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仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

雇用調整助成金 令和4年12月~令和5年3月末について。(12/3)

雇用調整助成金は令和4年12月1日から予定通り色々なパターンにわかれました。前回の記事で書いたのですが、そのまま書き連ねたものを読み返すと非常にわかりづらい。そこで今回は、枝分けしてそれぞれ短い文章でまとめてみることにしました。

前提

まず、判定基礎期間(給料の計算期間)の初日が11月中にある場合はこれまで通り。
具体例と挙げると、11月21日~12月20日締末日払の1か月分の休業についてはこれまで通りで、次の12月21日~1月20日分から変わるということになります。要するに〇月から変更、という表現は、給料計算期間が月をまたぐ事業所は給料計算期間の最初の日がある月で考えるということになります。暦月でわざわざ分ける必要はありません。(3月31日の年度末に関しては除きます。制度変更があるかもしれませんので、ご注意下さい。)

12月1日以降に初日がある判定基礎期間から、以下のとおり対応がわかれます。

まず「特例事業主」とそうでない「新規」の事業主にわかれます。
「特例事業主」とは「令和2年1月24日から令和4年11月30日までの間に対象期間の初日がある、新型コロナウイルス感染症が原因で事業が縮小した事業所」です。
「新規」の会社はこれとは逆。つまり「令和2年1月24日から令和4年11月30日の間に対象期間の初日がない事業所」です。
もっと簡単に言い換えると、これまで”コロナ特例”の雇用調整助成金の申請をしたことが”ある”事業所は「特例事業主」で、”申請したことが”ない”事業所は「新規」です。
そして特例事業主は、1月末までは”特に業況が厳しい”事業主か、そうでないかでわかれます。”特に業況が厳しい事業所は、簡単にいうと直近3か月平均で売上等が同月比30%以上減少している事業所です。尚、判定基礎期間の初日が2月1日以降の分から、”特に業況が厳しい事業主”の特例はなくなりますので、わずか2か月の時限措置です。

新規の場合は、休業の理由が新型コロナウイルス感染症の影響なのか、そうでないかでわかれます。

コロナ特例の申請をしたことがある事業所で、”特に業況が厳しい事業所”に該当しない事業所

①助成率

大企業の場合1/2、中小企業の場合2/3になります。解雇等がない場合の上乗せ助成率はありません。尚1日の上限は、10月1日から通常通りの8,355円に戻っております。

②生産指標の再確認

12月1日の初日以降の最初の判定基礎期間の際に、すでに初回の申請から1年以上経過している事業所、つまり通常の対象期間である1年を超えた場合は、一度生産指標の確認が入ります。比較月は、初日がある月、令和4年12月と、3年前までの同じ月で比較して10%以上減少しているかどうか。(比較月については細かい規定があるので、確認してください)。*1わかりやすくいうと、今でもコロナ禍以前より売上等が10%以上減少していることが要件として加わりました。対象期間が通常の1年から延長を繰り返し、最大3年にもなっていることの対処だと思われます。
ここはややこしいので、以下の別記事にまとめました。

kesera22.hatenablog.com

 

③支給限度日数の復活

これまでは、支給限度日数のカウントは特例でしないことになっていましたが、12月1日以降は復活です。12月1日から来年3月31日までの間で100日です。様式もその日数がわかるよう表示が増えていますね。(あくまで参考値扱いのようですが)3年150日に関しては、経過措置期間中はカウントしないようですね。詳しくは、脚注の支給要領でご確認下さい。*2*3*4

④それ以外

ほとんど、現状の特例のままのようです。様式も要件も同じのようです。

⑤所感

11月2日発表の予定どおりかと。ただし、生産指標の再確認は気をつけないといけません。11月や12月の売上が、これまでの反動でコロナ前よりも多い売上を達成した場合は対象外になってしまいます。あと、支給限度日数が復活しましたが、その理由は不明。なんらかの意図があるから復活させた、と邪推していますが…。

コロナ特例の申請をしたことがある事業所で、”特に業況が厳しい事業所”に該当する事業所

①要件 

3か月平均で30%以上の減少です。この基準は、”業況特例”と同じの模様。令和4年12月と令和5年1月に判定基礎期間の初日がある2か月間のことです。減少しているかどうかは、2回だけのことですが、2回とも確認です。

②助成率 

解雇等がない場合は、大企業は2/3、中小企業は9/10です。業況特例の場合は、中小企業は100%助成でしたが、90%に下がりました。尚、上乗せ要件は、解雇等があるかどうかのみで、もうひとつの雇用維持の要件*5はなくなった模様です。但し、解雇等があった場合の助成率は通常と同じになります。つまり、大企業は1/2、中小企業は2/3です。

③上限額 

1日9000円です。これも、業況特例の10月からの1日12000円から下がりました。

④それ以外 

1と同様、これまでの業況特例と変わりがない模様。

⑤所感

業況特例とどれだけ変えているのかと思っていましたが、上記以外では特に違いが見当たりません。分化会の資料で言及されていた”回復が遅れている事業所”に配慮した感じがします。

 

今まで新型コロナウイルスを理由に雇用調整助成金を申請したことがなく、令和4年12月1日以降に初めて新型コロナウイルスを理由に雇用調整助成金を申請する事業所

①要件 

前段で書いたとおり、令和2年1月24日から令和4年11月30日の間に申請をしたことはないが、12月1日以降にコロナの影響で休業を余儀なくされた事業所です。

②特例 

計画届不要、残業相殺不要、短時間休業の一斉取得の緩和の3つ。以上。殆ど通常版に近いですが、この3つが通常版とは違います。

③それ以外 

②の特例以外は、すべて原則通りです。つまり、簡易版の様式も助成金額の計算方法も、オンラインでの教育訓練も、もともの対象外であった事業所が申請できる特例も、すべてなくなりました。対象労働者は雇用保険被保険者期間6か月以上必要になるので、全労働者でなく、雇用保険にその事業所で加入したばかりの人は対象外とかあります。別記事で特例を列挙しましたが、助成率以外の金銭面以外の特例も結構ありますので、これまで申請してきた用のガイドブック(緊急対応期間、経過措置期間と表紙に書いてあるもの)をみて申請すると高確率で間違えると思います。通常版のガイドブックはHP内のリンク「雇用調整助成金の紹介ページ」をクリックしたページにあります。

④所感

正直、これまでの約3年コロナ休業を申請していなかった事業所で、12月1日以降に”新規”でコロナを理由に休業する事業所がどれだけあるのだろうかと思っています。想像するに、濃厚接触者関連や、従業員の感染者が多数発生したことによる事業所の臨時休業ぐらいでしょうか?ただし、この理由だと生産比較、雇用量比較で対象外になる可能性があります。なんせ新規の場合は、売上等が前年比較。前年に最悪の売上をたたき出した事業所は対象外となってしまう。簡易版の申請もできませんが、ここに該当する事業所は、コロナ特例とこれまで縁がなかった事業所なのでそれほど影響がないでしょう。もし影響があるとしたら、代行している社会保険労務士、複数の事業所を管理している人事担当ぐらいかなと。ただ、計画届と残業相殺不要により、事務作業が煩雑な労働者ごとの1日ごとの休業等の一覧表が省略されたのは大きい。事務手続上は通常版よりは緩和されると思います。また、緊急雇用安定助成金もコロナが理由だと申請できます。ただし、その事業所に6か月以上働いたことがわかる労働者限定。これは雇調金と歩調を合わしてきたものでしょう。
例えばの話、コロナの濃厚接触者として休業した労働者が2人いて、1人は6か月以上そこで働いていて、もう1人は6か月未満の場合、6か月以上の人にしか休業手当の助成がでないというのはなかなかえぐい話と思います…。

今まで新型コロナウイルスを理由に雇用調整助成金を申請したことがなく、令和4年12月1日以降に、新型コロナウイルス以外の理由で雇用調整助成金を申請する事業所

完全な通常版での申請です。簡易版ではありません。つまり計画届もいります。残業相殺もあります。短時間休業の緩和もありません。また、緊急雇用安定助成金はコロナ以外の理由の場合は申請できませんので、緊急雇用安定助成金は受給できません。分類したはいいものの、今これにあてはまる事業所がどれくらいあるのかは、私にはちょっとわかりません。

*1:支給要領1114aイ(ハ)によると …
①生産量要件「10%以上減少」の比較については、原則、基準判定基礎期間の初日が属する月の実績と、前年同月との比較により行うものとする。
②生産指標について前年同期と比較することが適当ではないと認められる場合は、「基準判定基礎期間の初日が属する月(以下 「判定月」という。)、又は判定月の前月、若しくは判定月の前々月のいずれかの月の値が、令和元年から令和4年までのいずれかの年の同期1か月分との比較による。
③ただし、比較に用いる月に売上がないなど、これにより難い場合は「判定月」又は判定月の前月若しくは判定月の前々月のいずれかの月の値が、事業の開始期または、立ち上げ期等によりその他の月(ただし、判定月の前月から直近 1 年間の指標とする。)を用いることが適切だと認められる1か月(ただし、比較する月は、雇用保険適用事業所設置後であって労働者を雇用している月に限る。)

*2:支給要領1114aハ 支給限度日数の特例によると…
経過措置期間中、特例事業主が実施した休業等の日数には、0403a のただし書きの規定を適用しない。経過措置期間中、特例事業主が実施する 1114a の休業等に係る支給限度日数の確認に対する 0809aイの適用については、0809a イ(ロ)中「当該対象期間の初日から起算して過去3年以内に開始された対象期間内の支給日数の合計を 150 日から差し引いた残りの日数(100日を超える場合にあっては 100 日)」とあるのは、「100 日に令和2年1月 24 日から令和4年 11 月 30 日までの期間中に判定基礎期間の初日がある休業等(当該休業等について助成金が支給されるものに限る。)の実施日数を加えた日数」とする。

*3:支給要領0403aイ 休業等に係る助成金は、各事業所ごとに、それぞれの対象期間内において、助成金の支給の対象となった判定基礎期間における助成金の対象となる休業等の延日数を当該事業所の当該判定基礎期間に含まれる暦月の末日における対象労働者数で除して得た日数の累積日数が100日に達するまで支給するものとする。
ただし0301aイ(イ)の一般事業主であって、過去に助成金の支給を受けたことがある事業主(現に支給を受けようとする当該助成金に係る対象期間の初日から起算して過去3年以内に対象期間が開始され、その支給日数が本文の規定に基づき算定された助成金(以下「基準助成金」という。)の支給の対象となる休業等を実施した事業主をいう。)については、その現に受けようとする助成金の支給日数の上限は、本文の規定にかかわらず、150日から、基準助成金の対象期間の初日以降の支給日数の合計を減じた日数(100日を超える場合にあっては、100日)に達するまでとするものとする

*4:0809a 支給限度日数の確認
イ 0403aイの支給限度日数の取り扱いは、次の(イ)から(ハ)のとおりとする。(0403a イ関係)
(イ) 1判定基礎期間において、助成金の対象となる休業等の延日数を当該判定基礎期間に含まれる暦月の末日における対象労働者数で除して得た数(小数点第2位以下切捨て)を支給日数とする。
(ロ) 対象期間内の1判定基礎期間において、当該対象期間の初日から起算して過去3年以内に開始された対象期間内の支給日数の合計を150日から差し引いた残りの日数(100日を超える場合にあっては、100日)から、当該対象期間内の当該判定基礎期間の末日までの支給日数の合計を差し引いた日数を残日数とする。
(ハ) 1判定基礎期間において、(イ)及び(ロ)の方法により算定した残日数が負となる場合は、当該判定基礎期間の支給日数を差し引く前の残日数に当該判定基礎期間に含まれる暦月の末日における対象労働者数を乗じて得た日数分(端数がある場合は端数切り捨て)を支給するとともに、当該判定基礎期間が含まれる対象期間において以後の助成金は支給しない。

*5:判定基礎期間の末日において、特例事業主に雇用されている労働者(雇用保険未加入者を含む)及び派遣労働者として当該事業主の事業所に役務の提供を行っている者(以下「事業所労働者」という。)の数が、令和2年1月 24 日(ただし支給要領1108aハのなお書き、1108aハ(ハ)又は(ニ)に該当する場合は令和3年1月8日)から判定基礎期間の末日まで(以下、「比較期間」という。)の各月末の事業所労働者数の平均の5分の4以上であること。ただし、業界特有の理由等により、例年特定の季節において事業所労働者の数の増減がやむえない事情等である場合には、要件を満たすものとすることができる。