巧遅は拙速に如かず。急いては事を仕損じる。

仕事とメンタル不調に関する思考バイアスに自分で気づくための日記帳

仕事で、ナイロン製のリュック、トートバックはなしか?

SNSのタイムラインでとある投稿を見つけた。

道端でスーツ姿なのに「ナイロン製のリュックやトートバック」を持っている人間を蔑み、革製の手で持つしかないペラペラの鞄を持つのが社会人として当然、という趣旨の投稿であった。

表現の自由はある。だが、批判する自由もある。この投稿については批判的意見のほうが多くて、批判の多さでタイムラインに表示された模様だ。また発信者は、匿名の一個人ではなく、名前をだして店舗を構える公式名義の投稿であったため、炎上した模様だ。

その投稿を見て約20年前の新入社員時代を思い出した。

当時の私は電車通勤をしていたが、座ることはほぼ不可能だったし、片手に手すり、片手にカバンをもつと両手がふさがりなにもできない。時間の無駄なので、肩掛けがついたカバンで通勤したところ、上司にこっぴどく怒られたものである。

東証一部上場企業に勤める社員が、肩掛けのカバンで移動するなど言語同断。社会人の常識がない。この恥さらしが!」

それから、肩掛けが取り外しの出来るものを使い、社内に入れば肩掛けを外し、手でもつカバン風にして通勤したものだ。実に無駄な行為である。

あれから、20数年たち、時代は変わった。

私も当初は、リュック姿でスーツを着たサラリーマンを見て驚いたものだ。

そんなに大きなカバンでいったい何が入っているんだ?

スーツの形が崩れるだろう?

学生?

ただ、今はその姿に見慣れている。

そもそも現在のサラリーマンは20年前と比べて持ち運ぶものが増えた。スマホ、ノートパソコン、タブレットとその付属品を持ち歩き、水筒と弁当と小型扇風機を持ち歩き、猛暑時は男であっても日傘もほしい。他、帰宅時に保育園で待つ子どもを迎えに行く男性、帰宅時に夕食の買い物をする男性にも、手があくリュックや、モノが入るトートバックは重宝する、らしい。

昔ながらの手で持つしかない薄いカバンではこれらの物が入りきらないし、傘をさすには手をあけたい。子どもの手を握って帰りたい。昨今の猛暑と、IT化の進展と、共働きでカバンもまた現状にあったものに変わってきているのである。

だが、いまだにマナー、マナーと言い張る人もいる。たしかに、スーツにリュック姿は私も違和感を持っている。片方の肩にカバンをかければ、スーツの形が歪む。その事実は変わらないが、スーツより、カバンにいれるものが増えて、実用性のあるカバンが求められてきているのだ。

そんな私は、トートバックを今は愛用している。水筒、防寒用のカーディガン、折り畳み傘を入れて、かつA4の用紙なども入れて、さっとその品を出すのはトートバックが実用的なのである。

私も当初、トートバックに抵抗はあった。仕事でトートバック?と思っていた。

だが、60歳を超えて定年退職後再就職したオジサンと一緒に外出した際に、そのおじさんがトートバックを使っていて、仕事でうまく利用していて、「あれは便利だ」と思い、真似たのである。若者を真似たのではなく、60歳を超えた、定年前にはそれなりの企業でそれなりの地位にいた、最初の投稿者が指摘しているような地位と年数を重ねた人のカバンを真似たのである。

本革のトートバックも考えたが、実店舗で見た時に臭かったので、ナイロン製にした。臭くないものもあるかもしれないが、売っていなかった以上、トートバックでもいい。ナイロン製はポケットが多くて、助かる。

とあるオーダースーツ専門店がSNSでいう。カバンはケースバイケースであると。通勤や社内移動でのトートバックはありだが、訪問相手、職種、場面によってはカバンを使い分けるのがよいと。

正直、昔ながらの手提げのカバンは、業種・職種にもよるが、いまや少数派ではないか?格式ある場にでるような人がトートバックやリュックを背負っているのはあまり見ないが、鞄持ちの部下や秘書がいるだろうし、場面に応じたカバンは会社においていて、通勤時とは使い分けている。街で歩いている赤の他人がトートバックだろうが、リュックであろうがどうでもいい。余計なお世話だ。

大抵の人にとって、昔ながらのカバンを街で見かけるのは、リクルートスーツを着た学生ぐらいしか利用されていないかもしれない。それも面接を受ける会社によるかもしれないが。

うちの会社については、60歳ぐらいのおじさんたちも、最近の猛暑対策なのか、弁当が腐らないようにするためか、通勤時に昔ながらの手提げのカバンから、リュックやトートバックに変え始めた。手提げかばんでも、中身が見るからにパンパンに膨らんでいるほうが、カッコ悪いからだろう。

カバンに求められるものは、手提げ限定の薄い鞄は会社においておいて持ち替えるもので、通勤用はリュックかトートバックで何も問題なかろう。…まあ、スーツは痛むのはわからなくはないが、スマホとかをいれても形が悪くなるし、わかってはいるが現状にあった対応だと私は思う。

その投稿した公式店舗は自社の商品のPRのために投稿したのだろうが、SNSで他を見下すことで自社製品を上に扱う投稿は、悪手であった。今は、マナーや社会人の常識で推すのではなく、格式と品質で購買意欲をそそるような商品紹介の投稿をするべきであっただろう。

…といっても、通常の投稿だと閲覧者数が増えないから、あえて注目を集めるために挑発的な表現を選んだのだろう、多分。だがその発言は既存顧客で、かつ、ナイロン製カバンを見下している顧客には受けがいいだろうが、新規顧客の獲得にはつながらないし、既存顧客もイメージ悪化で離れかねないし、悪い評判で店自体の品格も落としかねない。炎上狙いで儲かるのは、インプレゾンビだけ。

20年前はスーツも夏でもネクタイとジャケットを着て、革靴を履いていた。冬は薄いぺらっぺらのコートを着て、暑いし寒いし歩きにくいし、今思えばサラリーマンはあえて苦しんでいる姿を他人に見せることが頑張っている証だった気がする。それを信用とか礼儀とかマナーとか呼んでいた気がする。今は式典や冠婚葬祭ぐらいでいいのでは?と思う。

こういった社会人の常識とかマナーとかダサいとかいう主観による常識の押し付けに反論することができるのは、SNSのいいところだと思う。