けーせらーせらー

仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

「自分を見つめる心理学」 私の中では著者作のベスト本

私は昔から「加藤諦三」氏の著作を何冊か読んできた。

メンタルに関する本に対して何冊か本を読んできたが、根拠をあげて論理的に解決策を出す著者、優しくなだめて節する著者のどちらがが多い。だがこの著者はあなたの尻を叩いて、目を覚ませと激励するスタイルである。

著者作の本は多数があるが、「自分を見つめる心理学」(旧題:自分と出会う心理学)という本が最高傑作だと私は思っている。

その最高傑作だと思っている本が実は本棚からなくなっていた。探しても見つからないそれならば買い直そうとしたが、タイトルを忘れていたので本屋でも、電子書籍でも見つけられなかった。

そんななか、先日、部屋の押入れで本棚でない別のところで別のものを探していたら見つかったのである。というわけで今回取り上げてみた次第である。(尚、タイトルがわかったので調べたところ電子書籍では見つけることができた。)

読み直したら再度書評を書き直したいと思っているが、一旦取り上げたくて記事にしている。

まず最初の1ページからガツンとくる。非合理な考え方として、以下の表現を引用されている。

「私はうまくやらなければならない。そして自分がうまくやることによって人々の承認をえなければならない。」

最初の1ページで、今のメンタル関連の簡潔な回答がでてしまった。この本の初版は1993年。約30年前の作品だか30年たった今でも、メンタル関連の本は、表現や証拠を変えつつも、この考えをもっていることを戒めているのに変わりはない、ともいえる。

うまくやらなければならない、と思っているから焦るし怒るしストレスが溜まる。周りの全員がうまくやらなければならければならない、とあなたに強制していない。しかも、あなたにとって「うまくやる」というのが他人にとっての「うまくやってる」と一致するわけではない。

人々に承認を得ないといけない、と思っているから、他人の評価を気にするし、他人はうまくやった自分を評価すべき、と他人へどう評価すべきか求めてしまっている。他人の評価の基準は他人が決めることだし、自分の基準で評価を強制すること自体がおかしい。そもそも評価されようがされまいがそこまで気にすることではない。

簡潔にいえばこうだ。「自分は良い評価をされなければならない」、「自分は悪く評価されたくない」。この考えをただせばいい。

この考えと逆になれば、すくなくともその強制を減らしていけば、メンタルの負担は軽くなるだろう。

著者の作品では、個人が他人の評価を気にする理由として、親の接し方に問題があると指摘している者も多い。親が求める基準で評価されなければいけなかった子どもは、大人になっても他人の評価に縛られ続ける。他人の顔色ばかり窺うようになる。勉強の成績が良い子というのは、親の期待にそって「うまくやらなければならない」と生きていた結果なのかもしれない。良い子というのは親にとってのよい子、大人にとってのよい子であって、本人の生きたいように生きた結果のよい子ではない。だから、親の評価に縛られ続けたよい子のまま大人になった人間が社会にでて、その評価に苦しむことになる。いつまでたっても自分のやりたいことをして生きられない。別にやりたいことを仕事にしろ、といっているわけではなくて、他人の評価を基準にして生きる必要はない、ということである。

この場合の親は世間体を気にする。他人に迷惑をかけないことを気にする。間違ったことをすることを気にする。そういう親の考えの基準に従い、反抗することもなく、人に迎合して、自分を抑圧して、毎日ビクビクしながら大人になってしまうとメンタルをやられる。

よく子供の時素行の悪い、成績も悪く親に期待されない子だったほうが、大人になって成果を上げる場合があるのは、その子が自分の欲望に沿った形で育ったからではないか。

ただ、著者の本は、メンタル疾患に苦しめられている最中の時に読むと結構キツイ本が多い。自分のこれまでの人生を否定されているかのようだからである。「うつ病になったのはこれまでのあなたの生き方のせい」といっているかのような表現もでてくる。良い子だった自分は間違っていたのか、親が悪いのか、そう苦しむ。今からでもやり直せる、と言われても、過去の自分はもう取り返せないので、今でも子どもの頃のことの記述を読むと治っているともいえる私でも自分の人生を否定されているようでキツイ。だから、メンタル疾患継続中の方にはおススメはしない。

ただ、この本に関しては、周りの人間に対して、現在進行形で怒りや恐怖、罪悪感を感じている場合にはおススメである。そんなに子ども時代のことの記述がない。今の自分の偏った考えにガツン、ときつい一発を入れてもらえて、現在進行形の周りへの怒りや不満、不安とかがわかるおススメの本である。

最後に、この本の一言を引用してこの記事はおしまいとする。

「勇者は恐れず」