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雇用関係助成金の私見④ 人材開発支援助成金③ 人への投資促進コース 8/28修正

人材開発支援助成金の話3回目。人への投資促進コースである。このコースは令和4年に新設されたコースであり、訓練としてはなんと5つある。YouTubeのショート動画のような言い方をイメージしてなるべく簡潔に紹介してきたい。

高度デジタル人材訓練

情報通信業、DX関連の業務に従事する労働者が、指定されたデジタル関係の訓練をする際に助成される。”高度”なデジタルの訓練に限定されており、デジタル関連の業務に携わる立場でない人以外は縁がないコース。

成長分野等人材訓練

大学院での履修が対象となる。海外の大学院の場合は、対象となる訓練や要件が多い。

ガイドブックでは高度デジタル訓練と同列のような記載がされているが、よく読むと、対象事業主の業種などの制限もなく、国内の大学院の場合はデジタル関連などの制限もない。

尚、国内の大学院であっても職務に関連することが対象になる。

※8月末に周知用パンフレットを読んで、間違いに気づき説明を修正

情報技術分野認定実習併用職業訓練

人材育成支援コースの認定実習併用職業訓練のIT特化版。IT分野の仕事をするIT分野”未経験”の45歳未満の労働者が行う認定実習。

ここまでの3つはIT事業の労働者用か、大学院での特定科目の履修に行く人をイメージすればいいと思う。よって関係なければスルーでいいと思う。

定額制訓練

これが既存の訓練ともいえる「人材育成支援コース」にはない制度。
定額受け放題なので、〇日に〇時から〇時まで〇〇の訓練をするというスケジュールの必要もないし、出席率も関係ない。但し所定労働時間”内”での訓練で修了しないといけない。

経費助成率は60%(大企業は45%)で、この助成率は人材育成支援コースの正社員の45%(大企業は30%)より高い。

尚、事業展開等リスキリングコースでも「定額制」コースは存在する。訓練の内容が違うのだが、デジタルに関する訓練の場合は、事業展開等リスキリングコースどちらでも申請可能という風に読み取れる。しかもリスキリングコースの場合は経費助成率75%(大企業60%)である。その理由は不明。

「定額制訓練」の特徴としては、訓練の経費助成の1人当たりの上限金額がないのである。つまり事業所の上限2500万円までいける。(成長分野、自発的訓練の場合は上限が異なる)なんで定額制は上限がないのかは最初経費助成がないからかな、とも思ったが、それなら上限金額を挙げれば済む話。

最初、このコースの利用はこれが一番かと書いていたが、上記2つの理由により訂正。定額制、という訓練内容が特定できないものを上限なしで利用できる…?なにか変な訓練機関に巻き込まれかねない気がする…。

自発的職業能力開発訓練

労働者の「自発的訓練」に助成するという他のコースとは一線を画すこのコースの看板の1つともいえる制度。事業主としては、所定労働時間「」に業務命令でさせるのは他の労働者との兼ね合いもあってちょっとなーと思うけれども、「自発的」にやろうとしている意欲のある労働者にははかった費用を援助するよ、というような感じで、それに該当するいい資格や技能があればいけそうなコース。

気を付けなければいけないのは以下のとおり
・「自発的」と言っても労働者が事業主に知らせず勝手に初めてしまってはダメ。
・計画届より就業規則に規定を設けておく必要がある。
・対象者も一般労働者等という独自の定義であって雇用保険被保険者とイコールではないこと。
・経費の1/2以上は事業主が負担する必要があること。
・専門知識といっても講習か実習が必要。独学はダメ。市販の本を購入した分の助成ではない。
・「自発的」といっても職務に関連がないとダメ。自己啓発とは違う。
・このコースは「20時間以上」の訓練時間が必要。(他は10時間以上が多い)

長期教育訓練休暇等制度

前回やった休暇を使った教育訓練のうち2つは「人への投資促進コース」扱いである。内容は同じだと思う。要するに、会社に在籍したままで学ぶための長期の休暇を与えるか、労働時間を短縮する制度を作るんだったら助成するというコース。

当初このコースはどうなのかと思っていたが、上記の「自発的職業能力開発訓練」とあわせて検討してみるのもアリなのではないかと思っている。というのも教育訓練休暇等制度は、制度助成、賃金助成(長期のみ)で、自発的職業能力開発訓練は経費助成なので助成対象が被っていない。ということは組合わせて使うことは可能ではないかと思っている。それに見合ういい訓練があればという話。

ただし、気を付けないといけないのはこの二つのコース、就業規則で規定を作成する必要があるが、自発的は計画届の”前”に、教育訓練休暇は計画届の提出の”後”に規定しないといけない。就業規則の規定のタイミングと計画届の提出のタイミングを誤ると不支給(不認定)になりえる。雇用調整助成金のコロナ特例のようにとりあえず出してみた、だと不支給になってしまう。きちんと勉強し、理解しててから動いた方がいいコース。

令和4年の度重なる改正について

このコース、パンフレットを見るとわかるが令和4年度に何度も改正があった。今後は改正されたルールに基づくというと、そうではないのである。改正後のルールが適用されるのは、計画届提出日時点か、訓練開始日時点で決まったりする。要するに令和4年初めに訓練を開始したら、今の改正版でなく前のルールに従うということ。例えば自発的訓練と定額制訓練は改正により助成率があがったのだが、改正された助成率が適用されるのは訓練開始日がその改正日より後の場合である。正直かなりややこしいので確認されたい。

まとめ(所感)

以上である。6つあるじゃねえか、と突っ込みを入れられた方は正しいと思う。5つで正しい。説明上、高度デジタル分野と成長分野を2つにわけたからである。

このコースの”ガイドブック”が一番難解。というのも最初の高度デジタル人材育成の説明が「情報通信業」特有の用語と大学、大学院の通学が交わって意味不明だからである。

しかも、コースごとの提出資料と共通の提出資料が別ページにあったりする。雇用関係助成金の資料は大変分かりづらいが、このコースがトップクラスで読みにくい。

私がこのコースの作成者だったら、最初の高度デジタル訓練と成長分野と認定実習はコースから分離するかページの後ろに配置すると思う。

YouTubeで各都道府県の労働局とかがコースごとに分離して説明しているのはデジタル関連を分離してわかりやすくしたいのかもしれない。またどうやらこのコースは利用率が頗る悪く、そのため令和4年度の途中に何度も改正されているとのこと。

そりゃそうだ。ZOOMのスクリーンショットとか、どうなのそれ、という感じ。なんでも当初はその提出がない日分は不支給だったとか…。(今はスクリーンショット自体の提出がなくなった)まあ、制度がZOOMとかのオンライン対応についていけていなかったのだろう。

尚このコースの魅力は助成率と助成額。賃金1時間あたり960円、経費の75%助成は結構高いと思う。このコースは期間限定。デジタル関連推しのようなコースだが、職務に関連した訓練(人材開発支援助成金の訓練の大前提)か大学院での特定の項目の履修を検討している場合は利用したらいいのではないかと思う。

自発的訓練もやりようによってはアリかもしれないが、教育訓練休暇制度や労働者が自発的に申請できる給付金制度との兼ね合いがよくわからない。

定額制訓練は、中身が一緒でないがもし利用するのならば「事業展開等リスキリングコース」の方を考えたほうがいいだろう。

総論。

このコースは訓練の対象が限定的かつ難解。この助成金を勉強するのならば最初にとっかかるコースではないと思う。勝手な想像ではあるが、このコースの問題点をもとに作り直したのが「事業展開等リスキリング」コースだと思う。