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雇用関係助成金の私見㉓ キャリアアップ助成金 賞与・退職金制度導入コース

過去にキャリアアップ助成金は記事にしないと書いたことがある。その理由は【不支給要件が多数あり、迂闊に手が出せない】からである。資料が色々なところにあり、どこかで不支給となる要件があるのではないか、と疑心暗鬼というか、自分の解釈に自信が持てないからである。匿名ブログとはいっても、フェイクニュースを流すことになりかねない行為は避けたほうが無難。

ただ、ふと思いついた。疑問が残るところは、そのように書いた記事ならば、フェイクニュースにならないのではないか?と。最初に断りを入れておけば良いのではないかと。それに、このブログはあくまで自分のアウトプット用。ノートに書いておけ、といわれればそれまでなのだが…まあ、そこは大目に見てほしい。

そこで今回はキャリアアップ助成金の中の賞与・退職金コースについて、記事をまとめてみる。

読む資料は、ガイドブックだけで良いか?

キャリアアップ助成金に限らず、疑問が残れば【支給要領】を読むのに限る。というのも、不支給となる場合は【支給要領〇〇の規定により、不支給。】という支給要領に根拠がいるかららしい。雇用保険料を原資とする以上、支給・不支給の根拠は担当者の恣意的なものでなく厳格に、ということだろう。(といっても、法律と同様、解釈がわかれそうな場合、強行規定のように厳格なものや、多少の柔軟性があるものの違い、そもそも対応する要領の規定がないなど、全て解決できるわけではない。)

しかしキャリアアップ助成金に関してはそうやさしいものではない。他のコースのところに説明があったり、【趣旨に反する】場合は不支給となりかねないからである。

特に、今回の賞与・退職金制度導入コースの支給要領は、このコースについての記載はわずか3ページしかない。ただ、この3ページだけ読めばよい、とはどうしても思えないぐらい疑問点が多い。以下、疑問点を中心に記載する。

尚、わかり次第、随時修正する。

疑問①対象者は有期雇用労働者等全員。では雇用保険被保険者でない場合は?

キャリアアップ助成金で一番利用が多いのは正社員化コース。それ以外の4つのコースは、ざっくり【処遇改善支援】として一纏めにされている。

何が違うかというと、正社員化コースは有期雇用労働者等が正社員化した場合、つまり申請時点では正社員になった人が助成対象であるのに対し、【処遇改善支援】はあくまで、有期雇用労働者等が対象であり、有期雇用労働者等の処遇改善を助成する名目なので、正社員、正社員になった対象にはならない。よって、正社員用の賃金規程を作ろうが、正社員用の賞与・退職金制度を作ろうが、このコースには全く関係がない。

尚、有期雇用労働者等は、有期雇用労働者および無期雇用労働者のことであり、この”等”は無期雇用労働者のことである。なぜ有期・無期雇用労働者と書かないのかは知らない。また、無期雇用労働者は正規雇用労働者等”以外”のものである。さらに加えると、この有期雇用労働者には派遣法2条に規定する派遣労働者も含まれる。

では正規雇用労働者と無期雇用労働者の違いは…と、この雇用形態だけでも記事にできるほどややこしいので、説明はこのあたりでやめとく。少なくとも、自社で”正社員”と呼んでいる人達全員が、必ずしもこの助成金上の”正規雇用労働者”とイコールではない、と思ってもらえばよい。

あと、当然ではあるが雇用保険料で運営されている以上、対象者は雇用保険被保険者である。いつ時点で雇用保険被保険者になっている必要があるかは、助成金ごと、コースごとで異なっているので確認してほしい。

疑問点①週20時間未満の雇用保険被保険者でない人はこの全員に含めるのか、含めないのか?

疑問点①対象者全員とあるが、その事業者の有期契約労働者全員をどうやって労働局は把握しているのだろうか?やはり、雇用保険被保険者だけでよいのか?

注意点①例えば有期契約者1名しかいない会社だったら、制度導入で40万円なら儲かるからアリじゃね?と思う人。その人が辞めたらどうするのだろう?

例えば雇用保険被保険者が支給申請時、支給決定時(これが厄介。支給決定がいつになるかは労働局が決めるのだからどうしようもない。)に0人になっていたら、不支給になる。0人になると不支給になる根拠は、雇用関係助成金の共通要領…。だから3ページだけ見ても間違えるわけである。

疑問②支給した実績だけではなく、就業規則等に明記する必要あり。では実態と異なっていたら?

「賞与・退職金制度を導入しました、支払いました。だから助成金を申請します。」では勿論通らない。キャリアアップ助成金のキモは、就業規則または労働協約の規定。これがなおざりになっていたり、ほったらかしになったり、規定前のそれがいい加減だったりしたら、もうアウトになる。労働条件通知書も同様である。労働条件の内容は就業規則を渡せばよいという厚生労働省内の通達?があるが、キャリアアップ助成金はこの限りではないようだ。

なぜか?知らない。

では、例えば導入前の賞与・退職金の規定に支給する、という規定がある場合で、実際には有期雇用労働者には支給していなかった場合はどうなるのか?私にはわからない。

または、給与明細や労働条件通知書に書いてあるでしょう、では通用しない。あくまで就業規則または労働協約である。

なお、上記ではわざと給与明細と書いた。ガイドブックでは【賃金台帳”等”】と書いてあるのだから、この”等”には給与明細も該当するのではないかと思ったのだが、支給要領をみるに、この”等”は船員法における報酬支払簿をさすのだから、給与明細ではダメだと思う。以下支給要領を引用。

支給要領1007 添付書類

(チ) 対象労働者の労働基準法(昭和22年法律第49号)第108条に定める賃金台帳又は船員法第58条の2に定める報酬支払簿(以下「賃金台帳等」という。)

給与明細と賃金台帳の違い?賃金台帳は労働基準法における法定書類であり、保存義務があることからだろう。この違いの説明も脱線するし長くなるので、省略する。

疑問③既に一部のパート労働者に”寸志”という名目で支払っている場合は?

ガイドブックより引用する。

・既に一部の有期雇用労働者等に賞与を支給している(就業規則上も制度の規定あり)が、一部の有期雇用労働者等ではなく、すべての有期雇用労働者等に対して一律支給すると就業規則を変更した場合は、「対象を拡大した」と解され、賞与制度を「新たに設けた」とはいえず、支給対象外なります

・他方、就業規則等に規定がなく、慣例的に支給していた賞与制度を就業規則等において規定した場合は支給対象なり得ます。(退職金制度も同じ。)

・対象労働者に該当する場合、定年の適用を受けない有期雇用労働者については、原則として、年齢にかかわらず、退職金制度を適用している必要があります(ごく短期間の雇用契約である場合を除く。定年の適用を受ける無期雇用労働者については、当該雇用区分における定年年齢まで。)。

賞与に関しては、有期契約労働者の一部にでも支払っていたことがあったらダメ、というわけではなく、就業規則に規定したうえで一部でも支払っていたらダメということである。就業規則がとても重要。

では、

この場合、就業規則に書いてなかった方が有利。では「”寸志”を支給する場合がある」という規定があった場合は?

退職金に関しては、有期雇用労働者は大抵定年がないので、雇っている限り退職金制度の適用を受ける。定年を超えて5年超の有期雇用契約で無期転換した場合は?

という疑問が今でも私の中では解消できていない。

疑問④いくら払えばいいか、いくら積み立てればよいか?

これもガイドブックから引用

①賞与について、6か月分相当として5万円以上支給されているか

②退職金について、「1か月分相当として3千円以上を6か月分」または「6か月分として1万8千円以上」積立てされているか

金額が明記されている。退職金については、たしか中退共のパートの積み立てが2000円以上だから、最低基準はこれぐらいかもしれない。

では、退職金として前月の基本給の1か月分支払う、とし、そのように規定した場合、助成対象となるか?多分、積立額とか実際の支給額が上記の具体的金額未満になったらダメだと思うし、実際積み立てていなかったらダメだろう。(例えば上記の例でいくと基本給1か月分が退職金ならば時給1000円×(週40時間勤務)173時間=17万円ぐらいは積み立てていなくても、現預金の残高で即支払える金額だが、支給要領を見るに、積み立てておかないといけないようだから。)

疑問⑤申請できるのは1事業所あたり1回かぎり。では増えたら?

当然だが、賞与退職金制度”導入”コースなのであって、賞与退職金制度運用コースではないので1回限りになろう。

この事業所というのは雇用保険適用事業所を指す。だったら、適用事業所が増えた場合は?

退職金といっても対象とならないのは、事業主向けQ&Aで、iDeCo+は対象外と書いてあるので、それ以外の制度ならば対象となると思われる。iDeCo自体が労働者自身が積み立てる制度なので、それに会社が上乗せしてもダメということだろう。

ではいわゆる”生涯設計手当”を導入して、基本給として受け取る場合と年金扱いにする場合、年金に充てて基本給が下がったら対象になるのか?以下、支給要領を引用。

支給要領5002 支給対象事業主

ホ  賞与若しくは退職金制度又はその両方の適用を受ける全ての有期雇用労働者等について、初回の賞与の支給又は退職金の積立て前と比べて基本給及び定額で支給されている諸手当を減額していない事業主であること。

他のコースだと、「合理的な理由」がなく、という言葉がついているが、このコースについてはその「合理的な理由」という言葉がない。となると、基本給が下がってしまったらどんな理由があろうともアウトになる可能性があるが、生涯設計手当の場合は退職金制度として認められるというQ&Aの規定もあり、私には正解がわからない。

課題①賞与・退職金、両方どれがいい?(私見

断然、賞与だけ。退職金制度はもともと助成金あるなし関係なくするつもりであった事業所以外は避けたほうが無難だと私は思っている。理由は以下のとおり。

・賞与は、業績不振により不支給になってもよいから。積み立てる必要性もなく管理も退職金に比べれば容易。退職金と違い、事務的な難易度が違いすぎる。

・退職金は、業績不振のため積立しないというのは、労働条件の不利益変更に該当するため、原則許されない。また、有期契約老労働者全員分を永続的に積み立てる必要性から事務負担、経理負担がかなり増す。また、退職金制度と一言にいっても、数数えきれない制度があるため、どれを選ぶか、どう違うかの理解も必要。経理処理、税務関連もそれにあわせないといけない。正社員用の退職金制度を”新たに”作るのでもかなりキツイ大仕事なのに、本当に有期契約労働者等のためにしますか?という話。

尚、賞与は1人当たり5万円以上が対象。しかも有期労働者等全員。(例えば対象者6か月以上という制限を設けることはアリ)。助成金が中小企業で賞与、退職金制度両方でない場合は40万円固定なので、対象者が8人超えたらマイナスになる助成金

例えば週20時間勤務(時給1000円×20×52÷12=月収86,667円)とかの有期雇用も対象になるかと思うと、手間暇と今後の不利益変更不可という縛りを考えれば、導入するほどメリットのある助成金とは私は思わないのだが…。勿論、会社の状況にもよるので、絶対やめとけ、という気はない。

ちなみに有期雇用労働者に退職金を支給しない方がいい、といっているわけではない。それよりも正社員(限定正社員もアリ)になってもらうか、”功労金”という形で各労働者が退職する際に、個別判断で差をつけた金額で支給した方が良いと私は思う。この場合、当然助成金は貰えないが、1事業所1回限りの、支給されるかどうかの保証もされない助成金のために、将来を縛る固定化した制度を導入するのとどっちがいいかという話。

疑問⑥賞与・退職金制度を両方導入したら、正社員化コースが不支給なのか?

上記の意見をYouTubeで耳にした。これの根拠となる規定を私は見つけられていないので、正しいのか間違いなのかは今のところわからないが、今のキャリアアップ助成金の正社員化コースは、正社員と有期労働者等との間で、「賃金制度や計算方法が就業規則等で違い」があることが明白でないとダメ。その違いは「賞与・退職金・基本給・通勤手当以外の手当」のどれか。基本給と手当で違いを付けるのは、同一労働同一賃金の問題や昨今の最低賃金の大幅増加の対応から難しい所があるので、賞与か退職金の方が差をつけやすいのは確か。

ちなみに、正社員化コースを”今”始めるならば1人あたり80万円以上の助成金の受給が可能。1人でこのコースの倍の金額…。どちらを優先すべきかは金額上明白で、賞与・退職金制度を両方導入するより1人正社員に転換させた方がよい、という話になる。

では本当に不支給になるかというと、私はその意見には賛同しない。勿論非正規に退職金を支給しない、というルールのほうが理解しやすいが、例えば退職金ならその支給の計算方法で差がついていることを就業規則等で明記すれば対応可能であると思っている。この考え方は、とある社労士から確認したものだが、勝手な引用はできないので、根拠を求める人は探してみてほしい。ちなみにYouTubeの投稿ではない。

ただし、私は決定権を持っている人ではないので、この意見が正しいかどうかは読者が確認してほしい。

YouTubeの短い投稿やこの匿名ブログを見て、自社にとっての重要な判断をする人、支給不支給の判断をする人は殆どいないと思うが、一応念のため補足しておく。

最後に

以上である。これはあくまで賞与退職金制度導入コースのみの記事である。コース共通のキャリアアップ計画届などは省略した。その理由は…もう5000字を超えたからである。