仕事の話。とある仕事を、他の会社のAさんに依頼した。
しかし、いくら待ってもAさんから仕事に関する連絡が来ない。状況把握と催促のため電話をAさんにかけた。すると、Aさんからの返答は以下の通りでした。
「すいません。忘れてました(笑いながら)」
その時私は信じられなかった。もし同じ会社の同僚や部下であったら、期限切れになるタイミングだったら苦情や指導をするところだ。
それを「忘れてました」だと?失礼にもほどがある。それも他の会社の人間に対して?信じられない。この人は仕事ができないのか?
そして、それでも依頼した仕事が終わらないのでAさんに電話したところ、不在で出張中だという。電話に出た人曰く、急ぎで今週中には終わらせないといけない仕事だそうだ。
そして気づいた。Aさんには優先順位があったこと。そして、期限の迫った仕事を先にやっていたことを。私の仕事はその仕事の後でも間に合うことを。そして、金額がかなり小さい案件であることも。正直、私にとっても金額が小さく、誰でもできるような難易度で、優先順位も低い案件。私としてはさっさと終わらせたいが、正直「忘れなければ」時期はどうでもいい案件である。
自分のやるべき仕事に優先順位をつける。それはわかる。そして、優先していない仕事は「忘れる」、いや「忘れるふり」をする。そして「別の仕事で立て込んでいまして」とか言わずに、「忘れていました」と言い訳もせずにいえる神経。相手の怒りを買うかもしれないのに、言い訳しない神経。舐めているかもしれないが、そう思われてもいいと思っている神経。
世間一般に、このAさんを「図太い神経の持ち主」ともいわれる。
では仕事ができないかというとそうではない。優先順位が高いことはやっている。優先順位が低いことは、堂々と切り捨てることのできる、肝が据わっているともいう。
そして「忘れる」ことも大切である。Aさんが本当に忘れていたかどうかはAさん以外は知る由もないが、言葉どおり本当に忘れていたとしよう。だとしたら、今集中していることは頭から切り離している。つまり1つのことに集中している。そして、他のことを「忘れている」ので、その間、頭と神経は休まる。休養できる。リソースをつぎ込まないので疲労しないし、焦らない。結果、優先事項の仕事は精度があがる。
また本当は忘れていないのに、「忘れていた」といった場合。これも胆力がある。無駄に言い訳しない。相手に嫌われてもいい、最悪、その取引がなくなってもいい、縁がきれてもいい、と思える覚悟がある。その覚悟を持てば、仕事の精神的疲労はぐっと下がる。無駄に言い訳をすると、かえってこじれる場合がある。つじつまがあわなくなる。見苦しくなる。不信感を招く。反論されて時間を費やす。そこまでわかっていたら立派だ。
つまり仕事は、優先順位の低いもの、後回しでいいものは「忘れる」こと、「忘れていた」といえることが精神的な休養面でも、胆力と覚悟を持つにも、優先順位の高いことに集中するにも重要である。
尚、他の優先事項もないのに、本当に忘れていた場合で、そのまま正直に話している可能性もある。単なる阿呆である。しかし、そういう人間が職場で生き残ったりする。精神的に追い詰められないからである。だからこそ、「忘れる」ことも重要である。
ただし、あまりにも「忘れすぎる」と、例えば金庫の鍵を閉め忘れたり、金品や重要な契約などを忘れたり、会社に大損害を与える場合もあるので、なんでもかんでも「忘れる」人は組織としては怖くて仕事を任せられないことは、補足しておく。