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「99%はバイアス」 著者への「バイアス」で書評が上手く書けない。

今回の記事は「99%はバイアス」という本の書評である。ちなみに「バイアス」とは”偏見””先入観”という意味。

著者は今やインターネットの世界にとどまらず各方面で活躍している有名人である。著者の本職はプログラマーだそうだが、「論破王」の2つ名を持つほど幅広く活躍している。書籍でも多数の本を世にだしている。

私の中での著者のイメージは(旧)2ちゃんねるの管理人であり、YouTubeをみると著者自身がだれかの質問に答える「切り抜き」が沢山表示される人である。2ちゃんねるの管理人の頃のテレビ番組では、2ちゃんねるがインターネット上の匿名の誹謗中傷を生み出す「諸悪の根源」であり、それを管理する著者を”大悪人”として呼びだし、テレビご用達の論客や知識人がとっちめようとしたときに、逆に「論破」してしまうほどの話術を持つ人である。今はかつての悪の親玉扱いであった著者が、その知識人枠として出演しているのは、テレビの節操のなさに笑えてしまうほどである。

話が反れたが、この本で記憶に残ったのは、いかの4つ。

YouTubeで「切り抜き」動画が流行ると想定し、自身の動画の「切り抜き動画」を赤の他人が作ることを認めたことで多くの稼ぎを得たこと

・自分の発言の一部を「切り抜き」されると、自分の意図する考えと異なる解釈をされ、誤解され、自分の意図しない評価をされることは承知の上で、それを異に返さないという考えであること

YouTubeの「切り抜き」動画は「暇つぶし」用のものであり、コンテンツとしては「本物」ではないと認めていること。だが、とっかかりの敷居が低いからこそ閲覧数が増え、収益が見込めると判断していること

「スピード」が第一であること

著者がいうユーチューバー、芸能界、実業家として成功の秘訣は、自分の意図しない評価をされたとしても気にしない、ということだろう。こう発言する著名人は今までにないタイプである。世間で著者のキャラクターが勝手に独り歩きしても気にしない、それが成功の秘訣、かもしれない。

ちなみにこの本、エッセイ集のようなものである。最初から最後まで順番に全部読まなくてもなんら問題はない。1つ1つの章を読んでも意味がわからなくならない。そして、その章ごとに著者独特の考え方が含まれているが、読みやすさが重視されているようで、1日もあれば読めると思う。

悪い所をいえば、彼の「切り抜き」動画での発言と同じ内容のものがあること(同一人物だから当然である)、彼の成功した分野以外の話は記憶に残りにくい、ということだろうか。あと、労働者のためのビジネス本扱いにはならない。

さて、どうしてこの本についてブログに書こうかと思ったのは、どうしても彼のX(旧Twitter)での発言がインターネットニュースで取り上げられすぎているからである。もはや、著者が解説委員なのではないかと思うほどである。有名になりすぎた、といえばいいのか。有名になりすぎて、取り上げられすぎて「専門外分野への素早い発言」だったのが「有識者」扱いになりつつある。そうなると「専門家」による調べたうえでの発言と比較すると、どうしても軽い。また、多数の人による「動画切り抜き」合戦のうえ、注目を集めやすい「悪口」ばかりが取り上げられる。動画のサムネイルは「〇〇はバカ、無能」とかそんな煽り文句が多数でてきたりするようになっている。また小学生の間で「あなたの感想ですよね?」「論破」とかいう言葉が流行ってしまっているようで「影響力が大きくなりすぎている」。そうなると著者のイメージにもどうしても「バイアス」がかかる。自分もそうで、最近の著者のイメージはどうも他人のあげ足を取るイメージが強くなってきている。

というわけで本のタイトルどおり自分の「バイアス」が影響するかどうか試しつつ書評を書いてみた。

この本はおそらく著者が書いていないだろう。文章構成や言い回しなどがどこかで見たような表現になっている。よって、動画やテレビで見た著者と同一人物の著作とは思えない感じがする。著者の動画での意見を、誰かが使って本にした感じである。

所感としては、この本はどうも「バイアス」をテーマにした「切り抜き」動画を本にしたようなイメージをもった。書かれた内容自体に特に問題はない。普通に正論が書かれていた、気がする。気がする、ということはつまりあまり覚えていないということである。覚えていないのに書評にするな、といわれるとそれまでだが、要するに”99%”はどこかの「切り抜き」にあるのではないかと思ってしまうのがこの本、というのが、この本に対する私の「バイアス」である。

「”無料”のYouTubeのなかの「バイアス」をテーマにした「切り抜き」を読むほうがコスパいいんじゃね?」と言われたら、論破されそう。だが、そういう時は「それってあなたの感想ですよね?」と返せばいいだろう。うん、著者関連のキーワードはいろんな場面で使えて応用がきく。だからこそ、著者が人気になったのだろう。