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仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

面接のポイント:前の会社の悪口を回避するための回答例と検証

転職マニュアル:面接官から退職理由を聞かれた場合「前の会社の悪口をいうのはNG。」について。

これは私が採用する側の立場にいた時のことを思い出すと、確かにその通りだと思います。というのも実際求職者が前の会社の悪口を言った時、私から見た求職者の印象が非常に悪くなったから。もっともこれは面接に限ったことではなく、初対面の人から人の悪口を聞かされた時に、その初対面の人に対して好印象を持つ人は殆どいない、という考えてみれば当たり前のことをいっているにすぎないのですが。

とある漫画の登場人物「みや〇もん」社長のいうとおりです。

では、退職理由を聞かれた時、どう返答すればいいか?
これまでこのテーマで何度も記事にしましたが、また記事にしてみます。

応募先の会社に入りたいから

前の会社が悪いかったから退職するのではなく、御社の〇〇が優れており、御社に転職したくて退職した、という論法。この説明の弱点は、
「では自社より〇〇がいいところを見つけたら退職するということ?」
「(外の人間に)自社の〇〇が良いと断言できるの?」と、思われること。
よほど的確な企業分析と面接官を納得させるだけの根拠を説明できないと、上記の反論に対抗できません。あと理想論は若いうちだけです。
尚、これは退職する予定の場合の回答であって、既に退職した場合は無鉄砲な印象が拭えません。

前職の退職を「自己責任」にして回答。

自分では前職の問題点を解決する能力がなかったから、やむを得ず退職する、といった感じの回答。「他責」でなく「自責」にするための回答です。マニュアルにはこれが回答の模範例とされているようですが、私は疑問をもっています。「他の人のの責任」にする人にいい印象を持たなれたないことは確実ですが、なんでも「自分の責任」にすればいいってもんじゃない。

それに
「力がないと自分でいっている人間を雇えってこと?」
「経営者でもないのに自意識高すぎじゃね?」
「わが社だったら、その能力でも大丈夫=程度が低いと思っているわけ?」
となんとでも面接官の反論は浮かびます。「自責」でこれに返せますか?
あと回答の仕方如何では「自責」のつもりの発言が、ネガティブな人か、マニュアル人間とマイナス評価にもなりかねません。面接突破のためにわざと卑下してマイナス評価を得るというのはどうかと思っています。

いまいち答えがわかりにくいので、具体例として某中古車販売店での疑惑を退職理由を自責にした回答にしてみたのが以下のとおり。

「前職では、売上ノルマ達成のためにゴルフボールを靴下に入れて車をわざと破損させました。店の入り口の見せ方をよくするために自分から率先して除草剤を巻きました。私の判断です。上司も経営者も悪くありません。全部自分の判断です。自分が犯した行為の責任をとり退職しました。」 

面接官「不正行為も経営者、上司のせいにせず「自責」だな!よし採用!」

自己実現のために

「自分には〇〇をするという目標があります。それは前職でできなかったのですが、御社では自分の目的が達成できると思い応募しだ次第です。」

なかなかいい返答だと思いますよね~。こ実際自分もこの回答をしたことがあるのですが面接官の受けがとても悪かったです。というのも、求人は戦力として長く勤めてもらえる人を探している会社が多いから。自己目的実現のための転職は自社で目的が達せられなくなるポジションについたら即辞めるでしょう。達しても辞めるでしょう。異動させても辞めるでしょう。仕事内容限定、数年後転職OKという会社ならばいいのでしょうが、そんな会社は正社員求人するケースは少ないでしょうねえ。その会社の労働者の仕事がほぼみな同じことをしていたり、ジョブ型だったりするのならアリかもしれないですけれども。

前の会社の”問題点”は言うが、”悪口”とは思わせない表現にする。

”事実”を述べたのであって”悪口”ではない、から印象が悪くならないという理論。これも言い回しが上手いか下手かで変わります。感情的、饒舌、自己中心的、悲劇の主人公、不明瞭な説明の場合はマイナス評価を受ける可能性もあります。でも上記の「自己責任」よりはましと私は思っています。回答の仕方次第では実直な印象を与えます。

簡潔に淡々と事実を述べて、とっとと次の話題に移るようにもっていく。

これも面接の流れによりますが、”退職”というどう取られてもマイナスにとられかねない話題であれやこれや言うよりも次の話題に行こうという感じです。自分は”次”に進みたいんだ、という未来志向。私はこれが一番だと思っています。マイナスな話をぐちぐち言わないということです。

余談① 退職理由だけで採用の可否を判断すると人員構成が偏る

そもそも自己都合により退職するということは、親族の介護とか伴侶の転勤等を除いた場合、前職の会社や上司のやり方に我慢ができなくなるか、精神的、肉体的、金銭的に追い込まれないとなかなか決断できるものではないです。となると、次の職場でも同じ理由で退職する可能性はゼロにはならないわけです。退職理由というネガティブなことに時間をかけること自体がマイナスなので、次の質問にいきたいところですが、答えたくありませんと回答する選択肢は事実上ないので避けては通れないですね。

では今度は採用側から見た別視点です。実際この質問の回答”だけ”で合否を決めるとなると、中途採用は、男性の場合は定年退職したばかりの60歳以上の人、女性は子育ての各段階が終了した人、配偶者が他府県に転勤し、一緒に転居した人が多くなってしまいます。理由は簡単、退職理由が説明しやすいうえに前の会社の悪口でないから。

ただそれで採用を決定していくと、中途採用者の性別による年齢層が偏ってしまいます。

定年を過ぎた男性は経験を活かせるけれども、若い時と比べ新しいことへの適応能力が落ちているケースが多々あり、また年下の上司の指示を聞かない傾向があります。
子育て世代の女性は、子供の学校行事などのタイミングで一斉に有給休暇を取ったりします。育児を応援するとはいっても、職員の大半が一斉に同タイミングで休まれては仕事が回らない。任せられるポジションや職種が限られてしまいます。

採用する側としては偏ることのデメリットを知っているはずなので、この質問はあくまで判断材料の一つであり、どういう理由で回答してくるか聞いてくるものとして考えたほうがよいかと。ただ、採用担当の一部は、何度も言っていますが、頓智問題に堪えられるかどうかを基準にして、採用後のことが頭になさおそうな脳みそ空っぽの人間もいるのでなんともいえないのですが。

余談② 面接官は回答の中身だけでなく、求職者の人柄も見る

この質問は回答内容より、この質問の回答の”仕方”が採用の判断材料にしやすいと思うんです。

例えば回答内容だけでなく話し方も含めて、自虐的な人、他虐的な人、いい訳がましい人、自意識過剰な人、へらへらして仕事に自分から向き合わなそうな人、自分の考える正義感、倫理感が強すぎる人、よりよい労働環境を求める人、良好な人間関係を求める人、労働や成果に見合った給料や待遇を求める人、など大体透けて見えてくるんです。

それで、自社や採用予定のチームに合いそうか、組織に良い影響、悪い影響を与えそうか、イメージしやすいんです。しょせん短時間の面接なのでイメージに過ぎないのですが、だからこそ、回答の仕方が重要。内容は人それぞれで正解はないでしょうが、簡潔に実直に他の質問の回答の時と変わらない感じで回答するのが一番良いかと。

余談③ この質問をされることを避けるためには

この質問を避ける方法があります。それは以下の通り。

  • 人手不足の会社で応募者がほぼ全員採用の会社
  • 急募の会社
  • 応募が殆どない会社
  • 募集しているターゲットをオープンにして求人を出している会社

この場合は退職理由は殆ど影響がなく、聞かれたとしても不正行為や連続無断欠勤などの理由で退職していないかなどを確かめるために聞いているぐらいです。