前回までの記事にて、雇用調整助成金の令和4年12月以降の変更内容をまとめてきた。(下書きが後ろにいってしまったけども)
ただ、確定した内容については、厚生労働省か顧問の社会保険労務士に質問された方が素人ブログより確実。私が書きたいのは私見であって、これまでの情報はいわば私見を述べるための前提、前置きともいえる。
尚、これから以下の記事は、私見のみで、情報もエビデンスが一切ない話。
なので、情報を求めている方はバックを推奨。
まず、今回のホームページならびにガイドブックの更新について。内容については、先月末からの予定や報道での話に沿ったものであるが、今回厚生労働省は12月1日以降を「経過措置期間」としてきた。これまでコロナ禍で申請してきた事業所の場合、助成率が通常の率に戻ったことは大きな影響ではあるが、他の特例はかなり残ったままなので、これまでどおり「緊急対応期間」のままでもよいはず。そこをあえて「緊急対応期間」を11月30日で終了させて、令和4年12月1日から令和5年3月末までを「経過措置期間」と位置付けてきたのである。支給要領も今までのように時期等を変更させるのではなく、経過措置期間として新設している。これらが意味するところは「新型コロナウイルス感染症用の緊急対応期間は終わった」ということであり、12月からは通常に戻るための「経過観察」、「準備期間」といってもよいだろう。事業所側にも準備がいるし、厚生労働省や自治体側*1にも準備がいる。失業率の急激な悪化や、コロナの変異株などの想定外の事態が発生するか見守る期間も必要だろう。完全に終える時期を決めるのは国会での審議を経たうえというルールなのかもしれないが、いずれにせよ令和4年12月1日からは「経過措置期間」。
12月以降初回の事業所は、事前にリーフレットで公表されていた特例の3つ以外は「通常版」にすべて戻ることになった。正直私はここまで特例をやめるとは思わなかった。というのもこの発表時期なら準備期間としてもう少し特例部分を残すと思った。それに開始時期(対象期間の初日)によって、これだけ支給要件が違うというのは公平性に欠ける。具体的には、雇用保険被保険者期間が6か月未満の労働者への休業に関する助成の場合、継続なら支給だが、新規の場合は不支給となる。全事業所揃えないと不公平なので、そういわせないために、「経過措置期間」という区分を創設したのかもしれないが、そうだとすると「経過措置期間」をそう何か月も続けるというのはやはり公平性に問題があるので、想定外なことでもおきない限り、来年3月末からそう何度も延長するということはない、と思っている。
そして、「地域特例」に関しては、令和4年12月以降は廃止、ともホームページにて銘打ってきた。「地域特例」は緊急事態宣言かまん延防止措置が発出され、休業要請となった事業が対象となる。そのため、今年の春のまん延防止措置に関する期間以降は、地域特例は適用されていない。わざわざこの時点で「廃止」といわなくてもいいとも思われるが「廃止」を宣言してきた。これは、政府は「緊急事態宣言」「まん延防止措置」で新型コロナウイルスに関する休業要請をするつもりはない、ということだろう。もっとも、いざとなったら同様の「地域特例」のようなものを創設することはできるはずので、退路を断ったわけではない。国の「意思表示」である。
以上、まとめると、雇用調整助成金のコロナ特例の緊急対応はこれにて終了、これからは経過措置に移行する、そして、国が事業所に休業要請をするつもりはもうない、ということか。一部の事業所には、来年1月末までは配慮するが令和5年1月末までと先んじて線を引いてきた。2月以降に延長する気はない。政府はもう”休業”は推奨しない。活動が縮小している事業所が労働者を解雇するのをやめさせるために通常より多めに助成金を支給するという誘導策をとるつもりもない。*2
これをうけてどう対応するかは、それぞれの企業が決めることであろう。すでに休業をしてない企業には関係がないことだろうが、コロナから復調してきているところは、休業をさらに減らすか、なくしてくるだろうし、まだ苦しいところは一部の労働者を解雇してくるだろうし*3、場合によっては店を畳むという選択肢もあるだろう。言い方は悪いが、コロナ禍が3年近くも続いている中、休業・行動制限もなくなってきた現状でいまだに雇用調整助成金で”延命措置”や”資金面でのカバーをしようとしている”経営者"を、また人手不足の会社があり、仕事を探せば見つかるであろう現状で働いていない"労働者"を、雇用保険料増額や増税をしてまでこれ以上救うことは、納税者や被保険者の理解は得られまい。
尚、私のイメージでは、休業要請・行動制限がなくなったGW頃から、申請件数も支給決定額もどんどん減っていっていると思っていたが、どうも厚生労働省のホームページを見るに、いまだ1週間で100億円の支給を下回ってはいない。色々悪い想像はしたが、根拠のないことを垂れ流すのは慎む。ただ、この公表データについて、厚生労働省等を取材し、客観的な分析をするのが報道機関の仕事ではないかと思っているが、そういった報道も、専門家による分析されたニュースに出会ったことがない。というより、マスコミはコロナ対策にもう興味がなさようである。(マスクとか5類とかの話はまだ盛んだが)
1/2、2/3でも助成金が受けとれるうちはこれからも毎月申請を続けるという事業所は、申請後1年間申請できないクーリング期間の存在を頭に入れておいた方がいいだろう。少なくとも令和5年3月末までは発動しないようだが、令和5年度内のどこかで再開を宣言し、その後発動させてくるだろうと私は思っている。そうなると、1年間は雇用調整助成金は使えない。雇用調整助成金の申請自体も一区切りに近づいていると思っておいた方がよいと思う。
尚、政府は、休業とは別の選択肢として、出向、教育、新規雇入に対する助成を用意しているようだ。労働者の休業を推奨しないのであって、不本意で無職になる労働者を見捨てているわけではない、といいたいのかもしれない。出向に関する助成金である産業雇用安定助成金の助成率は、この12月で雇用調整助成金の休業の助成率よりも優位にたつことになった。なので、もう少し回復には時間がかかるが復活の見通しは立っているという会社については出向を薦めている、と見ていいだろう。現に、産業雇用安定助成金は令和6年3月末までの助成を決めている。また補正予算で新しいコースを作ることが決まったのは出向を推している証拠だろう。ただし、出向というのは今まで出向をさせたことがない企業にとっても難易度が高い。労働者の負担も大きい。なので分科会の資料に書いてあった通り予算消化率も低いのであろう。休業から出向へという理念はわかりやすいが、実現するにはハードルが高いと思っている。もっとも、出向の経験がある、ある程度規模の大きい企業をこの助成金の対象として想定しているのかもしれないが。
また影響を多大に受けたであろう飲食業、宿泊業の中でも人手不足の企業が出てきているというのが確かならば、これからはいっそのこと働く場所(企業)を移動すること、要するに転職を薦めている、と考えたほうがよいと思われる。
また3月末で、契約期間のある労働者の方が契約満了という形で失業するのではないか、と危惧している。特に、非正規公務員。報道で見たのだが今年度末は契約期間満了が多いらしい。ハローワークはこれまで雇調金のコーナーが混んでいたが4月以降は職業紹介コーナーを非正規が埋めることになるのではないか。公務員の人件費を削らないと、軍備費は増やせまい。コロナ対応で応援にかりだされた人が無職になり就職活動をし、コロナで賃金補償され休業していた正社員が働き始める。そんな想像をしてみたりしたが、世の中そんなものだとも思っている。
また、雇用調整助成金の来年4月以降は未定とあるが、これは国会での来年度予算審議の中で決める事柄であるからだと推測している。要は予算が決まらないことには発表できないということ。尚、雇用調整助成金は今回概算要求になく予算審議中に決める事項要求扱いらしい。(前年は〇兆円という巨額の概算要求があったと記憶している。)政府の案としては既にあるのだろうが、経過措置期間の状況を見て最終判断するのかもしれない。いずれにせよ、4月以降のことがわかるのは、令和5年に入ってからだと思う。(予算案が閣議決定されたら案が報道されるかもしれないが)
尚、学校の休校に保護者が対応した場合の特別休暇への助成はそのまま残っているが、これは休業ではなく、子供への対応のための休暇であり、別物。あと物価高対応は雇用調整助成金以外の方法で対応してくるであろう。
以降は、個別の感想。
12月1日以降の初回から適用というのは、成程考えたものだと思った。というのも、これにあわせて申請してくるのは来年1月以降。12月29日から1月3日の年末年始の官公庁の休みを避けている。
助成率をもとに戻すのも妥当だと思っている。というのも、新型コロナウイルス感染者は、雇用調整助成金の対象外であり、傷病手当金の対象になったりするのだが、傷病手当金は、簡単にいうと、賃金の2/3の補償である。待期期間も考慮すれば、コロナに感染した方が賃金の補償率が低い可能性がある。(休業手当は簡単に言えば60%~100%。60%の場合は傷病手当金の方が有利だが、私は、100%保障されていたうちは、67%以上あったのではないかと推測している。)具体的には、休業手当支払い率100%の事業所で働いていた場合、通院せず濃厚接触者のままでいたほうが収入面でよい。これが続くのはどうかと思っていた。
支給限度日数の復活については、政府の意図を図りかねている。人事系の仕事をしている知り合いは3年150日の限度日数を復活させるつもりなのでは?または、12月から支給限度日数100日のカウントが始まるのでは?そして、令和5年のGW明けから順次終わっていく形にするのでは、と11月2日の予定を見た時に推理していた。「1年100日」「3年150日」というカウントの仕組みが難しいのでその推理があっているかどうかはなんともいえない。それに少なくとも令和5年3月末までは3年150日の限度日数は適用されないらしい。(別記事に支給要領の該当部分を転記したので参照されたい。)いずれにせよ、クーリング期間もそうだが、支給限度日数というのは来年4月以降の情報を見ないと正解はわからないかもしれない。
12月以降のものを別枠にして、これまでのものを「経過措置」扱いにした理由もよくわからない。同時に2つのルールを併存させるというのは、繰り返しになるが、公平性からみて考えものだ。それをあえてするということは、「経過措置」が4か月であることがほぼ固まっているか、新規扱いで通常版の予行演習をしたいか、それともコロナが3年近くも続く中で新規に申請してくるところに何か問題が多発しているか、色々推測したが、データを持っていない以上、正解はわからない。
また、コロナの分類を5類に変更するというのも、この経過措置期間内に行ってくるかもしれない。2類と5類の違いが私にはよくわからないのだが、テレビのコメンテーターがいうように、通常のインフルエンザのような扱いになれば、また濃厚接触者の外出制限がなくなれば、新型コロナウイルスを理由とする雇用調整助成金は、もはや終わりを迎えるであろう。
通常版の雇用調整助成金は歴史ある助成金である。ホームページにも残っているが、台風等の災害にも対応してきた助成金である。だから通常に戻り廃止されない。コロナによる休業のためだけの助成金ではない。雇用調整助成金は申請をかなり簡単にしてスピード支給を実現させた結果、今や不正の温床、雇用保険料値上げの諸悪の根源、という不名誉な扱いとなったが、歴史ある雇用調整助成金自体を廃止するつもりはない、という意思の表れなのだろう。
通常版に完全に戻った場合の計画と申請は、人事系の専門知識のない人が申請して、助成金がおりるような簡単なものではない。なんせ、かつては休業の計画日と実施日を間違うと、不支給になるような厳しい助成金であったらしい。また、本当に休業しているか、計画日に実際に訪ねて確認しにくるとも聞いたことがある。提出書類も一気に増える。不正受給への監視が厳しい現状では尚更だ。コロナ特例になって、雇用調整助成金の仕組みがほとんどわからなくてもハローワークの窓口の人達がなにかと対応してくれた、と聞いたことがあるが、この対応は文字通り特例だったと思った方がいい。極端な話、労務管理をきちんと行えていない、法令を理解していない、法令で決まっている作成義務と保存義務がある書類がわかっていない事業所の申請は問題外である。これは嫌味だが、自称人事のプロとか、会社の顔だとかSNSでのたまっているような、自分を芸能人か何かと勘違いしているような”採用”では対応できない代物である。(あれは人事でなく、学生や転職者に対してマウントをとりたいだけの輩だと思っている。)あと、当然審査にも時間がかかるので、資金繰りに使うというのは不可能だと思っておいた方がいい。申請から2週間で支給するなんぞ、クレジットカード会社のスピード審査同様、充分に審査しているとは思っていない。事後対応前提であろう。スピード支給の話はそもそもマスコミが煽り政府が対応して始まった取り組みであって2週間後に支払うというルールはホームページにもどこにも書いていないが、それは一刻も早くやめた方がいい。通常の申請に戻ったら、人事部門の業務を日頃から軽視したり、丸投げしたりしている事業主では、申請書類が準備できず、今後は申請しても受給が厳しくなるかもしない。ちなみに他の助成金は申請しても受給は数か月先のものもある。不支給も結構ある。資金繰りとして期待しているところは早めに対応策を考えておいた方がいい。
雇用調整助成金自体の評価について。評価すること自体、テレビのコメンテーターや、会社の仕事をしないおじさんと同類になりそうで好きではない。が、それでも思うのは、世論もマスコミもたった3年で態度が変わりすぎということ。早く多く簡単に支給すれば、不正がはびこるのは予想できることだ。今回の支給と不正の両方を責めるのはあまりにも節操がない。今、中国のゼロコロナを責めているテレビの人間は、3年前、ゼロコロナ政策をするよう口角泡を飛ばしていたことを忘れたのだろうか。先の読めない未曽有の事態で、絶対間違えのない政策などあるわけがない。が、かといって3年もの長い間の、6兆円超に見合った成果があった、とは到底いえない、というのが私の評価。
1日最大15,000円、助成率100%の期間が、条件さえ揃えれば、この10月末まで可能だったのだ。不正は論外だが、そんな破格の条件が2年以上も続いたら、働く気力が失せてしまった人がでてきても不思議ではない。失業手当はその半分も貰えない。事業主もそこまで人手がいらない日は無理に働かせないほうが、かえって人件費が浮く。助成金のもらえない家族だけ働き、あとの労働者は休業にして店を回しているところもあるのではないか。ただ、助成率アップを始めた時は誰もがパニックだったので、私はその方針自体責める気はない。また先が読めない中、辞め時が難しいのもわかる。ただ、この上限金額と助成率をここまで長く続けたのは問題だったと思う。仮定の話だが、もしもとの助成率と上限にもっと早くしていたら、対象や期間をもっと限定にしていたら、6兆円をもう少し減らせて、その分今話題になっている防衛費の増額分は数年は賄えたのではないか。保険料が上がる以上は結果論で済ましてはいけない。
長くなった。前から書いているが、私の目的は、雇用調整助成金に頼り続けている会社を見つけることである。なぜなら、このブログの目的は転職。雇用調整助成金に12月以降も頼るつもりの事業所は、私だけでなく他の転職希望者にとっても、転職の選択肢には入らないだろう。いや、市場から退場していくのが先か。(なんらかの事情がある会社は、中途の採用活動は今は控えているだろう。)
求人が12月以降にどうなるか、情報を収集してくもりである。あと、助成金については、補正予算とかで挙げられた新規や拡充された助成金のほうが気になるので、実務家としては今後はそちらを勉強していきたい、記事にしていきたいと思っている。
この私見、約7,000字を書くのに2時間以上かかってしまった。誤字脱字の訂正を何度もした。目標とする文章能力に質も速度も到達していない。やはり書く量が足りないこと、仕事の後にこれを書くのもキツイのもわかった。今後も、需要のない私見を書くつもりである。
*1:自治体によっては独自に雇用調整助成金に上乗せしていくらか支給しているところがあるらしい
*2:尚、雇用に関する助成金の最大の目的は雇用の安定、失業の防止であり、雇用調整助成金自体が事業所が解雇でなく、賃金なしでもなく、休業手当の支給を選んだ場合に助成する事実自体は変わりはない。また、事業主都合による解雇、雇止めをすれば他の助成金の受給ができなくなるなど多方面で不都合が生じることはご注意いただきたい。
*3:ただし被保険者を全員解雇すれば、雇用調整助成金はそれ以降は受けとれなくなる。倒産しても同様。たとえ休業手当を申請前に支払ったとしても被保険者が0人になったら助成は基本受け取れない、と思っておいた方がよい。労働関係助成金の共通の要件である「雇用保険適用事業所の事業主であること(雇用保険被保険者が存在する事業所の事業主であること)」より