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雇用関係助成金の私見④ 人材開発支援助成金④ 事業展開等リスキリング支援コース 令和5年度版

R6.6.17追記 令和6年度版の記事を作成しました。

kesera22.hatenablog.com

 

以下の記事は令和5年度版の記事です。令和6年度と違う箇所がありますので、ご注意下さい。

人材開発支援助成金の話4回目。今回は「事業展開等リスキリング支援コース」である。このコースは令和4年12月に登場したコースで流行語でもある「リスキリング」をコース名につけたコースである。
対象となる訓練を支給要領の最初に書かれている0001趣旨の後半を以下抜粋する。
(①②の数字はわかりやすくするために書き加えている)

事業展開等リスキリング支援コースでは、企業が持続的発展をしていくため、
①既存事業にとらわれず新規事業の立ち上げなどの事業展開に取り組み、
新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練等を実施する

ほか
企業内において業務の効率化や脱炭素化などを図るため、

デジタルやグリーン分野の技術を有効に活用することができる人材を育成するための
訓練等を実施する事業主に対して助成を行うことにより、事業主によるリスキリングの実施を促し、もって企業内における労働者のキャリア形成を効果的に促進するとともに、企業の生産性の向上に資する。

上で2つに分かれて説明されているため、「事業展開」と「デジタル化・DX化・カーボンニュートラル化に対応するリスキリング」とわけて考えることにする。

「事業展開」はわかりやすい。そのまんま、その企業でこれまで取り組んだことのない事業をする際に必要となるスキルの取得用である。

問題はリスキリングである。

多分総理大臣お気に入りの言葉を入れたかっただけなんじゃね?と7/26まで思っていたが、どうやらこれは私の誤りだったようだ。

リスキリングは「新たな仕事や職種に就くためのスキル、特に現在はDX化の進展により生まれる職種に就くために必要なスキルを習得すること」を意味するらしい。このあたりの定義については某新聞を読んだところ、リスキリングを日本語で「学び直し」と訳してしまったせいで”学び”全般を指すかのようになってしまう誤解を生んでしまったと記事に書いてあった。

つまり、DX化、デジタル化の進展により”失われる”職種や業務があり、DX化の進展により”生まれる”職種や業務がある。その新しい職種・業務につくためにはDXに関連したスキルの習得が不可欠であり、労働者がそのスキルを”会社主導”で取得することを「リスキリング」というそうだ。別に「リスキリング」はDX化に限ったことではないが、この助成金上はDX、デジタル、カーボンニュートラルに限定している。

尚、大学院に入り直しての学習は「リカレント教育」となり、「リスキリング」ではないようだ。よって「人への投資促進コース」のデジタル分野は「リスキリング」とはいえないようだ。

学びではなく、DX、デジタルに関する業務に使えるためのスキル取得が対象になる、というふうに理解するとこのコースの目指す訓練がおぼろげには見えてくる。

さてこのコース、ガイドブックをご覧いただけるとわかると思うがこれまでのコースのガイドブックと比較すると以下の利点がある。

  • ガイドブックのページ数が少ない
  • 提出資料が少ない
  • 定額制サービスが使える
  • 助成率も助成額も会社の限度額も高い
  • 解雇等がないという要件(縛り)がない
  • 資格試験に関する受験料も経費助成の対象になる*1
  • 本社で支社の分も一括して申請ができる

多分このコースが今年の推し、乗るしかない、このビックウェーブに!

 

となると問題は助成対象になる訓練はどんな訓練か。同じデジタルでも「人への投資促進コース」の高度デジタル訓練のような具体的な指定がない。いいような悪いような気もするが、要はこのスキルは企業内の新しい仕事に使えるレベルともいえる。

「対象となる訓練」を考えるには、ガイドブック8ページの具体例と、13、14ページに書いてある「対象とならない訓練」から判断するのがいいと私は思う。例示されている事柄は確実に対象外になるためである。後、その表の上の「事業展開に伴う新たな分野で必要となる専門的な知識・技能の習得を目的としているかどうか」という表現に注目したい。事業展開”等”の”等”が抜けている。

何が言いたいかというと、
・事業展開の場合は新たな分野で必要となる専門的な知識、技能を習得。

・デジタル化/DX化、カーボンニュートラル化は有効活用できる人材を育成する目的なので、そのスキル自体が今の職務に直結しなくても(無関係なのはダメだろうが)、企業内のデジタル分野と脱炭素化の業務で使えるのならば”職業人として共通して”必要な訓練でも助成対象と読み取れる。冒頭、支給要領の趣旨を記事に転記したのはこのためである。

次に具体例をあげて考えてみる。

・事業展開の場合は、新たな事業を予定であっても決めているはずなので、それに必要な知識や技能を習得するための訓練であるとすれば支給対象だろうが、新たな事業を始めるにあたって新事業に関する勉強会、セミナーに聴衆として出席しただけでは対象外の可能性がある。聞いただけでは”専門的な知識の習得”とはいえないだろうし、対象外として例示されている”説明会”にも該当しうる。

・ドローンの講習はドローンを操縦することが企業のグリーン化事業等に必要ならば対象になりうる。単にドローンを”趣味”で操縦したいのならばダメ。

・デジタル化/DX化を進めるためにあたってのアプリ開発などの技術を取得することは上記の通り、その対象となる労働者の職務に直接関連しないといけない縛りがない。ただし、自社で使う既成製品のアプリを導入した後のアプリの操作で「ここに数字をカタカタ入力して…リターンキー!」とかだとデジタルの技能なのかそれは…となるかもしれない。あくまでデジタル技術の習得であって、導入されたデジタル機器の操作を覚えるわけではない。

尚、上記はあくまで私の予想、私見である。人材開発支援助成金はQ&Aに書いてあるようにどの会社、どの労働者でも対象となると断言できる訓練はないと書いてあるし、このコースは令和4年12月新設でありまだ半年もたっていないことから色々公式の情報が随時発表、更新されるもしれないのでそこは留意いただきたい。

繰り返しになるが、このコースの最大の難点は、コース名の”等”にあたる、デジタル化、デジタルトランスフォーメーション、カーボンニュートラルに該当する訓練、というのが具体例でにはどんなものなのかというとよくわからないところである。そう、人材開発支援コースなどのように、Q&Aが今になってもホームページ上にないのである!(今後、しれっと登場するかもしれないが…)

あと、令和5年6月下旬にガイドブックが一部改正されたようだ。(おそらく支給要領も)13ページに黄色の網掛けの注意書きが追加されている。助成されない時に返金する場合は全額不支給になると明記するということは、100%助成されます、助成されなかった場合は保証(返金)しますと宣伝するようなところを排除する、ということだろうか。

あと、ガイドブックの表紙に令和4年から令和8年度までの期間限定コースと明記されている。といっても令和8年度までと書いてある方が、令和5年度末に人気がないとか予算がなくなったので今年でやめます、と言わないということが確約されたのか?と勘繰ってしまうが。

*1:(当該訓練カリキュラムの取得目的としての資格試験に限る。つまり、受講者が独学による資格試験は対象外。)