けーせらーせらー

仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

私は著者の写真が表紙の本は買わない

私は本が好きだ。本屋が好きだ。大学時代、バイト先のひとつとして選んだのは本屋だった。”男”が雇ってもらえる本屋を必死に探したものだ。本屋で働いてみて、陳列の仕方とポップの書き方次第で売上が変わるのは興味深かった。

といっておきながら今はマンガを中心に電子書籍も結構愛用していている。電子書籍は本と違い安売りができるのが強み。後、夜中に平日に急に読みたくなった時にすぐに手に入るのが強みである。ただ、本屋のように「出会い」がないのがネックだ。「おススメ」のメールがきたりするが、まだまだだと思う。ジャンルで買わないからだ。

それでも本屋には行っていた。私は自分が気に入ったものを買いに行くというのではなく、立ち寄った本屋の陳列で興味をひかれたものを買うという行為が好きなのだ。本の旬、本屋の店員が推す旬の本を選ぶ感じ。魚屋から今日のおススメを買う感じ。そして、この陳列に工夫を凝らしている本屋の店員に敬意を持っていた。

しかし、ここ数年、本屋にあまり行かなくなった。本屋の陳列に面白みを感じなくなったからだ。

本の表紙に、テレビの情報(?)番組、やYouTubeで見た人の顔が、全身がドアップで映っている。前身の表紙の場合はなぜか、腕組みか、碇ゲンドウのようなポーズをして偉そうにしている。そんな本が陳列の多くを占めるようになっていた。正直、人間の顔が表紙なのはグラビア写真集、自叙伝、伝記物で十分だ。

そもそも彼ら、彼女らの意見はテレビやYouTubeで聞くことができる。本になった場合、書き方が大体一緒である。それは著者から話を聞いた著者が書いていて自分は書いていないと著者明言しているとおり、本当の著者は編集者かインタビュアーか文字おこしの人だ。

まあ具体的には、堀〇貴〇、ひろ〇き、中〇敦〇、西〇、ダイ〇、あとは安倍元首相というトラの威を借りて偉そうにしている右翼の有象無象。タイトルや見出しは煽り文句だが、本質をついているということもなく、独自の研究結果に基づいた内容でもなければ洞察力もない。過去に誰かが言った、書いた話を、大きな文字で書かれているだけである。本人の億万長者になる秘訣とか自叙伝ならともかく、腰巾着として知名度を上げるテクニックならともかく、自己啓発本、ビジネス本、政治経済本として何冊もあるのが不思議だ。だいたい似たようなことしか書いていない。そりゃそうだ、研究者でもないのだから、直近の旬の話題を入れてページ数を稼いでいるだけである。

別にサムネで煽り文句を表示してクリックを誘導しているYouTubeと同じことを本にするのは自由だ。だが、広告さえ見ればの無料で視聴できるYouTubeを有料の文字に置き換えている本を優先度の高いところに陳列する。その行為は本屋の自殺行為だと私は感じた。よって本屋からは暫く遠ざかった。

その本屋に先日久しぶりに行った。上記のような表紙の本は以前よりは売上ランキングからは影をひそめた。代わって、著者の知名度はないが、何らかの専門家の人の本への置き換わっていた。ユーチューバーの話のネタがつきたのかもしれないが、再び本との「出会い」の場になりそうな期待を持てる陳列となっていた。

そういえば、彼らの一人が「ウェ〇トゥーン」という韓国から来た新しい漫画の描き方を評価していたようだ。ただ、彼らの表現は「ウェブトゥーンがこれから流行る」という表現はしない。「鬼〇の刃のせいで日本の漫画は10年遅れた。」という見出しから始めている。自分が推したいものを表現するのに、誰かを何かを否定にする。そう、何かを否定し、バカにすることが視聴者を刺激し、目に留まりやすくして、単に紹介するよりも閲覧数が増えることがわかっているから、敢えてそう表現しているのだろう。

そして今でも「〇〇しないやつはバカ」というタイトルの本が本屋の一角に置かれているわけである。ベストセラー本「バカの壁」のバカとは意味が違うのだが、これではこのベストセラー本が、タイトルにバカとつけたから売れた、と未読の人は誤解してしまうだろう。短期的に見ればだれかを否定すれば目をつくかもしれないが、長期的に見れば本を探す行為自体に不快感を生じさせ、客を遠ざけるということを本屋や出版社は知るべきだと私は思うのだが。

そんなわけで、話は戻るが、タイトルどおり私は著者の写真が表紙の本は買わない(写真集とかイーロンマスクやスティージョブズの自叙伝とかは除く)。帯に、上記のユーチューバーの顔を載せて推薦してもらっている場合も同様。なぜなら、その本の9割は中身がないからだ。せいぜい古本屋で100円になったり、キンドルなどで読み放題になったら読むぐらいである。尚、上記の評価はその100円か読み放題で読んだ結果、そういう結論に至っている。

勿論、著者の意に反してそんな表紙になってしまってるかもしれないので、著者をバカにするつもりは毛頭ない。私は著者が作成するYouTubeとかSNSみたいに誰かをバカにするつもりはない。著者も案外人の顔と名前を勝手に使って本にしてるな、そして馬鹿にされているのに本を買うやつがいるんだなあ、ま、金が手に入るからええわと思っているかもしれないだろうし。

ただし、そんな本を陳列の前面に出して、自滅をたどろうとする本屋を心底残念に思っている。