けーせらーせらー

仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

雇用開発助成金の私見④ 人材開発助成金⑥ オンライン訓練の違い(仮)

人材開発助成金のお話の続き。これまで各コースの説明と、わかりにくい箇所の分析をしてきた。

今回のテーマは”オンライン上で行われる訓練”について。オンライン訓練はこの助成金の定義上、Eラーニング、通信制、同時双方向型の通信訓練、定額制。これらに関する分析記事である。

始めに

オンライン訓練のうち、人材開発支援助成金の助成対象として認められていたのはかなり限定されていたのだが、コロナ禍を機にオンライン上での講義が一気に発展したことからか、令和4年度からほぼ助成金対象の訓練方式となった。基本的に助成金の対象となる訓練というのは”通学制”であり、対面で行うことを基本としていて、対象者が訓練施設などに出向いて受講するか、もしくは講師が事業所に出向いて行うものだったが、インターネットを介した訓練も認められるようになったという次第。(物理的に不可能な実技を除く)。

またオンライン訓練という一言でひっくるめないのがこの助成金のややこしいところ。確認したところ、Eラーニング、通信制、同時双方向型の通信訓練、そして定額制サービスの4種類ある。ビデオ視聴、というものもあわせると5種類もある。オンライン訓練=Eラーニングじゃないの?と思うだろうが、この4つには定義がきちんとあり、定義の要件にどれにもあてはまらないと、オンライン訓練だとしても訓練対象外になりうる。

このあたりの定義は過去のものを読むと定義とか対象範囲が変遷しているなので、この記事では以降令和5年度版の定義によって説明する。*1

さてこの定義やそれぞれの違いについて、一回アウトプットしてみることにしてみた。尚、基本的にOFFーJTのことを想定して書いている。OJTに関してはオンラインでできないことはないのだが、かなり要件が特殊で要件も多いので省略する。というか、ガイドブックに1ページ使って書いてある通りの説明しかできない。

尚、公式資料を案内すると「Eラーニング」「通信制」「同時双方向の通信訓練」については「人材育成支援コース」の事業主向けQ&A、「定額制コース」については「人への投資促進コース」のガイドブックの「定額制訓練コース」のところをみるとよい。あと各ガイドブックのどこかに、「Eラーニング」と「通信制」の説明が1ページある。この見る資料が沢山ありどれのどこを見ればいいのかわかりにくいのが人材開発支援助成金の難点の1つ。

以下いつものお断り。この記事は私見であり、ほとんどの文章は末尾に”と私は思う”、”と私は推測する”、”と〇〇に書いてあった”がつく。だが、それらを末尾と書くと文章が読みづらいので断定口調にしている。

同時双方向型の通信訓練

定義

OFF-JT又はOJTにおいて、情報通信技術を活用した遠隔講習であって、一方的な講義ではなく、現受講に質疑応答が行えるなど、同時かつ双方向的に実施される形態のものをいう。

概要

まずこちらを説明するほうがよいと思うので、最初に記すこととする。

コロナ禍で一気に企業に広がった「zoom」。テレワークや会議で使う場合も多いが、zoomを使用したオンライン授業は、”同時双方向の通信訓練”に該当すると思って良いと思う。公式資料が「zoom」と書かないのはこれに該当するアプリはZoom以外も複数あるからであって、勿論「zoom」だけが対象というわけではない。Skypeとかも対象。なお、zoomだからといってすべてが該当するかどうかは、zoomの機能を私はすべて理解していないので不明。

zoomといえばオンライン会議である。だれか一人、ここでは講師が一方的に話すのではなく、受講者との会話のキャッチボールもリアルタイムで行うことができる機能をもっているのがその特徴である。定義に書かれている「現受講に質疑応答が行える…」というのが、講師と受講者がリアルタイムで会話できることを指す。これがとても重要で、リアルタイムで会話できないと、同時双方向訓練の定義に該当しない。尚、質疑応答が”行える”であって、質疑応答の時間を設けろ、とか、一言も話さないとダメというわけではない。ただ、画面から収支姿が消えていて受けているかどうかわからないのは、後で調査が入ったらどうなるかはわからない。

”同時双方向訓練”は”通学制”と同等に扱われるのが他のオンライン上の訓練との明確な違いである。つまり実際に顔を合わせて行う通常の訓練と同一。訓練時間とかの解釈も同様である。

令和4年度の途中まではこの講義時のログか、スクリーンショットをとって添付しないといけなかったが、今はその規定はなくなっている。試用するアプリによってスクリーンショットが取れない仕様だったり色々問題があったからであろう。また商売上、講義を録画するのを禁止する場合もあるとも聞いたことがある。(録画された動画を拡散されたら商売あがったりである。)

となると同時双方向の訓練と通学制で違う点はどこかというと、計画届にチェックをつけるところと、どこでその訓練を受けるかというところだろう。(ガイドブックの計画届の書き方を参照)

どこで抗議をしどこで受講するかというのは重要な要素である。なぜなら、実地調査時をして実際に訓練を受けているか確認できるから。これがこの助成金受給の要素でもあるからである。訓練しているところを抜き打ち検査できる必要があるから海上訓練は対象外になっているのだから。

尚、オンライン訓練を受けるのは自宅でもOKだが、自宅に調査が来るのだろうか…。

eラーニング

定義

コンピュータなど情報通信技術を活用した遠隔講習であって、訓練の受講管理のためのシステム(Learning Management System.)等により、訓練の進捗管理が行えるものをいう(同時双方向型の通信訓練を除く。)。令和4年まではLMSと明記されていたが、”等”という言葉が追加された。おそらく、進捗管理ができるシステムであればよいのであろう。

概要

オンライン訓練=Eラーニング、ではないというのは先ほど述べたとおり。同時双方型の通信訓練は除かれるので、同時双方向型の通信訓練に該当する場合はEラーニングとはいわない。では何が違うかというと、Eラーニングは別に講師とリアルタイムで会話ができなくても良い。見っぱなし聞きっぱなしでもよいということである。

ただし、システムにより訓練の進捗管理が行えることが条件となる。要するに、〇〇という訓練はこの日に受けました、というのが記録として残せる機能があり、それを証拠として提出できる必要がある。また、修了したという証明も必要となる。これができないと単なる映像、動画鑑賞となり、恐らくは専らビデオを見る、という行為に当たる。そして専らビデオを視聴する、という行為は訓練の助成対象外である。

あと、「広く国民の職業に必要な知識及び技能の習得を図ることを目的としたものではなく、特定の事業主に対して提供することを目的としたもの」は、次の通信制と同様に定義に該当しなくなるのだが、これを満たさないと訓練の対象外となる。下線部は、特定の事業主しか使えないもの、たとえばグループ会社だけしか提供しない、選ばられた企業しか受けられないということ。広く国民に…というのは、インターネット等で調べると誰でもその講座があることを知ることができる必要がある。

ということは、事業所内訓練(事業所が主催して事業所だけで受講する)は上記の要件に該当しないので、Eラーニングと通信制=事業所外訓練、ということだろう。

通信制

定義

通信の方法により一定の教育計画の下に、教材、補助教材等を受講者に提供し、必要な指導者が、これに基づき、設問回答、添削指導、質疑応答等を行うものをいう。

概要

通信制教育というと、かつては紙の添削課題を解いて、郵便で郵送し、添削されたものが帰ってくるという形であったが、現在は別に郵便でなくてもインターネットを介した場合でもよくなったそうだ。これをひっくるめて”通信制”である。ガイドブックの説明では、郵送などにより”という言葉があるが、別に郵便でないとダメとは書いていないので、厳密にはインターネットでも郵便でもどのやりとりでもよい。

通信制の注意点は、設問回答、添削指導は全〇回と規定されている場合、その全てを提出しないと訓練を受けたとみなされないところである。昔、通信教育は教科書が家にドカンと送られてきていたが、手つかずでほったらかしだと訓練したとみなされない。

定額制サービス

定義

一訓練当たりの対象経費が明確でなく、かつ同額で複数の訓練を受講できるeラーニング及び同時双方向型の通信訓練で実施されるサービスのことをいう。

概要

令和4年度から「人への投資促進コース」に創設されたオンライン講習である。”サブスク”である。”サブスク”なので、月額いくら払えばどんな講座を受けてもOK、というわけである。人への投資促進コースの「定額制訓練」と「事業展開等リスキリングコース」では対象となる。つまり定額制サービスは期間限定で認められた訓練。

また、E-ラニングか同時双方型の通信訓練である必要がある。Eラーニングの場合は進捗管理がわかる資料が必要であり、同時双方向の場合はリアルタイムでの会話ができないといけない。通信制の定額制というのはない。要するに紙ベースとか、通学で受講するものは定額制コースに該当しない。

定額制サービスというのは、1月いくらで、どれだけ受けても定額という意味なので、ひとつひとつの価格あたりいくらと定まっていないところにある。また、どの訓練を受けるかあらかじめ決める必要もないし、逆にどの訓練を受けるか決めて、これを受けていないからダメということになると「定額制訓練」には該当しない。Eラーニングか同時双方向訓練として計画することになるだろう。

動画サイトは”定額制”といいながら、この動画はレンタルとか別料金とかあるが、定額制訓練も同様のことがあったらどうなるのだろうかと思ったが、どうやら公式資料には乗っていないようである。

ビデオ視聴

予めいっておくが、”ビデオ視聴”という定義はない。定義にないのに、なぜこの項目を設けたかと言うと、オンライン訓練(講義)を受けたとしても、同時双方型の通信訓練の定義であるリアルタイムで会話ができず、Eラーニングの定義である進捗管理ができず、通信制の定義である質疑応答や添削指導がない場合は、この”ビデオ視聴”に該当すると思われるからである。

そして、ビデオ視聴のみの場合は、OFF-JTの対象とならない訓練である。なんで”ビデオ視聴”という表現を使ったのかは不明。一般的にはビデオ=ビデオテープだからピンとこない。動画視聴や映像視聴のほうがわかりやすいと思うが…。

尚、”ライブ配信”については、事業主向けQ&Aに書いてあるが、あくまでそれぞれの定義に該当するのかによって判断されるようで、”ライブ配信”が対象外とも対象とも書いていない。

賃金助成

ここから上記のオンライン訓練の4つの定義の違いを確認。

まずは賃金助成。対象になるのは同時双方向の通信訓練のみ。Eラーニングや通信制、定額制訓練は賃金助成がない。おそらく、いつ受けるか何時間かけて受けるかあらかじめ決まっていないからであろう。また、時間をダラダラと引き延ばせば引き延ばすほど助成金が貰えるというのを防ぐためだろう。

この助成金の妙なところは、賃金助成はしないくせに、所定労働時間内の訓練を求めてきて、所定労働時間内の訓練だから賃金も通常通り支払わないと助成対象外となるところである。(自発的訓練など例外あり)となると、所定内労働時間内でのEラーニングや通信制の時間が長すぎる場合は、事業所としてはわりに合わない可能性がある。そういう場合は、「自発的訓練」を検討するのも一つの手だと思うが、自発的訓練は労働者が自発的に行うものなので、業務命令で行う訓練と理屈上同じにはならないから、そのまま計画届の用紙だけ変えて切り替えることはできない…はず。

経費助成

経費助成は4つすべてが対象になる。ただ、インターネットの”通常”の通信料金やパソコン代金、タブレット代金は対象外である。通学制の場合、労働者が訓練機関へ出向く際の交通費や移動時間の賃金は助成対象外なので、まあそうだろうな、という感じである。

最低学習期間

通学制の学習期間は1人あたり10時間以上である。
Eラーニング及び通信制の場合は、1人あたり標準学習期間1か月以上、または標準学習時間10時間以上である。
同時双方向は通学制と同じ10時間である。
定額制サービスの場合は、計画届で届け出た訓練対象者の総合計時間が10時間以上である。この計算方法は少し自信がないのでガイドブックで見て確認してほしいが、要するに1人10時間受講した場合は、他の受講者は1時間受講すれば支給対象の労働者となる、と思われる。

念のためだが他のコースでは20時間が最低ラインのものもあるので注意されたい。

標準学習期間、標準学習時間

Eラーニングや通信制はリアルタイムの講義ではないので、正直早送りすることも、ほとんど勉強しなくても対応可能である。逆にスローだったり何度も見たり、念入りに勉強することも可能。よって実訓練時間というのは人それぞれであってあらかじめ決めるというのになじまない。実訓練時間という考え方の代わりに用意されたのが”標準学習期間”。つまり講義を行う外部機関がどれくらいの時間が標準なのか受講前にあらかじめ決めておく必要があるのである。標準学習期間が1か月という風に決めておく。”時間”はちょっとわからないという場合は、1か月=10時間でカウントされる。実訓練時間は、Eラーニングと通信制では考慮されていない。

なんで標準学習期間と標準学習期間があらかじめ決まっている必要があり、それを記入しないといけないかというと、10時間以上とかの訓練の最低ラインと、終了のタイミング=支給申請の期限のためだろうと思う。

経費助成の上限時間

経費助成には上限金額がある。それは実訓練時間数によって3段階に分かれており、10時間以上10時間未満はいくら、100時間以上200時間未満はいくら、200時間以上はいくらという風に表でまとめられている。

Eラーニングや通信制の場合で、標準学習時間が決まっていれば表のとおりとなるが、標準学習”時間”が定まっていない場合は、最低ラインの10時間以上100時間未満が上限となる。

一方、定額制サービスにどれだけうけてもいいのが定額制のメリットでもあるためか上限はない。つまり1人あたりの経費助成に上限がないのである。(1事業所あたりの上限はある)

上限がないというのはメリットでもあるが、どうも再現なく金額が決められるというのは、悪事を働く事業者がでて、後々規制が追加されそうな気がしている。

というわけで、確たる根拠はないが、契約料金には注意されたい。

実訓練時間の8割以上の出席条件

通学制とか実技訓練の場合、出席率の条件があって、講義のうち8割以上出席しないと助成されないが、Eラーニング、通信制、定額制サービスはこの8割以上の出席という条件がない。代わりに訓練を修了した証が必要となる。

Eラーニングと通学制が混在した訓練だった場合

最近、Eラーニングまたは通信制が大半で、数回は実技を兼ねて通学制、という訓練がふえてきているようである。この場合の時間の考え方は、最低ライン10時間以上の訓練のコースの場合は、Eラーニングと通学制の時間が合算されて確認されるためのもので、賃金助成は通学制、同時双方向の通信訓練の時間のみ対象となる。計画届が2段になっているのはそのためである。尚、定額制訓練の場合は、最低時間の確認は全受講者の受講時間なので計画届には記入しなくてもよい。

注意するところは申請用紙と添付書類がそれぞれ必要されている場合があることである。例えば、通学制、通信制、Eラーニング、同時双方向の通信訓練の4つがある訓練もあるそうだが、その場合は全部用意する必要がある。とても面倒くさい。

訓練開始日

計画届を訓練開始日から1か月前に提出しないと助成されない。通学制はわかりやすいとして、定額制はいつでも開始できる場合はどうなるかというと、”契約開始日”が訓練開始日になる。Eラーニングや通信制は受講可能開始日であろう。尚、定額制は優遇されていて1か月前に提出できなくても助成対象となりうる。但し、計画届開始後1か月間は助成対象とならないので1か月分の経費は助成されない。

最後に

実はこの記事を書くのに3日かかった。いざ書いてみると確認にかなり時間を要したからである。各ガイドブックとQ&Aと計画届などの申請書類を見比べていたからである…。まだ間違いがあるかもしれないし、「定額制訓練」については現時点でよくわからない点が多く、後で修正と追記をしたいと思っている。よってタイトルに(仮)をつけた次第である。

 

*1:ちなみに、令和4年度のガイドブックにはE-ラーニングや通信制は”業務の隙間時間”に”自席などで受講できます”と書いてあるのだが、令和5年度のガイドブックからその文言は消えている。このことからみても令和4年度の時とは定義とか変わったのかもしれない。要するにややこしいのである。