業主
次のイからヘまでのいずれにも該当する事業主であること。
就業規則又は労働協約に定めるところにより、その雇用する全て又は一部(雇用形態別又は職種別その他合理的な理由(※1)に基づく区分に限る以下同じ。)の有期雇用労働者等(賃金規定等を増額改定した日(賃金規定等の増額を適用した日)の前日から起算して3か月以内に雇用された有期雇用労働者等を含む。以下同じ。)に適用される賃金に関する規定又は賃金テーブル(以下「賃金規定等」という。)を作成している事業主であること。

※1 雇用する有期雇用労働者等に適用される改定前の賃金規定等の等級等のうち、最低賃金の改定に伴い、改定後の最低賃金を下回る等級等のみを改定する場合を含む。 

最低賃金の効力が発生した日以降に増額した場合は、その増額分は含まれない

これが言いたかったので、最初に持ってきた。最低賃金があがるからといってそれで3%以上基本給をあげたとしても、最低賃金の効力が発生した日以降に増額した場合は、その増額分は含まれないのである。

ひとつ例をあげる。最初に書いたとおり、例年どおり、令和6年10月1日に最低賃金の効力が発生したとしよう。それにあわせて

~令和6年9月30日 時給1001円(最低賃金1000円+1円)
令和6年10月1日~ 時給1052円(最低賃金1050円+2円)

と言う風に決めたとしても、そのうち49円分は最低賃金に到達するための増額分となり、増額には含まれないので、賃金増額は2円だけになる。よって3%以上アップしていないから支給対象外となる、ということである。

以下、ガイドブック引用

最賃法第14条および第19条に定める最低賃金の効力が生じた日以降に賃金規定等を増額した場合、当該最低賃金に達するまでの増額分は含めない

なんだ、最低賃金にあわせて時給をアップさせても意味がないじゃねーか!と思ったあなた。上記引用文をよく読んでほしい。赤字で大きく書いたが、効力が生じた日以降と書いている。

つまり、例えば効力発生日が10月1日だとしたら、9月30日に基本給をアップしていたら、対象となりうる、と読み取れるのである。

そう、最低賃金の効力日よりも早く上げていればよいわけであるから、遅くとも9月30日に増額改定していれば対象となりうるのである。

これを言いたいがために、10月1日よりもなるべく早く、鮮度として価値を持たすために今回の記事を書いた。

よって、正確な効力日(10月1日はあくまで過去の例を参考にしただけ)を確認し、準備できるものならば準備したらどうであろう?というのが私の意見。

発効日の前日でもOKだと、公式ホームページでも書いてあるが、現実的に9月30日に改定するのか?というと疑問もある。下に記述する取り組み日の問題もある。実際は9月1日か、9月の賃金締切日とか、きりのいい日の方が給料計算はしやすいと思う。

他の最低賃金に関わる助成金も発効日と同じ日の昇給については考慮しない場合があるので、ここでは文章が長くなるので説明しないが、確認されたい。

ちなみに、知り合いの会社は、給料の締切日が20日締めで、パート労働者の昇給は毎年9月に行っていた。最初は4月の方がわかりやすいのに何故と持っていたが、9月に昇給するということは、9月21日から昇給する。最低賃金の確定を考慮しつつ、発効日の10月1日より前の9月21日に昇給する利点が上記の説明を読めばわかるだろう。*1

繰り返すが、正確な情報はそこは専門家か、労働局の担当部署に確認してほしい。

一部の労働者だけの賃金改定は合理的な理由が必要。そして最低賃金の増額改定は合理的な理由になる

最初のガイドブックからの引用、特に赤字を見てほしい。有期雇用労働者等の全員でなく、一部の労働者だけ増額するのならば、その一部だけ増額する理由が”合理的”であれば対象となりうる。

キャリアアップ助成金は、特にこの”合理的な理由”というのが好きである。前の記事にも書いたが、合理的な理由というのは、つまるところ、説明して相手が理に適っているとおもえれば合理的な理由として認められる

正規雇用労働者全員の賃金が3%以上増額助成金としての原則の支給の要件。

ただし、

  • 全員でない場合で
  • 一部だけ増額した場合
  • 全員でなく一部だけ増額した根拠を述べて、
  • その理由が理に適っていると(厚生労働省/各都道府県の労働局と判断した)ならば
  • 一部の労働者に対しても支給する
    といっていると解釈した。

ちなみに、基本給を3%増額しても、他の手当が下がっていれば不支給になる。但し、その手当が下がっている理由にも合理的な理由があれば支給対象となる。

ではだれがその合理的と判断するのか?それは支給・不支給を決定する権限をもつ各都道府県の労働局(長)?。実際通知書は労働局長名義だけども、実務上誰が合理的かどうか判断しているかは私は知らない。だが、線引きが文章で明確に開示されていない部分は、自己判断は禁物である。

合理的かどうかの判断基準として支給要領でも雇用形態別、職種別という例示があるし、Q&Aでも例示がある。その雇用形態別、職種別を明確に区分けできて、実際その通りに支給している資料を提出できれば良いと思うが、人数が多い所は大変な事務負担であろう。

と、紹介しておいて何だが、キャリアアップ助成金助成金の中でも結構ハードルが高い。というか、支給・不支給の要件が多すぎる。ガイドブックや支給要領、Q&Aのどこかに書いてあるらしい理由で不支給になる場合がある。最悪、「助成金の趣旨に反する」という主観的な判断も可能。助成金の記事で「100%受給できる」とか言っているユーチューバーを信用するな、と何度も記事にしているのはそういう理由があるから、というのもある。

賃金テーブルをわざわざ作り、3%以上全員賃上げして、6か月たって、支給申請して、審査を待って、その結果、助成金不支給だったら目も当てられない。助成金が不支給だったから今更半年以上賃上げした時給をもとに下げるよ、というのは労働条件の不利益変更になるるから難しい。だからこそ、どうせ賃上げをするのであれば、最低賃金の賃上げの直前を狙った方が不支給になった時のダメージは少ないと思う。

尚、最低賃金の賃上げに伴い一部だけ賃金テーブルの改定をすることは合理的な理由となる。つまり、最低賃金にひっかかる等級の労働者だけ対象にしても助成金の対象となりうる。これが非常に重要。

原則は有期雇用労働者等を全員が対象だが、最低賃金が上がって、最低賃金を下回る等級の人がでてきた場合は、公示日以降発効日前日までの間にその等級の人だけ賃金改定した場合は、その等級の人だけ対象にしても、助成金の支給対象になりうるのである。

前置きが長くなったが、これが今回言いたかったことである。

根拠として、支給要領とQ&Aを引用。同じ支給要領の条文だが、ここで強調したいところを赤字で表示。

3002 支給対象事業主
次のイからヘまでのいずれにも該当する事業主であること。
就業規則又は労働協約に定めるところにより、その雇用する全て又は一部(雇用形態別又は職種別その他合理的な理由(※1)に基づく区分に限る。以下同じ。)の有期雇用労働者等(賃金規定等を増額改定した日(賃金規定等の増額を適用した日)の前日から起算して3か月以内に雇用された有期雇用労働者等を含む。以下同じ。)に適用される賃金に関する規定又は賃金テーブル(以下「賃金規定等」という。)を作成している事業主であること。

※1 雇用する有期雇用労働者等に適用される改定前の賃金規定等の等級等のうち、最低賃金の改定に伴い、改定後の最低賃金を下回る等級等のみを改定する場合を含む

Q&A 44ページ

Q-5 賃金規定等改定コースの対象者について、「最低賃金の改定に伴い、新最低賃金を下回る者についてのみ」とした場合、「一部の」有期雇用労働者等の賃金規定等を増額した場合として支給を受けられるのでしょうか。

A-5 最低賃金の改定に伴い、新最低賃金を下回ることとなる等級についてのみ賃金規定等を増額した場合も、支給を受けることが可能です。

ただし、各都道府県の新最低賃金公示日以降、発効日の前日までに賃金規定等の増額改定を行う必要があります。 

注意① キャリアアップ計画の取り組み日に注意

キャリアアップ助成金は、”事前”に「キャリアアップ計画」を届け出する必要がある。具体的には

  1. キャリアアップ計画期間という”3年以上5年以内”の期間を定めて、
  2. その開始日の遅くとも前日まで*2に提出し、
  3. かつ、この計画期間内に、各コースの”取組日”が入っていないといけない。

例えば「正社員化コース」において、令和6年10月1日から正社員転換する人を助成金の申請対象としたいのならば、正社員化コースの場合の”取組日”は”正社員転換日”となる。

その場合、計画期間の3年以上5年以内の中に令和6年10月1日が含まれていないといけないし、遅くともその計画期間の前日までに労働局にキャリアアップ計画を提出しないといけない。

提出日を後になって遡及して提出することは原則できないので、事前に提出しておかないといけないし、計画期間が切れた後に正社員転換したことに気づいても後の祭りで、これも遡らないといけない。

さて「賃金規定等改定コース」はこの”取組日”がややこしい。
「賃金規定等改定コース」の”適用日”は”賃金規定を改定した日”ではあるが、それは
”賃金規定”の施行日ではなく、”適用日”である。
”賃金規定”は最後に”施行日”を書くものであるが、その施行日ではなく、その”賃金規定”によって賃金が支払われたことが確認できる”適用日”が”取組日”である。

おわかりいただけただろうか?私自身”取組日”がいつなのかについての見解をもってはいが、もしその解釈が誤っている場合、この記事を読んだせいで不受理、不支給になってしまったら申し訳ないし、責任も取れないので、「賃金規定等改定コース」の具体例はあえて載せなかった。

とにかく、ここでは「キャリアアップ計画」の事前提出を忘れないこと、そしてギリギリに提出したり改定するのはリスクがある、ということがいいたかっただけである。

以下、Q&Aを引用する。

Q-5 申請様式や支給金額は、各コースの取組を行った日で変化しますが、各コースの取組を行った日は具体的にどの時点になりますか。

A-5 各コースの取組日は以下のとおりです。
・正社員化コース:正規雇用労働者への転換又は直接雇用日
賃金規定等改定コース:賃金規定等を改定した日(
・賃金規定等共通化コース:賃金規定等を共通化した日(※)
・賞与・退職金制度導入コース:賞与もしくは退職金制度又は両制度を就業規則等に規定した日
・短時間労働者労働時間延長コース:週所定労働時間の延長実施日
社会保険適用時処遇改善コース:社会保険に適用させた日(被保険者資格の発生日等、適正な理由によって遡及適用する場合は 遡及適用日)

※)賃金規定等を「改定した日」「共通化した日」とは、賃金増額改定や共通化した賃金規定の施行日ではなく、適用日をさします。

例えば、4月1日から賃金規定を増額改定し、増額後の賃金が当日分から給与に反映されるとすれば、適用日は4月1日となります。 

 

Q-9 賃金規定等改定コース、賃金規定等共通化コース及び賞与・退職金制度導入コースにおいて、就業規則等を改定し「適用」することが要件となっていますが、ここでいう「適用」とはどういう意味ですか。

A-9 「適用」とは単に制度を導入することだけではなく、実際に当該制度が運用されている(当該制度に基づく賃金が支給されている)ことを指します。

例えば、賃金規定等改定コースの場合は、賃金規定を増額改定し、当該賃金規定に基づき実際に賃金を支給したことをもって「適用」という要件を満たすこととなります。また、「中退共」など外部の積立を利用し、初回に複数月纏めて積み立てた場合も、初回の積立から「適用」されたと見做します。

※ここで使用する「適用」とは、Q-5(※)で使用する「適用日(増額または共通化後の賃金が当日分から給与に反映される日)」とは異なります。

注意② 業務改善助成金と両方受給はできないケースがある

これを言い忘れていたので、8月30日に追記。最低賃金引上げにあたり、使える助成金として「業務改善助成金」のことを最初に記したが、「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」で対象にした労働者は「業務改善助成金」と併給できない。

併給、つまり両方申請できない、両方でお金を得ることはできない、ということ。

ちなみに業務改善助成金は、「労働条件等関係助成金」という区分になり、雇用関係助成金の中には含まれない。「雇用関係助成金」の共通のホームページに併給の早見表がExcelであるが、載っていないのでご注意のほどを。

以下、根拠として業務改善助成金のQ&Aを引用。

 

Ⅵ-ⅱ 他の助成金等との併給調整
問54 労働関係各種助成金と併せて助成金を受けることはできますか。また、その他の助成金との関係はどうですか。

答 他の助成金等について助成対象が同一の設備投資等に要する費用ではないものについては、原則として、併せて助成を受けることができますが、他の助成金等の補助目的等が重複する場合は、併給調整の対象となることがあります。

詳しくは、労働局雇用環境・均等部(室)にご相談ください。
 なお、業務改善助成金で賃金引上げの対象とした労働者について、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の支給対象労働者としてカウントすることはできませんので、ご注意ください。 

最後に

今回は、最低賃金の引き上げで急に思いついた記事。ここまでで9000字超え。別に「賃金規定等改定コース」は最低賃金の引き上げ時期限定のものではない。ただこのコース中身についてまで書くと、2万字超えは確実。

中編以降に続く。

*1:尚、昇給を9月にしなくても、9月1日から時給をあげても何の問題もない。だが給料計算のしやすさと、他の最低賃金より既に高い時給の人とのバランスを考えれば、9月にパート労働者みな昇給する必要もある。だから、9月の昇給もアリである

*2:(支給要領では提出した翌日以降が計画期間の開始となると表現している