けーせらーせらー

仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

パワハラの被害者にならないために

前回、加害者にならないための私見を書いた。
今回はその逆となるが、被害者にならないための記事。
被害者にならないための記事は、正直、私の感情と過去の経験から怨念渦巻く私見になるかもしれない。長文を書き、かつ何度か書き直すつもりである。例によって、私見のためバック推奨。

第1に、パワハラで”会社”と”裁判”してまで戦うのは基本的におすすめしない。勝っても負けても居場所がなくなる可能性がある。そしてどちらにしても腫物になるだけである。時間と金と自分の健康がもったいない。退職するということは、これまで築いたものやこれから受け取ることができるであろうものを捨てなければならないかもしれない。それはとても悔しいことだし理不尽だし到底容認できないであろうが、何よりも、これからの時間と金と健康の方が大事であり優先させてほしい。とっとと見切りをつけたほうがいい。

過去のパワハラ長時間労働による被害者、およびその遺族の尽力で劣悪な労働環境は大幅に改善され、長時間労働に法的な線が引かれた。ただ悲しいことにそれが実現したのは犠牲者がでて、その犠牲者の遺族にマスコミが味方についたことで動いたため。大抵の人は取り上げられもせず、泣き寝入りである。しかし、大抵、当該会社は健在である。つぶれたりは殆どしない。かつてパワハラの象徴とまでいわれた、とある飲食業の経営者は再び会社のトップに返り咲いて笑顔で活動し、世に苦言を呈したりしている。どの口で人の悪口をいうか、お前にその資格があるのか、と激しく問い詰めたいところだが、そもそもその活動ができるのは彼が生きているからである。死んではいけない、死んでも仕置人、仕事人はこの世にはいない。いても次の回で忘れられている。生き残ることが大切である。

なので、第2に、心身の健康を害すレベルに達するパワハラの場合は、即逃げることをお勧めする。仕事の基本は健康体である。これは、私が身をもって今も経験している事実である。元気があればなんでもできる、というのは名言である。

第3に新入社員。研修段階で、個の尊厳をないがしろにし、精神的な攻撃をする研修をこの期に及んでまだ実施する会社は、もはや時代遅れである。そういう組織はヤバい会社の可能性が高い。パワハラについてどうこういう以前にその会社に未来はないと思われるので、早めに転職する準備に入った方がいい。
昔は、学生気分を払拭させるため、気を引き締める意味での精神的側面を強調した研修があったが、数年前のどこかの会社で自殺者を出してからは状況が変わった。そもそも、個の尊厳をないがしろにしなくても、職業人としての研修は可能である。
尚、マナー講師?失礼クリエイター?超ウケる、と思えるぐらいの余裕がある場合や、単に言われたことができずに叱られてプライドが傷ついた、実力不足がわかったとかいうような場合は別の話である。線引きは難しいが、心身の健康が第一である。
ちなみに、私の昔いた会社も精神的な研修として、管理職となり勘違いした人間人の鼻をへし折るために、集団で一人の人間の悪いところをよってたかって言い、つるし上げるという研修があった。目的は先に書いた通りだが、その研修の結果というと研修参加者達の人間関係が最悪になっただけであった。以降は研修内容が大幅に見直された。研修担当も人間。あほで結果責任を負わない外部研修講師の営業に騙されるときもある。その1回限りの失敗研修にあたってしまう場合もあるので、その研修が例えば毎年かどうかの見極めは大事である。

第4に、心身の健康を害するレベルまでにはいかないパワハラの場合。この場合は、状況をみる。パワハラ相手の上司は、社長の子飼いの部下かどうか、人事異動でその人物と離れられるかどうか、会社自体の体質がどうか見定める必要がある。そして、その上司が単なる異端児、問題児であったのなら、退職という手段をすぐにとらない方がいいかもしれない。残念ながら、どこの組織にも頭のおかしい奴はいる。会社というのは人格で上司になるわけではない。人を見定める、というのも社会人としてのスキルの一つである。尚、社長の子飼いの部下だとか、人事異動がない小さな会社だったら転職をお勧めする。

第5に、心身を害さず、かつ、自分がアラサー以上の年齢であった場合。この場合はすぐに逃げることはおすすめしない。逃げた後の転職活動で苦労するからである。残念ながら、パワハラ上司と同レベルのアホな採用担当は山ほどいる。SNSYouTubeの採用でマウントをとろうとする輩たち、新卒の際に会ったアホ採用に会ったことがあると思うのでわかるであろう。そして、前職の成果を面接で必ず尋ねてくる。パワハラの被害にあっているのにどうやって成果を上げるんだと怒りをぶちまけたい気持ちになるが、採用面接はそういう基準なのだ。そして、その考えも人を雇うということに関しては合理的な考えなのだ。パワハラに遭遇しましたと正直に言っても通じない。前の記事にも書いたが、今や会社の管理職や人事はパワハラの訴えに委縮している。初対面の人にパワハラを主張する人間は、自社に入社してもパワハラを訴える可能性が高いので、採用しない方がいいという考えになる。だから、どうやってそこを搔い潜って転職先を見つけるか、冷静になり、戦略を練って、実際に転職先を確保してから転職する。

よく、芸能人がよくいじめから逃げよというが、それは子供の話ということを覚えておいた方がいい。子供のいじめは逃げたほうがいいのは当然だか、その一方、芸能人でそのような発言が公の場で取り上げられる人は、芸というスキルをもって結果をだした人でもある。無名の芸能人ではとりあげられない。学卒に成果を求めることはないが(職業次第であるが、大抵はそんなに成果は簡単にでない。)30歳程度になれば話は別である。社会人としての年月に見合う何かを採用する際には期待される。パワハラにあったから何も成果はないという正直な発言は面接で避けて、その何かを面接でアピールしなければならない。

そして、第6に、自分が今の会社での実績と信用があり、パワハラ上司が個人の資質の問題でパワハラをしていて、社長など上層部とはつながっていない場合。こういうときは、退職するのではなく、パワハラ上司を追い出すつもりでパワハラを訴えてもよいと思っている。これまでのおすすめは退職前提だ。だから負けても退職すればいいだけ。だから戦えばよい。

どうやって戦うか。パワハラを認めさせるためには、客観的でなければならない。客観的というのは証拠が必要ということ。そして、前回も書いたが3要件、6の行動を踏まえて対応する必要がある。自分は過去の経験から対策を考えてはいるが、これについては、今後加筆か別記事にする予定である。

ひとつの例として挙げると、労働局や労基署の相談窓口に相談してみる。相談員と話すことで自分に起きていることを自分の頭で整理できる。パワハラの見識を持つ人から考えや制度を聞くことができる。対応はその話を聞いてからでもいいと思う。
ただし、過去の人事担当として一言付け加える。過去、上司と喧嘩して立ち去った労働者から何度も「パワハラで訴えてやる!」と捨て台詞を聞かされた。しかし、そう言う場合即座に労基署からアクションがあったことは、、、ほぼない。上司と喧嘩した、というのはパワハラの要件ではない。感情的になって、喧嘩話を聞かされて相談員も辟易している時もあるらしい。相談するタイミングが悪い場合もあるかもしれないので、そういうときもある、と思っておいた方がいいかもしれない。

では、具体的な話。まず、パワハラ3要件について。
職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる
①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるものであり、
①から③までの要素を全て満たすものをいう。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。

①は要するに、上司と部下のような関係を指す。相手が上司なら該当するだろう。逆に、役職自体は同じだとか、上下関係にない場合は該当しないと思われるので、同僚からの嫌がらせでは①に該当しない。先輩だけれども上司、指導者ではない場合も難しかろう。
②はまず業務上必要であること。仕事の指導であり、そしてその言動が相当な範囲を越えなければ該当しない。なおがきにあるように、適正な指示ならパワハラに該当しない。相当な範囲、というのが明確でないが、平たく言うと指導と呼べるものではなく、いじめ、いやがらせに近いもの、だということかと思われる。③就業環境が害される、とは自分の気持ちの問題ではなく、平均的な人ベースでの基準になる。自分が嫌だと思ったからと言って該当するかはわからない。
そしてなお書きにあるように、客観的、業務上必要、相当、適切、ならパワハラに該当しない。そして①②③尚書きすべてに該当しなければパワハラに該当しない。
客観的ということは、自分がどう思ったかではないということだ。まず、第三者からみることができないと、つまりれっきとした証拠が提示できないと、パワハラとは該当されないだろう。(否定はされないだろうが、肯定もされない。)
どうだろうか。誰が見ても明らかなよほどのことがあったからパワハラを訴えるのだろうが、実際の裁判がどうなのかはわからないが、一人の人間を加害者にするということは、それ相応の証拠が明示できない限りは厳しいと思われる。邪魔な上司を貶めてやるという人間も世の中にはいるので、自分はそうではないと証明しないといけない。だからといって、証拠のために死ぬという選択肢はなしだし、メンタル疾患にかかった後で裁判に訴えても、自分の知力体力が落ちたままでは戦えないし、知力体力が戻ったときには時効が待っているので、メンタル疾患が発症するまで我慢するという選択肢もなしだ。