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「年収106万円の壁」についての私見① +雇用調整助成金の計算方変更

年収の壁について

9月25日、総理大臣からいわゆる「年収106万円の壁」についての話があった。
私は詳しい内容は9月29日の夕方以降に案内があるのではないかと推測していて、(補正予算としてならば、もう少し後かもしれない)、それが発表された後で内容を確認すると思うが、このブログとしては今日時点の時点でのこの発表並びにその前日の新聞各社の記事をベースに私見を述べたい。

まず、年収106万円、130万円の壁のおさらいから。

この106万円、130万円の壁が2つあるのは、厚生年金保険加入者の数をもってラインがわかれる。報道等ではわかりやすく「従業員」101人以上と書いてあったりするが、正確には厚生年金保険加入者が正解だと思う。自社が厚生年金保険保険加入者が101人以上いると、「特定適用事業所」となる。日本年金機構が過去1年のデータをもとに会社に通知してくることで決められるらしいので自社の人事担当者に聞けばわかるだろうが、少なくとも会社に従業員が100人もいない会社は106万円の壁はとりあえず気にしなくていいだろう。

正直言うと、この106万円と130万円の違いだけでも本にして数ページの解説が必要だと思うので、これ以上の説明は省略する。ちなみに、厚生年金保険加入者と健康保険加入者の人数は必ずしも一致しない。

まず、106万円の壁の場合は、つまるところ厚生年金保険加入者が101人以上いる会社であって、要するにそれなりの規模の会社である。これだけの労働者を抱えている会社の場合は、人事部、少なくとも総務部があるだろう。そして、その部署で対応可能と判断できるから助成金で対応するということだろう。

そして、130万円の壁はざっくりいうと労働者5人以上や一部の事業を除くのほとんどの会社が対応が必要となる。年収が130万円以上あれば、国民年金の3号被保険者から外れるからだ。これについては、助成金対応ではなくて、収入が130万未満から130万以上に増えても被扶養者として2年間は猶予するようだ。

おそらく、10人ぐらいの小さな会社は総務部人事部もいない可能性がある。この規模の会社まで助成金で網羅するとなると対象となる会社が膨大になり、かつ、会社が助成金の申請に対応できない可能性がある。コロナ特例の雇用調整助成金で懲りたのかもしれない。よって、助成金でなく2年間扶養者として留める、という処置にしたのだと推測している。

よって助成金を今気にすべきは社会保険加入者101人以上の会社、ということになろう。それ以外は猶予の仕方について具体的にどうなるか気にすることになるのだと思う。

何をいっているだ、と思う方は、助成金の場合は各都道府県の労働局が、猶予の方は年金事務所(年金機構)が窓口になる、という形だと思えばわかりやすいだろうか。

以上、推測。具体的な話は発表されてから。正直、どう助成金を支給するのか具体的にはさっぱりわからないし、そもそも2年間の時限措置のようである。おそらく、106万円の壁、というのを取っ払って配偶者はこれからは収入に関係なく年金や健康保険を負担させたいのが本音だろうが(自営業、無職の場合は実際そうである)そうなると被扶養者は実質大幅負担増になるので、106万円の壁という、ある一線稼ぐと損をするという風に思われないようなわかりにくい複雑な制度を作ると推測している。労働者を確保したいのか?No、多分社会保険料収入を増やしたいだけだと思う。

雇用調整助成金助成金の計算方法について

上記の助成金の話が分科会で出ていないかホームページを見たところ、「雇用調整助成金の計算方」についての議論がされたようだ。

簡単に言うと、助成金の計算方が、コロナ禍前やコロナ禍中は「労働保険料申告書」の「人件費総額」ベースでの平均値をもとに計算していたが、この計算方だと給料の大半が歩合給である会社が休業手当を歩合給部分なしで支払った場合、会社が利益をだせるということが報道された。報道当時は不正受給では?という疑惑だったが制度上誤りではない欠陥部分であったことがわかった。かつ、会計検査院でもこの制度上の欠陥を指摘された。今後どうなるかと思っていたが、この計算方が改められて実際に支払われた休業手当ベースでの助成金に1本化されるらしい。

コロナ特例の後の通常版(令和5年9月時点)では、労働保険料ベースと休業手当ベースの2種類で申請可能になっているが、労働保険料ベースは廃止するようだ。いつから適用になるかはわからないが、クーリング期間が明けてまた申請しようとしている事業所はいつからになるか要チェックだと思う。

10月2日追記 令和6年1月以降の判定基礎期間から実際の休業手当に一本化されることがホームページ上で公表された。これにより少なくとも会社が支払った休業手当以上の助成金が支給されない、つまり会社が雇用調整助成金をもって利益を得ることはできなくなる。(不正を除く)。

尚、実際の休業手当計算にも当然欠点がある。だから、雇用調整助成金は労働保険申告書の平均値ベースをこれまで採用していた、ともいえる。一例として、給料を増額し、その分を助成金で補填できるところ。勿論、給料を昇給月以外で増やした場合は審査という確認が入る可能性が高い。つまり人数の多い会社の場合、審査も時間がかかると思われるので迅速支給するには不向きだと思っている。まあ、これはコロナ特例の雇用調整助成金について何が問題だったかや不正調査、全件調査という洗い出しが行われているらしいので、そこで分析がされる、かもしれない。