けーせらーせらー

仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

年収の壁⑨ 令和5年10月末段階での私見

年収の壁その9。

最初に結論。「年収の壁対応パッケージの新助成金や新手当の利用は限定的ではないか…。」

そういう感想を抱いて以降、資料を詳しく見ていないので、私の誤解があるかもしれない。あくまで私見。そう断ったうえで、その結論に至った理由を以下説明する。

 

始めに:コールセンター開設

令和5年10月30日からコールセンターが開設されたらしい。今回の対策は社会保険助成金の2つのセットである。社会保険年金事務所健康保険組合助成金は労働局管轄だったはず。行政の苦手な組織横断である。コールセンターのレベルがどうなのかは不明だが内容の理解に悩んだらコールセンターで確認されるのもひとつだと思う。

キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース

はじめに~支給要領を読もう~

私は助成金を調べる際は必ず支給要領を見る。支給、不支給の判断は、支給要領が根拠となるからだ。というわけで、今回このキャリアアップ助成金の新コースの支給要領を見た。

...これだけ※のある支給要領は初めてかも知れない。これは文章を読むだけでは理解できないぐらい難しい。やはりというかキャリアアップ助成金。ページ数は少なくても難解だ。*1

なんで支給要領のことをいったかというと、今回のリーフレットは明らかに”政策誘導”。と思われるからだ。本当に自分たちにとってこの助成金にのるのがいいことか?リーフレットだけでなく、支給要領とか申請用紙の裏面とかQ&Aとかを読んで判断したほうがいい。

さて、そんなリーフレットだけ見て支給申請書類の空欄にいきなり書き出して、提出のチェックリストをもとに提出すると、なんらかの不支給要件に該当し不支給になりうる。

社会保険適用促進手当」の支払いが助成金の支給要件ではない

キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コースの支給要領に「社会促進適用促進手当」という文言は一切でてこない。つまり、「社会保険適用促進手当」という名称の手当を支払わなくても、このキャリアアップ助成金の新コースを利用する際に問題ないということになる。

では、この助成金の新コースでの「社会保険適用促進手当」に該当するものは何かというと、要領では「社会保険の自己負担分以上の額を”新たに”支給する」と規定されている。繰り返すが、キャリアアップ助成金の新コースの申請には「社会保険適用促進手当」の導入するかどうかまで求めていないので、この”社会保険の自己負担分以上の額”を「社会保険適用促進手当」として使用するかどうかは別視点で判断する必要がある。

尚「社会保険適用促進手当」は標準報酬月額104,000円までという上限があるが助成金には関係ない。「社会保険促進適用手当」は「年収106万円の壁」を念頭に考えらえれているのだから、「106万円の壁」対策ではなくて、社会保険に新規に加入することで手取りが減る非正規雇用労働者対策だと思った方がよい。

助成金の支給対象労働者は令和5年10月以降に、新たに社会保険の被保険者要件を満たした有期雇用労働者

ここが今回の助成金の最重要ポイント。そして、利用できない最大の難関。

社会保険に加入することになるのが令和5年10月以降の労働者に限る。つまり、令和5年9月以前に社会保険に加入している人は助成金の対象外、とQ&Aには書いている。

・加入要件を満たした人とあるので、令和5年9月までにそれまでの実労働時間から社会保険に入る”べき”だった人、加入手続きがまだだった人もおそらく対象外。

・厚生労働被保険者が101人以上の会社は去年から社会保険に加入した人もいるはず。また令和4年10月の最低賃金増加に伴う年収増加により社会保険に加入することになった人もいるはず。これらの人も対象外。さらに今雇ってすぐに社会保険に加入した人も対象外。

社会保険未加入の労働条件で6か月以上雇われた人が令和5年10月以降に社会保険に加入する要件を満たしたことによって加入した場合と対象者は限られる。

つまり、対象者はかなり限定的であり、会社によっては対象者なしのため検討する余地すらなし、ということもありうるだろう。

賃金アップの支払い方

助成金上の要件として、賃金アップの支払い方は、毎月手当として支払う必要はない。「一時金」として支給してもいいし、基本給を増額して支払ってもよい。但し、恒常的な手当といっているので、毎月変動する手当ではダメであろう。なぜ一時金でもよいかというと、一時金は「標準報酬月額」に影響しないからである。ややこしい「社会保険促進適用手当」を除いて「標準報酬月額」を計算する必要がない。一時金として社会保険料自己負担分を補填してもよい、ということになる。勿論、社会保険料の自己負担分のため、毎月の手取りが減る労働者が納得するかどうかは別の話であるが、納得が得られるようであれば「社会保険促進適用手当」は使わない方がいい。ちなみに年収がアップしただけで社会保険に加入する要件を満たすケースと言うのはかなり少ないと思う。

対象となる社会保険の加入者とは

支給要件に、健康保険法による健康保険被保険者、または厚生年金保険法による厚生年金の被保険者と定義されている。それが何かと思われる方。健康保険と厚生年金は対象者が微妙に違うのである。厚生年金は18歳以上70歳未満であり、健康保険は18歳以上75歳未満である。ちなみに国民年金は20歳以上60歳未満である。

あと、すべての会社に加入義務はない。では健康保険に加入しない人(=国民健康保険国民年金に入る人)はこの助成金が使えるかどうかだが…今のところ断言できる根拠が見つけられていない。

130万円の壁の整理 ~一部の人は利用できる、かも?~

さて、ここで「年収130万円の壁」を整理してみよう。

この説明は、ややこしいうえに長いので、読み飛ばしてもらってもよい。

130万円の壁とは、扶養の範囲から外れる一般的な年収のことである。”一般的”といったが、すべての被扶養者が130万円のラインというわけではない。年齢や障害者、扶養者の年収にも左右される。

この年収をベースに厚生年金、健康保険の加入するかどうかのラインではない。

尚、「106万円の壁」が、学生を除く週所定20時間以上かつ月8.8万円の人である、厚生年金の被保険者が101人以上いる事業所である特定適用事業所を原則対象としているので、以降の説明は断りがない限り特定事業所以外の人の話とする。

正社員の週所定労働時間が40時間の会社で働く、週所定労働29時間の労働者で時給1000円の労働者Aがいたとする。その場合の年収の見込みは…

1000円×29時間×52週=1,508000円>1,300,000円

Aは扶養の範囲外になるので、Aは個別に社会保険に加入する義務が発生する。

上段で説明した通り、Aの年収が130万円超となったからといって、会社と負担額を折半する厚生年金保険、会社の健康保険に入ることを意味しない。厚生年金保険、健康保険は正社員の所定労働時間の3/4以上の所定労働時間であることが加入要件だからだ。よってAは国民健康保険1号被保険者となり、市町村国民健康保険*2の保険者となり、個人でそれぞれ年金機構と市町村に保険料を支払うことになる。

さて国民年金第3号被保険者と、国民年金第1号被保険者の違いは何か?

保険料:3号…保険料の支払い義務がない。1号…月16,520円支払う必要がある。

受け取る年金額…同額。(付加給付という追加上乗せができる特典ぐらい)

さて、市町村国民健康保険の保険者と扶養者の違いは何か?

保険料…市町村国保 各市町村と所得によるが、まあ会社負担分がない健康保険ということで、健康保険の2倍は支払うと思った方がいい。一方扶養者の負担は0円である。

そして健康保険の給付の差というのは…ない。(市町村独自を除く)

つまり、高い保険料を支払うわりには、給付額、年金額に違いはない。よって、厚生年金、会社の健康保険に入れない年収130万円ならば、大損ということになる。

だとしたらどうしたらよいか?週所定労働時間を30時間以上に延ばして厚生年金、会社の健康保険に入るか、年収を130万円未満の見込みに調整するか、大きく稼ぐかのどれかであろう。

ちなみに時給が安ければ、今回の最低賃金引き上げが追い風になって検討の余地があるのではないか?と思い検証してみた。

1,300,000÷52÷29=862.068…円

つまり、令和5年9月末時点で最低賃金が862円以下の都道府県は何県かある。そして令和5年10月以降の最低賃金が862円以下の都道府県はない。つまり、令和5年10月で最低賃金が862円を超えた県の人の中には、この助成金の利用価値はあるかも、と思ったが、この最低賃金引上げ分はどうやら、助成金の要件である「賃金の増額」には1年目は該当しないようだ。…何をいっているんだ、と思う方はQ&Aをご覧いただきたい。

長くなったが、結論としては、時給と令和5年9月までの所定労働時間によって利用するかどうかに差がでるかもしれない。尚、既存の「労働時間延長コース」を利用するのと何が違うのか?といわれると………不明である。

社会保険促進手当 ~使われるだろうか?~

資料を読めば読むほど、使いづらいことこの上ないという感想しかない。

毎月支給の場合、月収の上限、手当金額の上限もある上に、税金の計算には関係しないため完全に手取り減には対応できていない。そのわりには割増賃金などには対応が必須。最低賃金上昇分の上乗せとしてこの手当を使うことも認められない。さらに公平性の観点から、既に社会保険に加入している有期雇用労働者にも同様に支給することを推奨されている。

さらに、賃金計算、賃金台帳、賃金計算ソフトの改修、就業規則の改定、標準報酬月額の計算の追加など新たな事務負担が発生するのに、2年間限定の処置。2年を過ぎたらこの名称とは別の名称の手当にしなければならず、かつ標準報酬の月額計算に加えないといけない(Q&Aより)。

正直、手取り上昇分に伴う社会保険料上昇分を抑えるメリットよりデメリットが上回ると思う。キャリアアップ助成金の新コースでの助成がなければ、社会保険料負担による手取り減を事業主に賃金アップして払うようにいっているのと同じである。余分に支払うのに、標準報酬月額に含めないということは、労働者の将来の年金額には反映されないことを意味する。手当支給分(賃金増加分)にかかる保険料は下がるが金額はそれほどではない。

助成金は絶対支給されるものではない以上、助成金が支給されなければ、事業主は事業主負担分を含めると賃金実質30%以上のアップである。それなら正社員同様のフルタイム労働者を増やすか、短時間バイトを増やすか…。年収の壁解消には程遠い。正直私が読み間違いしているのではないかと今でも疑心暗鬼である。

というわけで利用されるケースはかなり限られるのではなるのではないかと私は思っている。被保険者51名超で「特定適用事業所」に該当した時に考えればよいと当初は思ったが、その場合は1年限定の対応になるからやっぱり微妙である。

年収130万円*3の壁について~なくなったわけではない~

YouTubeを見ていると「130万円の壁崩壊」とあたかも130万円の壁がなくなったかのような誤解を生むような表現をサムネでしている人もいるようだが、早合点せずに動画の中身を確認したほうがほしい。そして、ホームページにある証明書のサンプルをみてほしい。あくまで「人手不足による労働時間延長等」に対する柔軟な対応である。沢山残業したため、年収130万円÷12ケ月=月収108,333円超にある月がなってしまった、と言う場合に、事業主がこの月は人手不足による一時的な労働時間延長である、年収130万円未満の見込みであると証明すれば、保険者が柔軟な対応をすることができる、というだけである。保険者が~しなければならない、という義務ではない。

尚、たとえ人手不足であっても年収130万円を超える見込みになったら当然被扶養者から外れる。被扶養者の判定の年収130万円の法律が変わったわけではなさそうだ。よって他の月で収入を調整しなければならない可能性もある。これで気兼ねなく被扶養者だった人はどれだけ働いても稼いでも2年間は扶養のままだぞ~。という意味ではないだろう。ちなみに週30時間以上(所定労働40時間の場合)の労働を続けると収入が130万円未満でも会社で社会保険に加入しなければならない。

まとめると、人手不足による一時的な増収の場合は、被扶養者の判定で保険者が柔軟に対応してもよい、と言っているだけであって、年収130万円の壁自体がなくなったわけではない。年収130万円超になる見込みならば社会保険上は扶養から外れて被保険者として社会保険料を支払う、というルール自体は変わらない。

尚、現実的に事業所が年収130万円の見込みとすれば、実際130万円を遥かに超えた収入で働いたとしても問題ないかどうかは、ホームページでは確認できなかった。(それを決めると新たな壁を作るという理由でぼやかされている。)社会保険上の判定の収入はあくまで”見込み”。年収130万円の壁は、年収130万円”見込”の壁なのだから。

年収の壁について

利用価値のある人

以前からあった「労働時間延長コース」を利用するつもりであったところぐらいしか思えない…。それも、「労働時間延長コース」との違いを理解しないと始まらない。なぜか令和5年度は併用らしい。申請手続中のところに配慮しているのだろうか?不明。あとは令和5年10月の最低賃金引き上げに伴い、令和5年10月から社会保険加入要件に当てはまることになった6か月以上その会社で社会保険未加入だった有期雇用労働者の人も該当するかもしれない。

事業所の場合

厚生年金の被保険者が51人以上100人までの会社で令和6年10月以降で所定労働時間20時間以上30時間未満の有期雇用労働者がいる会社。最低賃金の上昇で、これまでの所定労働時間どおりに働くと年収130万円を超えてしまう人。→利用価値があるかもしれない。

ほぼメリットはないといってもよい。なぜなら、会社にとって手当増と社会保険料の会社負担増分は助成金でフルカバーできないからである。令和5年10月以前に社会保険の適用を受けた人は助成金の対象にならないし、そもそも助成金は100%貰えるものではない。

そもそも助成金は費用の100%をカバーすることやましてや利ザヤを稼ぐものではない。*4だが、今回の場合は話は別で、今回の対策は事業所が社会保険に加入義務のない人を社会保険に加入させ、かつ社会保険料の労働者本人の負担分を賃金アップをするこで手取りが減らないように対処することにある。労働者本人はこれにより手取りがそれほどは減らないが、事業主がその分多く負担する形をとっている。事業主に多く負担することで年収の壁対策を解決しようとしている以上、100%助成、いや、2年後の負担を考えれば100%を超える助成金を貰えないと事業所としてはあえて社会保険に加入する必要性はかぎりなく薄い。130万円、106万円の壁は社会保険の制度上の欠陥ともいえる。税金と違い、収入に応じて増えていくのとは話が違う。働きすぎると手取りが減ってしまう年収のラインが存在する。扶養の103万円の壁とはわけがちがう。その国の制度の欠陥を会社にカバーさせようという魂胆自体が筋違いである。これをするならば、潔く国民年金第3号被保険者を廃止するか、社会保険料負担を少ない金額からスタートして手取りが減らないようにするなど制度を再設計をするのが本筋である。つまりこのやり方は邪道。よって事業所としては制度が再設計されるまで様子見するのが無難。

さてそんな中もし事業所が利用価値があるとしたら、10月以降今すぐにでも所定労働時間を延長して社会保険に加入させようと考えていた労働者がいる場合ぐらいか。

ではその労働時間延長は、事業所にとって必要かどうか。社労士などが投稿しているキャリアアップ助成金の説明動画を見るとわかるが、労働時間延長コースの説明は省略している。それはなぜか?事業所にメリットがないからである。そもそもなぜ労働者の中にパートタイムが増えたのか?その理由の1つは社会保険の会社負担がないからである。最低賃金の毎年の増加で、新人との賃金自体の差は小さくなったろうが、それでも社会保険の負担は賃金15%アップと同義である。

社会保険負担を今行うのならば、いっそのこと正社員化したほうが労働者の貢献度も生産性も高いのでは?キャリアアップ助成金の正社員化コースで一括で57万円助成されたほうがよいのでは?どうも資料を見るに正社員化コースとの併用は可能とも読み取れる(リーフレットに”賃金規定等改定コース”は併給できないと書いてあるが、裏を返せば、正社員化コースは併給不可とは書いていない)もしかしたら、厚生労働省の真の狙いは有期雇用労働者の正社員化を推し進めるためか!というのは陰謀論か…。

加えて令和5年10月より前に社会保険に加入した非正規雇用がいる場合の公平性も考えると、積極的に利用しようとする事業所はかなり限定的だろう。

国民年金第3号被保険者であり、収入のあるパート労働者の場合

最低賃金の上昇によりこれまでどおり働くと年収130万円超になっている人は10月から遡って対応を検討するのもありだと思う。

ただ、国民健康保険第3号被保険者になる人、つまり保険料負担0円なのに国民年金1号被保険者と同額の年金支給が補償されているなかで、扶養から外れ厚生年金、健康保険加入にするメリットはどれだけあるだろうか?

たしかに厚生年金に加入すれば、国民年金より多くの老齢年金は受給できるだろう。だが果たしてどれくらいになるか?厚生年金は年収と加入期間によって金額が変わってくる。各自計算してみるのが一番だと思う。

一例として、計算してみよう。尚実際の計算方はもっと複雑なので下記が正しいわけではない。

標準報酬額*5×5.481*6÷1000×加入月数

88,000円×5.481÷1000=482円 

毎月の厚生年金保険料(自己負担分)…8,052円

8,052円÷482円=16.7… 

つまり今の基準で単純計算すると年金の支払いが60歳で終了して老齢年金受給開始が65歳だとすると、82歳まで生きられれば老齢厚生年金に関しては元はとれるということになる。女性の今の平均寿命からすると元はとれる確率はある気がするが、男だったら平均寿命以上。正直どうかと思うが、あくまで今の制度上の計算ではこうなる。

この16年については以前こんな話を聞いたことがある。曰く「国民年金第3号被保険者分は奥さんの分。奥さんは結婚してからはほとんど保険料を支払わずに年金満額を手にする。その分とセットとして考えれば8年分。8年分ならばとは保険としては損とは言い切れないのでは」と。

ただし、これは専業主婦が多かった時の話。あるいは妻はあくまで短時間労働という時代の話。共働き、独身の比率が多くなった今ではあてはまらない。

月収8.8万円の場合は社会保険に入っても年金の受取額は国民年金とそれほどは変わらない。

尚、厚生年金、国民年金第3号被保険者は配偶者の状況に左右されるし、離婚した場合なら結婚していた期間の配偶者の分の分割とか、税金上の計算とか、障害厚生年金とか色々あるので、もっと複雑であるから個々人によって必要性の判断は異なると思う。そもそも厚生年金は障害厚生年金のために入るべき、という意見もあるぐらいだから不要とはいわない。

続いて健康保険について。これも被扶養者から外れることにより状況は変わってくる。

東京の場合で標準報酬月額88,000円、介護保険料負担ナシなら月々4,400円の個人負担がついてくる。では扶養に入っているかどうかとの違いは「傷病手当金」があるかないかである。「傷病手当金」は被扶養者、国民健康保険加入者(市町村国保)にはない制度。業務”外”の疾病等により働けなかった場合、標準報酬月額の3分の2が最大1年半受け取れる。それ以外の違いは健康保険組合独自のもの以外はない。健康保険の一番の理由である医療機関にかかった場合の自己負担分や高額医療費は被扶養者の場合と同額なので、この傷病手当金が生活費にどれだけ必要かにかかってくる。よってこれも個々人による。

上記を踏まえたうえで今すぐ社会保険に入ることを希望するのならば、私は収入の大幅アップを考えたほうがいいと思う。もし今フルタイムで働いたならば最低賃金を考慮すれば年収200万円近くになるだろう。さらに賞与をもらえる待遇を目指した方がよいと思う。今は子育てなどで無理という場合は、被扶養者のままで、”数年後”に、収入アップを目指して転職するほうがよいと思うが…。まあ他人の年金をどうこういうのは大きなお世話である。

ただ、第3号被保険者のパート労働者としては、今、この年収の壁対策に働いている会社がのらないと大損するということはなさそうだ。有期雇用契約労働者として契約更新されないリスクをとってまで、パートタイマーが事業所に訴えて手取り減少分をカバーするだけの賃上げを要求するまでもないかも、とだけはいっておく。上述したとおり、賃上げ分助成金が受け取れるとは限らないからである。

事業所が15%アップの賃上げをするので社会保険に入らないか?と積極的に言ってきた場合はというと…正直判断が難しい。本当に扶養から外れて社会保険に入る必要性があるかどうかは上記で長々と説明した通り個々人によると思うし、2年後に国民年金の見直しされるかどうかは現時点で不明だからである。

補足1

労働者も事業所も国民年金第3号被保険者が”廃止”されることを見据えて今から動く、というのもひとつの考えだと思っている。私は、国民年金第2号被保険者の”配偶者”の扶養が対象というこの第3号被保険者というのはなし崩し的、段階的に、廃止か、大幅縮小になるのではないかと予想している。(育児期間とかの期間の配慮はあるかもしれない。)

そして仮に2年後に”廃止”になった場合はその分の穴埋めの助成金は用意されないと思う。なぜなら助成金は法律上の義務となったものに対する助成はしないものだからである。法律施行前に率先的に着手する”インセンティブ”として助成金が支給されるものだからである。

補足2

今、国会は減税が中心だ。年収の壁の話はどこかにいった。その点からしてもここはやはり時間をかけて調査しメリットデメリットを把握したほうがいいと思う。大手新聞社にメリットなしと書かれてしまったらしいし(有料記事らしいので転載しない)、もしかしたらさらなる追加対応、追加説明があるかもしれない。それは、コロナ禍の雇用調整助成金や、人材開発支援助成金の人への投資促進コースの変更を見ればあながちありえない話ではないと思う。

最後に

この記事の閲覧数が多ければ間違った案内をしてしまうといけないのでもう少し読み込んで確認する。あと、内容が変わってくるようだとまた読み込んで確認する。そうでなければ、自社に関しては利用価値ナシとして、これにてこの年収の壁の関連記事は終了予定である。

*1:というか今回の新コースは、パンフレットに書かれているのと支給要領で一致しないところがあるのではないかと現時点では疑問に思っている。

*2:国民健康保険には市町村が運営するものが大半ではあるが、医療国保、建設国保など働いている業界によって独自の国保もある。これを職別国保というがこれを説明すると話が複雑になるので職別国保ではなく市町村国保の話をする

*3:(60歳以上や障害者の場合は180万円。被扶養者の判定は全員が年収130万円がラインではない)

*4:社労士、コンサルタント、経営者の中にはYouTubeなどで「支払った労働保険料分は助成金で回収しようか、助成金で利益をあげよう」とかいっているのを見たことがあるだろうか?あれは「労働保険料」「助成金」夫々の趣旨に反している。たしかに制度上の隙間に入れば利益があがる場合もあるが、そのような考えを公言していて大丈夫か、あなたたち?と思ってしまう。私なら、いくらセールストークといえども、こういう人達とは不正受給のリスクがあるので付き合わない。今どれだけ国が不正調査をしているのか知らないのか?素人か?と思ってしまう。まあ事業主の勝手だが。捕まったり公表されるのはこういう人達でなく、事業主、会社だから自己責任だし。国の助成金補助金というのはあくまで経費の負担額の軽減が、国による政策誘導のインセンティブのどちらかだから、”儲かる”という話ではない。

*5:(月額ではないので注意)

*6:(支払った年月等によって変わる数値であるので注意)