人材開発支援助成金に関する令和6年度改正についての記事。
令和6年度は令和5年度、4年度と比較すれば新コース、廃止コースもなく*1それほど変わっていない。変更箇所が多いのは「人への投資促進コース」の「自発的職業能力開発訓練」と「長期間休暇付与コース」であろう。他のコースも読めば変わっているところが見られるが、正直いって、少しの差、わかりにくいところの明記、定型書類の整備(見やすさや書類の統合)といったところで、正直令和5年度と比較してみて、書類を準備してみて初めてわかるレベルかもしれない。
前置きはこれぐらいにして、今回は変わったことがはっきりしている「自発的職業能力訓練」について。
令和6年度改正内容
ガイドブック1ページが中心だが、ガイドブックを読んでいくうちにここも変わったのでは?というところをピックアップ。
対象労働者の変更
令和5年度 一般労働者等
👇
令和6年度 雇用保険被保険者
人材開発支援助成金にはコースによって対象者が異なる。「一般労働者等」という表現がここに散らばっていて、激ムズであった。この言葉の定義がわからないので下記に引用した。〇〇以外のものを除いた者という、なぜその表現を使うのか理解しがたい言い回しだが、ざっくりいうと「雇用保険被保険者が対象。但し、有期契約雇用労働者で雇用期間1年以上続く見込みがない者と紹介予定派遣の派遣労働者は除く」ということだろう。
というこのわからない対象労働者が令和6年度から「雇用保険被保険者」(訓練期間中)になった。他のコースと揃ってスッキリしたわけである。
また、訓練の途中で退職した場合は別途ルールがあることがガイドブックで明記されたようだ。これもわかりやすい。
具体的には、通学制・同時双方向の通信訓練の場合は出席率が8割あるかどうか、Eラーニングと通信制は修了しているかどうか、で判断される。またこの明記により、対象労働者が訓練途中で退職したら上記の訓練期間終了日まで雇用保険被保険者でないと絶対ダメ、というわけではないことのも推測できる。
一般労働者等…
雇用保険法第4条に規定する被保険者のうち、次の(イ)および(ロ)を除いた者をいう。
(イ)常時雇用する労働者以外の者。
なお、「常時雇用する労働者」とは、雇用の形態を問わず
①期間の定めなく雇用されている者
②過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者
または
雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者
のいずれかを満たす労働者をいう。
(ロ)労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第4号に規定する派遣先が、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者 (※第2条第4号は紹介予定派遣の規定)
1コースあたりの実訓練時間の最低ラインの変更
令和5年度 20時間以上
👇
令和6年度 10時間以上
人材開発支援助成金がコースによって違うところのもう一つがこの時間。令和5年度は20時間であった。ただ前まで同様に20時間であった一般訓練コースが令和5年度に統合されてなくなっため、20時間はこのコースぐらい、だったと思う。それが他と揃えるように10時間になった。これもわかりやすい改正である。
なお、Eラーニングや通信制の場合は、”標準学習期間”であり、実際受講した時間ではないので、念のため補足しておく。
対象訓練の拡充
まずガイドブックから引用する。
対象となる訓練の内容について、「職務に関連した訓練以外」も助成対象とします。
(1ページ:改正内容)
職務を問わず、職業に必要となる知識や技能の習得をさせるための訓練であること
(22ページ:自発的教育訓練の概要)
人材開発支援助成金の対象訓練は、デジタル化・DX化訓練を除き、現在の職務に直結する訓練でないといけない。それが「自発的職業能力開発訓練」は外れた。最初、おおスゴイと思ったが、よく考えると具体的にどういうなのかよくわからなかったが、ガイドブックを読み進めていくうちにこの職務を問わずの意味が朧げに見えてきた。以下、引用。
①職業または職務に間接的に必要となる知識・技能を習得させる内容のもの
(職務に直接関連しない訓練)
②職業または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの
(共通スキル訓練)
(例)接遇・マナー講習等社会人としての基礎的なスキルを習得するための講習等
③趣味教養を身につけることを目的とするもの(趣味教養型訓練)
(例)日常会話程度の語学の習得のみを目的とする講習、話し方教室、
普通自動車(自動二輪車)運転免許の取得のための講習等※自発的職業能力開発訓練の場合、
「①職務に直接関連しない訓練等」及び「②共通スキル訓練」は、助成対象となります。(34ページ 助成対象とならない実施目的より)
上記のオレンジ※が令和6年度パンフレットから追加された。つまり上記①②は「自発的職業能力開発訓練の場合は対象外ではないよ、と言っている。②は訓練によって認められる場合もあったが、①は画期的である。私の解釈だが、そのスキルを取得して今の仕事にどう活かされるかという説明は不要ということだろう。問題は普通自動車免許取得である。①にも書いてあるし、③にも例示として記載されている。対象なのかい、対象外なのかい、どっちなんだい?
また読み方によっては①②だけは対象外ではない、ということは③~⑧は引き続き対象外である。特に③の趣味教養と、⑦知識・技能の習得を目的としないもの、⑧の資格試験は線引きがよくわからず悩みどころである。
あとこちらは令和5年度からの変更箇所ではないが、以下の訓練も対象となる。
①業務上の義務として実施されるものではなく、労働者が自発的に行うもの
※育児休業中訓練及び自発的職業能力開発訓練、長期教育訓練休暇等制度を除く
⑤海外、洋上で実施するもの(海外研修、洋上セミナーなど)
※成長分野等人材訓練及び自発的職業能力開発訓練(海外の大学院での訓練の場合)を除く
(35ページより)
ちなみに【自発的職業能力開発訓練】だからこそ助成対象外になる下記の訓練がある。
・OJT
・事業内訓練
OJTは仕事をしながら教わるものだし、事業”内”訓練は労働者本人が選ぶものでなく、事業主が企画した訓練。業務命令ではないことが要件である以上、考えれば当たり前だけれども、規定という根拠がないと、あれこれいってくる人間もいるのだろうと推測。
このコースの注意箇所
このコース、いきなり概要だけ読むとミスをする。それも取り返しがつかない=不支給になってしまうトラップが多い。令和6年度もそのトラップが残念ながら変わっていないので以下列挙する。
就業規則での規定制定
制度を規定した就業規則または労働協約を、制度施行日までに雇用する労働者に周知すること
※就業規則については、制度施行日までに管轄する労働基準監督署へ届け出たものであること
(常時10 人未満の労働者を使用する事業主の場合、制度施行日までに事業主と労働組合等の労働者代表者による申立書を作成することでも可)
※労働協約については、制度施行日までに締結されたものであること
就業規則にこの制度の規定を盛り込む必要がある。制度施行日とは「自発的職業能力開発負担”制度”」の施行日を指し、そしてガイドブックや支給要領をみるにその就業規則を計画届に添付する必要があると思われる。つまり労働者が申し込んでしまったので、後になって就業規則を整備したとしても遅い。労働基準監督署に届け出るということは届出日が記録に残るし、申込日も記録があるはずなので、時系列をごまかしようがない。(補足:就業規則を規定する義務がない常用労働者10人未満の事業場は労基署に届出する義務がないから申立書になっている。)
教育訓練機関に対するお金の支払い方
・事業主が、自発的職業能力開発経費の2分の1以上の額を負担するものであること
・事業主が、通貨により直接当該被保険者に支払われるものであること
(事業主が直接訓練機関に受講料等を支払う場合を除く。)
2つ注意点がある。
・事業主が半分以上その経費を負担する必要がある。そしてそのことを就業規則に規定しないといけない。
令和6年度から職務に関連しない資格を取っても対象になったというが、では、その経費の半分を負担する会社は、自社での仕事に役立たないスキルなどや、労働者の好みにおカネを出すのか?という疑問がでてきた。しかしガイドブックを見ると事業主が対象資格に制限をかけることや審査をすることは可能、と書いてあることから会社になんのメリットもない資格のお金は払う必要はなく、その必要性のその線引きは厚生労働省になく、会社にある(つまり会社がどんな資格でも経費の半分を負担しないといけない義務はない。ただしこの場合は人材開発支援助成金としてのお金は当然でない。)
・労働者本人が訓練機関に直接お金を支払い、その半分以上を事業主が労働者に対して振り込む形をとるのが原則である。事業主が直接支払う場合は就業規則の規定に従う場合が例外(原則以外の方法)である。
他のコースが事業主が訓練機関に全額直接支払う必要があるのと異なる。間違えやすい。具体的に原則や例外はどうなってるの?と思う人は支給要領を見るとわかる。
07021 支給対象経費
イ 次の(イ)から(ニ)に掲げる事業外訓練に要する経費が対象となる。
(イ) (ロ) (ハ) (ニ) ~省略~
ロ 支給対象経費における留意点原則、支給申請までに被保険者が本人名義により、入学料等を教育訓練機関等に支払っている場合を支給対象経費とする。
ただし、自発的職業能力経費負担制度に基づき、支給申請までに事業主が入学料等を教育訓練機関等に支払っている場合等には、この限りではない。
なお、被保険者が入学料等を教育訓練機関等に支払っている場合は、支給申請までに事業主が事業主負担分を労働者へ支払っていること
事業主が入学料等を教育訓練機関等に支払っている場合は、支給申請までに労働者負担分を労働者から徴収していることにより、実際に事業主が経費を負担していること及び事業主が負担した額が確認できること。
~以下、省略~
注意喚起?いえ対象訓練を示唆しています。
以下引用。
自発的職業能力開発経費負担制度は、資格・試験に関する受験料を補助する制度や、労働者の独学のための書籍の購入費を補助する制度ではありませんので、資格・試験に関する受験料や書籍の購入費(訓練の受講にあたって必要な教科書代・教材代を除く)は対象となりません。
独学の資格試験は対象外となる理由である。しかしよく読むと、”訓練の受講にあたって必要な教科書代・教材等を除く”と書いてあるわけだから、通学制などで訓練を”受講”する場合の経費(受験料以外)は対象となりうる、つまり資格取得が最終的な目的といえども通学等をすればその経費は対象と読めるわけである。
ちなみに受験料はコースによって対象になるものもある。
とりあえず以上。またガイドブックなどを読んで、ここ変わったんじゃないの?と気づいたら随時修正・追記する。
4/23普通自動車免許について対象外訓練である趣味教養にも記載があることを発見したため修正