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雇用関係助成金の私見⑫ 労働移動支援助成金

久しぶりの雇用関係助成金私見。今回は「労働移動支援助成金」について。この助成金についてはは私見というより、ざっくりとした紹介になる。

最初に断っておくが、これ以降で説明する「再就職支援計画」を私は理解していないので、その説明に誤りがあるかもしれない。詳しくは公式資料や専門家に確認いただきたい。

助成金の名称から「労働者の再就職支援かな?」と思ってしまうだろう。その認識は間違いではないが、労働者1人1人の就職活動全部を対象にするものではない。

わかりやすくいえば、1つの事業所(会社)の労働者が多数解雇され、ハローワークに多数の労働者が一気に仕事探しに押し寄せてくるような事態に対応するための助成金といえる。

「大量離職対応助成金」といった方がイメージはしやすいかもしれない。勿論労働者の名誉のためにもそんなネーミングにはしないだろうが。*1

雇用調整助成金」ではなく「労働移動支援助成金」を活用すべきだった、とコロナ禍が落ち着いてから言い出している専門家がいるそうだが、この助成金のことを理解して発言しているかどうかは本人でないとわからない。だが、この助成金は「大量離職」があることが前提。つまり、企業から大量の失業者があふれだす、ということである。そして、そのあふれた失業者が手にするのは失業手当でしかない。あの時、いくら助成金があるとしても、雇い入れできる業種や会社がそれほどあっただろうかと疑問に思う。正直いって、「雇用調整助成金」の代わりにはならないだろう。当然、令和2年度と令和4年度後半とでは状況が異なるが。

この助成金は、まず「再就職援助計画」というのが公共職業安定所長に認定されているのが前提となる。

「再就職援助計画」とは何か?

事業所には「1つの事業所において、1か月以内の期間に、30人以上*2の離職者を生じさせる事業規模の縮小・事業転換等を行おうとするとき」に、最初の退職者がでる1か月前までに管轄公共職業安定所に提出する義務がある。その計画が「再就職援助計画」。

1か月以内に1つの事業所で30人も離職者というのは、労働者の自発的な退職だけではそうそう発生しない。事業主都合の解雇や雇止め、中途契約解除が対象に発生するととらえてもよいかと。会社が潰れるか、転勤先もないようなそれなり店舗が潰れるときか、大量のリストラが発生するような時である。

そうそうあるケースではないと思う。だがもしコロナ禍で「雇用調整助成金」を特例で対応していなければこちらの助成金の出番の方が多かったかもしれない。大量の失業者があふれて社会不安になったかもしれない。まあ、あまりこの助成金の話題を報道で聞かないということは、大量離職がそれほどは発生していないということではあろう。勿論発生していないというつもりもない。私が知らないだけで、実際こういう事態に陥ってしまった事業所や企業もあったと思うし、その立場になった労働者にとっては深刻なケースだと思う。

この助成金が活用される事態が好ましい事態ではないし、事前に勉強するようなものではないかもしれないが、そういう助成金があるという事実は知っておいてもいいと思う。

この助成金は「再就職支援コース」と「早期雇い入れ支援コース」の2つがある。

再就職支援コース

ざっくりいえば、大量に人を解雇する事業所用のコースである。解雇する会社になぜ助成するのか?とぱっと見思うかもしれないが、「再就職支援計画」に沿った行動に対する助成であり、要は解雇した労働者の再就職支援を行うための支出に対する助成のようである。大量に離職者を発生させた事業所には再就職の支援を行う責務があるだろうということであって決して解雇してはい終了、というわけにはいかないのである。破産した場合とかは?などの説明は、結果的に「再就職支援計画」という制度の説明になってしまうので、これ以上の説明は割愛する。

ただ、大手企業だと、リストラする際には助成金がなくとも再就職支援サービスを使ったりしているものである。それで、リストラされた労働者がどれくらい雇用されるかというと、勿論労働者本人の能力や年齢、景気などには左右されるだろうが、再就職率が高いかといいえば、はっきりいって微妙である。

早期雇い入れ支援コース

「再就職支援計画」のリストにのった労働者、つまりクビになった人を雇う事業所用のコースである。こちらの方がイメージしやすいと思う。大量離職者の再就職先が早く見つかることに越したことはないのだから助成金の趣旨もわかりやすい。雇った人の育成支援(要は教育訓練)を行うと、それも助成対象になるようだ。

正直事前に勉強して助成金の獲得を狙うというような助成金ではない。また「再就職支援計画」自体を説明するのはそれなりに勉強が必要。〇〇という会社で大量離職がでてます、とハローワークもアナウンスしないだろうし(よっぽどの大企業で報道された場合は別だろうが)幸い自社はそういう事態に陥っていないこともあり、この助成金の話はここまで。

*1:近所の〇〇さんの会社、つぶれたんですって~とか、あの中途採用の人、あの大きな会社に入ったのに解雇されたからうちにきたんですって~、あの会社やばいらしいよ~とかいう輩がいるから。世の中は他人の不幸や見下すことのできる出来事に嬉々とする人間はいる。

*2:30人の定義は公式資料を参照されたい。