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仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

人材開発支援助成金の私見Ⅱ 助成対象となる経費、ならない経費

人材開発支援助成金助成金は「賃金助成」「経費助成」「OJT実施助成(一律)」の3つを合算する構成。それについて過去に記事にしていなかったので、令和6年度改正を契機に記事にしようと思った次第。

今回は「経費助成」について。ガイドブックはわかりやすく、支給要領は法令用語でより詳細に書いてあるが、改めてアウトプットして確認してみる。ちなみにこの「経費助成」はOff-JT訓訓練のみであり、OJT実施中の経費は「経費助成」という項目には含めない。また事業内訓練と事業内訓練、事業外訓練とで経費の考え方は異なる。また事業内訓練と事業外訓練どちらも共通の経費もある。

支給対象となる経費

事業内、事業外、共通、事業主団体の4つで構成されている。なんのこっちゃと思う場合は実際支給申請書の経費助成の計算式を見るとわかりやすい。尚、総額から100円未満切り捨てた金額が助成対象となる。この「100円未満切り捨て」は雇用関係助成金の共通要領が根拠だろう。

事業内職業訓練

費用ごとに細かく分かれている。実際請求されて支払われた費用がベースになるのではなく、独自の計算によるもの。そのため、計画届には料金がわかる資料が添付資料になっていない。そして各費用に上限が設定されている。またこの金額の総額を総受講人数で割って自受講者でかける金額で計算する。具体的に10万円の経費で対象労働者5人、他の無関係の人2人(役員とか被保険者でないパートとか)が聴いていたら、計算は10万円×5人÷7人×助成率、となる。つまり対象者でない人でも良かれと思って受講させた場合は助成金が減る。

講師への謝金、手当

講師料、といったところ。実訓練時間1時間当たり15,000円が上限。この15,000円は所得税控除前の金額となる。講師が会社ではなく個人でやっていたら請求書は源泉所得税が書いてある場合もあるので、源泉所得税の断りがあるのであろう。かつては1時間あたり30,000円だったのが数年前に下がった。

「部外」講師が対象なので、部内講師のその日の給料のうちの講演時間相当分を計算しても助成対象外。

講師の旅費

講師の自宅又は勤務地から訓練地までの費用。車代、食費代は含まない。旅費総額の上限は国内からの講師が1の職業訓練実施計画あたり(1日あたりではない)5万円、海外から招聘した場合は15万円。宿泊費は1日当たり15,000円が上限。新幹線のグリーン席の料金は含まれないし、船の「特1等」は含まないし、タクシー代も出ない。また東京近郊、大阪近郊は対象外。またこの交通費は支給要領を見ると「最も経済的な通常の経路」で計算するので、速いほうではなく複数の鉄道が走っている場合は安い方になり、実際支払った金額ではない。日当は1日3,000円まで。

そんな金額で講演を受けてもらえない、という講師もいるだろう。その講師の依頼分の金額が上限を超えていても払うこと自体は問題ない。ただ助成金としては上限がある、ということ。

施設・設備の借上費

教室、実習室、ホテルの研修室等の会場使用料、マイク、OHP、ビデオ、スクリーン等訓練で使用する備品の借料で、助成対象コースのみに使用したことが確認できるもの。”のみに”と書いてあるので、常日頃賃貸しているところの家賃を日割りしても恐らくダメだろう。

教科書・教材の購入費

教科書については、頒布を目的としていて発行される出版物のみ。教科書と教材の違いは「教科書については、頒布を目的として発行される出版物を対象とする。」という規定があることから、教材はそれ以外であろう。

訓練コースの開発費

学校教育法の大学、高等専門学校専修学校又は各種学校職業訓練の訓練コース等を
委託して開発した場合に要した費用及び当該訓練コース等の受講に要した費用。

具体的には「事業主が学校教育法第83条の大学、第115条の高等専門学校、第124条の専修学校又は第134条の各種学校(以下「大学等」という。)に職業訓練の訓練コース等を委託して開発した場合に要した費用及び当該訓練コース等の受講に要した費用」とあり、事業主にあわせて講師が講義内容を作った費用、という意味ではない。 

事業外訓練

外部の教育訓練機関が対外的に公表している料金なのでわかりやすい。計画届に添付するパンフレットなどに記載されている受講料金がベースになる。ただしよく読むと…。

受講に際して必要となる入学料・受講料・教科書代等(あらかじめ受講案内等で定められているものに限る。)

訓練の受講料等である。ここでの要注意箇所は赤字で書いた「あらかじめ」である。受講案内は計画届の添付書類のなかに記載している必要がある。よって後になって増額しても多分助成対象とはならない。(多分、と書いたのは昨今の物価上昇を考慮してくれるのか不明の為)また事業外訓練に関しては「あらかじめ」と書いてあるのだから、事業内訓練はあらかじめでなくてもつまり計画届に記載していない金額でも経費助成対象になりうると読める。

問題は「受講に際して必要となる入学料・受講料・教科書代等」の”等”である。この”等”がどこにも明記されていない。対象外に明記されているのは受講者の旅費と宿泊費ぐらい。つまり”受講に際して必要となる”ことが証明できる経費ならば対象となりうる、と読み取れる。ただし、どこまでが対象の経費かという線引きがわからないともいえる。

事業内・外共通

共通という項目は、特定職業能力検定とキャリアコンサルティングは経費助成に加算する形をとり、消費税は税込みの金額を入力する、という意味である。

特定職業能力検定

特定職業能力検定を受けさせるために要した経費(受検料等)。支給申請書上はキャリアコンサルティングと同じ枠に入力する。ちなみに「特定職業能力検定」で検索したら膨大な検定が表示された。あとにも書くが、【事業展開等リスキリング】コースは国家資格などの”受験料”である。名前が違うのは、”検”定と試”験”の違いから?

キャリアコンサルティング

職務に関連した訓練を実施するに当たってキャリアコンサルタントが実施するキャリアコンサルティングを受けさせるために要した経費(キャリアコンサルタント謝金・手当(所得税控除前の金額、助成対象となる額は、実訓練時間数に含められたキャリアコンサルティング実施時間数1時間当たり3万円を上限とする)、キャリアコンサルティング委託費、相談料等)

厚生労働省厚生労働省管轄の国家資格キャリアコンサルタントが好きである。1時間の上限も部外講師より高い。キャリアコンサルティングが必須のコースもあるからであろう。

消費税

消費税込の金額で助成金額を計算するということ。理由は不明。税込なのか税抜なのか消費税について確認、計算するのが面倒なのかもしれない。または源泉所得税も控除しないのだから、税の対応を揃えただけかもしれない。以上、私の妄想。

事業主団体等が実施する訓練等

事業主”団体”についてはめったにないらしいし、わかりにくさがますので記述を省略。今回のガイドブックで”雇用保険適用事業所”であることが強調されて表記された模様。

支給の対象とならない経費

続いて対象外の経費である。令和6年からEラーニング及び通信制の経費が追加された?

事業内訓練

・外部講師の旅費・宿泊費のうち
Ⅰ上限を超えるもの
Ⅱ車代(タクシーなど)
Ⅲ食費
Ⅳ「経営指導料・経営協力料」等のコンサルタント料に相当するもの
・繰り返し活用できる教材(パソコンソフトウェア、学習ビデオなど)
職業訓練以外の生産ラインまたは就労の場で汎用的に使用するもの(パソコン、周辺機器等)など
eラーニングによる訓練等又は通信制による訓練等に係る経費

→ⅠⅡⅢは対象となる経費と比べるとわかりやすい。あとキャリアコンサルタントは認めるがただのコンサルタントの費用は認めない。

事業外訓練

事業外訓練は対象外もシンプルである。受講者の旅費宿泊費と該当する実施機関の受講料と教科書代だけである。該当する実施機関かどうかは、OFF-JT実施報告書に実施機関に入力してもらう形なので該当するかどうかは申請事業主が調べる必要はない。だが該当すると経費に含まれないが、おそらくそんなにないか、もしくは低額の費用だろう。

訓練等に直接要する経費以外のもの

受講者の旅費、宿泊費などが該当する。受講する訓練機関が遠くても近くてもどこを選んでも良いが助成額に影響されない。つまり、わざわざ遠くに行って、公費を使ってそのまま帰りに観光しようとしても助成金はでない。例えば遠隔地の大都市しか開催していないのならば、今なら「同時双方向の通信訓練」のほうが事業所としては費用がかからない。

下記の組織が実施する訓練の受講料、教科書代

都道府県の職業能力開発施設及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の職業能力開発施設(高度職業訓練及び生産性向上人材育成支援センターが実施するものを除く。)
・認定職業訓練のうち、都道府県から「認定訓練助成事業費補助金」を受けている認定職業訓練(なお、広域団体認定訓練助成金を受けている認定職業訓練の受講料、教科書代等は支給対象経費とする。)
・訓練実施計画届(様式第1-2号)を提出している事業主団体等が実施する訓練
・官庁(国の役所)主催の研修

→多分税金などの公金がらみの調整だろう。国が主催する研修の費用を国が助成するならば最初からタダにすればいいだろう。

その他
受講料等が他の講座等と比べて著しく高額に設定されている場合

どういうことかというと「同一の訓練内容であるにも関わらず、助成金の有無のみによって差額を生じさせているなど、助成金の趣旨に照らして合理的な理由がない場合その他受講料等に著しく差が生じていることに明白な理由がない場合等」と規定されている。

令和5年度の途中からガイドブックで黄色の網掛けと赤字で警告されている項目。察するに、助成金分高額に料金を設定している輩がいたのだと思う。助成金の趣旨という表現が出てくるときは、よからぬ相手がいた時に対応できるよう支給判断の余地をあえて規定で作っていると思われる。

留意事項

①経費の支払いは支給申請書提出日までには終えること

訓練等に要した経費は、支給申請までに申請事業主が全て負担(専ら本人に帰属するもの(美容師のハサミ等)を除く。)していることが必須

→ここのポイントは以下の通り。

  • Ⅰ支給申請”まで”に負担していること
  • Ⅱ事業主が全て負担していること
  • Ⅲ専ら本人に帰属するものは除くこと

Ⅰは支給申請書提出時に振込通知書などを添付する必要がある。この日までに支払っていなければ経費助成は不支給となる。
Ⅱは上記の書類で事業主からの支払い(振込)が確認できることが必要
Ⅲ本人に帰属するものは除く、という意味は
A本人に帰属する消耗品などの購入費は助成対象外
B本人に負担させても良いという意味で経費として助成対象となる
のどちらかであろう。根拠はないが、パソコンなどが対象外なのでAだと私は思っている。

②事業主以外が経費を負担している場合の経費助成と賃金助成について

申請事業主以外の者が訓練経費の一部でも負担している場合については、当該経費は経費助成は0円。ただし賃金助成については他の要件を満たしている場合には助成対象となること(育児休業中訓練の場合は事業主が一部負担している場合でも助成対象となること)。

→これは①の補足。一部でも事業主以外は負担している場合は経費助成は0円だが、賃金助成は支給されうる、ということだろう。

③返金があった場合の経費助成、賃金助成

訓練経費を全額支払った後に、実施済みの訓練に関する当該訓練経費の一部でも返金(申請事業主の負担額の実質的な減額となる返金の性質を有する金銭の支払いも含む。)が行われた(行われる予定を含む)場合についても、当該経費は経費助成の助成対象とは認められないこと(賃金助成については他の要件を満たしている場合には助成対象となること。)。

→これは返金した場合の規定。返金があると経費助成は0円というわけでなく、あくまで訓練済みの分を返金した場合か、実質的に費用の減額となる返金をした場合が対象であって、訓練をまだしていない内容や時間分を返金された場合は0円にならない、訓練していない分に関しては助成対象外だが、訓練した分は助成対象になるかも、ということだろう。

③受講した労働者が経費を負担した場合

受講した労働者に訓練経費を一部でも負担させている場合については、助成対象経費とは認められない(育児休業中訓練を除く。この場合、他の要件を満たしていたとしても賃金助成の対象にならない)。

これは①②のことの繰り返しではないかと思ったが、①②と違い、受講者限定になっている。文字通りの意味で労働者に一部でも負担させた場合は経費助成は0円であるが、一方で例えば「訓練終了後に退職等の理由で労働者にこの訓練費用の全部または一部でも返金させた」場合も経費助成の対象外となる、という意味だろう。

④受講者本人名義の支払いが義務付けられている場合

事業外訓練において、教育訓練施設等の都合により受講料等を受講者本人名義での支払いを義務付けているなどのため、受講者本人が立替え払いした分について全額を受講対象労働者本人に返金するなどにより事業主が負担したことが明らかである場合に限り支給対象とすることができる(育児休業中訓練を除く)。

これは事業主支払いの例外。事業主から訓練機関へ支払うのが基本だが、訓練施設等の都合で受講者本人の名義で支払う義務がある訓練の場合は、受講者本人が一旦支払い、その後事業主がその全額を受講者に支払うというお金の流れがわかった場合は支給対象とすることができる、ということ。”することができる”なので、可能という意味だし、本人が既に勝手に支払っていた場合はこの文章を見るにアウトだと思う。

⑤受講時間8割未満は賃金助成も経費助成も不支給(通学制・同時双方向の通信訓練の場合)

受講者の受講時間数が、実訓練時間数の8割に満たない場合には06012aロ(支給対象労働者の規定)及び06012bホ(有期契約労働者等の支給対象労働者の規定)により支給しない。

→受講率が8割未満の場合は、原則賃金助成も経費助成も支給されない。つまり不支給。

⑥修了していない場合は不支給(Eラーニング、通信制の場合)

eラーニングによる訓練等及び通信制による訓練等については、この要件を適用せず、当該訓練等を修了していることが必要となるため、06054イ(ヲ)(終了証)の書類を提出できない場合は支給しない。

→Eラーニングや通信制はいつ受講するかは任意であるため出席率8割という基準ではなく、修了しているかどうかで判断される。修了していなければ経費助成は不支給。賃金助成はもともとない。

では、Eラーニングと通信制がミックスされた訓練はどうなるかというと、どこかで聞いたことか読んだ記憶はあるのだが…調査中。

⑦受講率8割未満の例外

なお、次のイからニまでのいずれかの理由により訓練等が実施できなかった場合は、当該時間数を加えた受講時間数が、実訓練時間数の8割以上であれば、経費助成については要した経費の全額を支給対象経費とし、賃金助成については実際に受講した実訓練時間数(次のイからニまでのいずれかの理由により訓練が実施できなかった時間数を除いた時間数)に基づき支給することができる。
また、eラーニングによる訓練等及び通信制による訓練等については、次のニの理由により訓練等を修了できなかった場合は、要した経費の全額を支給対象経費とすることができる。
イ 労働者の責に帰するべき理由による解雇
ロ 労働者の都合による退職、事業主の責めによらない病気、怪我等
ハ 労働者の死亡
ニ 事業主又は労働者のいずれの責にも帰することができない天災等のやむを得ない理由

かなり長い文章を引用したが、要は8割要件といっても事業主の都合ではく労働者の都合の場合は経費助成に一定の配慮をしますよ、ということだろう。但し、受講者本人が欠席した場合や仕事を優先して受講できない場合は考慮されない。

具体例:実訓練時間100時間、受講時間70時間、怪我による欠席10時間、事業外訓練受講料10万円(欠勤分の返金なし)、人材育成支援コース、通学制、中小企業、正社員の場合

(70+10)÷100=80%となり、助成対象。

賃金助成 760円×70時間= 53,200円
経費助成 100,000円×45%=45,000円

尚、Eラーニングと通信制の場合は、ちょっと違い上記ロの場合に限って経費助成が満額支給されうる。ただし、修了できなかった場合に支給されるのは天災の時などで、自己都合退職した場合は修了できなかったら対象外。

事業展開等リスキリングコースの受験料

「事業展開等リスキリングコース」は訓練終了後の国家資格の受験料も対象になる。以下、引用。

次の(イ)から(ニ)のいずれかに該当する資格・試験に関する受験料(あらかじめ試験案内等で定められている資格証明書類の発行費用を含む。)及び受験の前提として必須となる検査に係る経費(以下「受験料等」という。)。

ただし、支給対象訓練の訓練カリキュラム等において取得目標とされている資格・試験であるとともに、当該課程の終了日の翌日から起算して6か月以内(天災等のやむを得ない場合は原則6か月以内)に受験したものに限る。

また、一の計画あたり各資格・試験につき1回分まで対象とする。なお、事業外訓練を実施する教育訓練機関等が設定している訓練カリキュラム等の中に、資格・試験の受験が含まれていることは必ずしも必要なく事業主が当該訓練カリキュラム等とは別に、訓練受講者に対して、資格・試験(当該訓練カリキュラム等において取得目標とされているものに限る。)を訓練受講後に受けさせ、当該資格・試験の受験料等を事業主が負担する場合も対象となるものである。

(イ) 高度情報通信技術資格
(ロ) 実践的情報通信技術資格
(ハ) 公的職業資格(資格又は試験等であって国若しくは地方公共団体又は国から委託を受けた機関が法令の規定に基づいて実施するものをいう。)
(ニ) 教育訓練給付指定講座分野・資格コード表(最新版)に記載される資格・試験の資格試験

ここは令和6年度から変わったと思われる部分が多い。

ざっくりまとめると、以下の通り。

  1. 受験料は対象だが、支給対象は1回分(訓練終了後6か月以内に受験)
  2. 証明書の発行手数料や検査の費用もあらかじめ試験案内等に記載があれば支給対象
  3. 受験料は当初から訓練カリキュラムに記載されておかなくても対象
  4. 資格・試験の対象は公的資格などに限定(私的な受験料は対象外?)