けーせらーせらー

仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

雇用関係助成金の私見⑨ 余談③ 被保険者1名はリスクあり

6月28日追記 支給要領が改正されたので、それにあわせて表現を一部変更しました。変更箇所は青字です。

雇用関係助成金に関する話でいくつかの助成金で、対象労働者が1名の事業所におススメ、とか言ってる動画などについて、私はその意見に同意できないと述べてきた。

それは、雇用関係助成金の共通要領がその理由の1つである。以下転記する。

0301 支給対象事業主等
助成金は、次のイからニまでのいずれにも該当する事業主等に対して支給する。
雇用保険適用事業所の事業主(支給申請日及び支給決定日の時点で雇用保険被保険者が存在する事業所の事業主であること
助成金の支給又は不支給の決定に係る審査に必要な書類等を整備、保管している事業主等
助成金の支給又は不支給の決定に係る審査に必要であると管轄労働局の長*1が認める書類等を管轄労働局長の求めに応じ提出又は提示する、管轄労働局の実地調査に協力する等、審査に協力する事業主等
ニ 「第2 各助成金別要領」に定めがある場合は、各助成金ごとに定める要件を満たす事業主等

上記の通り助成金雇用保険被保険者が存在する事業所が助成金の対象であるという大前提がある。
例えば雇用保険被保険者が1名の場合、この労働者が退職した場合どうなるかというと雇用保険被保険者がいないため助成金の対象とならない。
ではこの存在する事業所というのはいつの時点のことかというと、支給申請日及び支給決定日の時点でとなっている。ということは例えば雇用調整助成金の場合、1名の雇用保険被保険者しかいない事業所で休業手当を満額支払った後に支給申請し、支給の決定を待っている間にいその被保険者が退職し被保険者0人になってしまったら、この規定の条文により不支給になるということになる。支給された後になって、よく見たら支給決定日(おそらくお金が振り込まれる日)に0人になってましたね、お金返して、といわれたら最悪である。上記の共通要領だけではわからないが、計画から申請、支給までの間に0人になっていてもいつか補充すれば大丈夫という規定は私は見つけれていない。

というわけで雇用保険被保険者1名の場合は、どれだけ準備していても最後の最後で労働者1名が退職してしまい、結果助成金を受け取れないというリスクがある。まあ、労働者1名が良いとYouTubeとかで宣伝している人というのはあくまで誇張表現であって、本来は0人にならないほどの人数がいたほうがいいのは明白であろう。

ちなみにこの規定自体を知らない人(改正された部分は除く)は、助成金のプロではなくモグリなので判別に使えると思うよ。

労働者が少人数のほうが全労働者が対象の制度設計の場合は書類の提出や管理がしやすいというメリットがあるのは事実である。世の中大体10人いると1人ぐらいはごちゃごちゃ言って協力しない人間がでてくるもの。というわけで制度設計をするのは少人数の時がいいというのはありかもしれないが、流石に労働者1人というのはリスクが高いよ、ということが言いたいだけの記事である。

*1:(以下「管轄労働局長」という。65歳超雇用推進助成金については「機構の理事長」(以下「機構理事長」という。)と読み替えるものとする。以下同じ。)