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面接の合否基準:マンガを題材にした話

本屋にいくと、人気のある漫画の内容を題材にした自己啓発の本や名言集を見かけることがある。昔はドラえもん、とか、サザエさんとかがあり、今はワンピースか鬼滅の刃とかだろうか。

こういう本を見るに、「原作者は、実生活に役立つことを目的として話を書いていないだろう。創作物として面白いかどうかが重要。マンガは特にその1話が面白くないと次の話、次の巻を読者は購入しないので、1話ごとに毎回盛り上がりが必要。その中の発言を抽出したこじつけだろう」と読みもせず思っていた。名言集は読者の印象に残るようなカッコいい、素敵な発言とは思っているが、現実での自己啓発関連としてはどうだろう?別に命をかけたバトルとかしないし」と思っていた。

でもふと今日「葬送のフリーレン」の中で、面接の話が2回あったことを思い出し、そしてふと気づいた。この漫画の面接の場面、面接官と面接を受ける側の言動は現実の面接でもアリの部分も多いのじゃないかと。

勿論、あくまで漫画という創作物であり、現実の世界とは異なる。キャラクターは物語としてわかりやすい存在になっているので、現実の人間と同じなどとは微塵も思っていない。でもちょっと漫画を題材にした自己啓発本を書く人、書く出版社の心理というのはもしかしたら、と感じた次第。

ということで、今回は「葬送のフリーレン」というマンガを題材にした面接の話。ネタバレになるので、ネタバレを避けたい人はここで戻ってほしい。

 

 

 

まずはあらすじをできる限り端折って説明。

マンガ「葬送のフリーレン」の第57話で3年に1度開かれる1級魔法使い(簡単にいえば魔法使いの最高クラスで誰でもなれない。)選考試験の最終試験の話が始まる。最終試験である第3次試験は、急遽魔法協会のトップのゼーリエの面接で決まることになった。

「面接で決定」ということを聞いて、主人公のフリーレンは自分は不合格になると確信した。トップのゼーリエはフリーレンの師匠の師匠。そして自分はゼーリエの望む魔法使いになっていないことを確信しているためだ。そして、ゼーリエの直感は正しい、とフリーレンは認識している。

フリーレンは面接時にゼーリエから「好きな魔法は何か」と問われ、フリーレンは実戦では役立たない魔法とその理由を回答する。その回答にゼーリエは不満を持ち、フリーレンは本人の予想通り不合格となる。

他の受験者も続々不合格となる。不合格理由として「ゼーリエに恐怖を感じていること、そして自分の身の丈を知っていること、1級魔法使いとなった自分をイメージできていないこと」、と伝達している。

一方、以下の6名は合格する。

まずフリーレンの弟子の若者フェルン。ゼーリエはフェルンに最初に会った時は、他の不合格者と同じだと評価しなかったが、その直後フェルンの発言から自分の今の一番弟子を超えうる才覚を持つことに気づく。そしてゼーリエからの誘いに対するフェルンの回答にゼーリエは満足しなかったが、その才能をもって合格とする。

次に老獪で最も権力を持つ魔法使いのデンケン。ゼーリエは野心に燃えていた若かりし頃のデンケンならともかく今の老人になったデンケンに興味はなかったと発言する。しかし、最初に会った際のデンケンの初動を見て、いまだ衰えていないと見て合格とする。

次に過去の試験で1級魔法使い殺しをしたため不合格となったユーべル。会話もせずに会った瞬間、ゼーリエはユーべルに合格をつげる。ユーべルから「話をしないのか」と逆質問されたのに対し、ゼーリエは「会話が必要なのか?」と回答する。このやりとりはマンガならではで、現実でこんな会話のやりとりはしないだろうが、現実では面接で本当は会話などしなくとも、会ってすぐに合格の判定がでる(面接での会話は一応の儀式のようなもの)高レベルの人というのは実際いるだろう。

次に分身の術の使い手ラント。ゼーリエはラントの振る舞いをふざけた行為と言いながらもその度胸を含め、合格させる。これもマンガならではの振る舞いなので現実ではありえないだろうが、一応触れておく。

次に前線の戦地で活動するヴィアベル。この人物は他の不合格者よりも魔法使いとしての実力は下だというような描写もあったので、必ずしも能力が抜きんでているというわけではない。だがその精神力が違った。他の不合格者同様にユーベルに勝てないことをすぐに悟るが、他の不合格者と違い、その判断が恐怖によるものではなく、勝てない勝負をしないという判断だった。現状を見抜くのは他の不合格者もできていたが、精神力と現場での実践力が違う、ということだろう。そして、ゼーリエはフリーレン同様に「好きな魔法」を質問する。その回答は、フリーレンとは全く異なるものだった。そしてその回答にヴィアベルは満足し合格させる。

最後にかなりの能力があると思われるメトーゼ。自分への印象をゼーリエから聞かれ、その回答から合格となった。まあ、この人も現実ではありえないキャラクターなので今回の話ではスルーする。

以上が面接の話のおおまかな流れである。ネタバレを極力さけるような表現にした。漫画ではユーべルが合否理由を全員にはいっていないし、魔法使いと言う現実ではありえない設定であるので、あくまでこれを題材にした話である。

まず、面接というのはどこまでいっても最終的には面接官(合否の決定権を持つ者)による主観、判断になる合否基準になる。ゼーリエという面接官は、受験者の純粋な能力、野心、図受験者を超える能力を持つ人に会ったときの初動、そして質問に対する回答が気に入るかどうかで合否を決めている。

それぞれ合否理由を見てみよう。まずは受験者のなかではおそらく最強であるフリーレンはどんなに能力が高くても、ゼーリエにとっては、その野心のなさと質問の回答に納得できず不合格にしている。ゼーリエが位置づける1級魔法使いとしての心構え、つまりそのグループの一員に加わるためには、グループ内で共有する価値観と一致しなければ、そのグループに入れまい。

ただ、現時点の価値観は違えども、フェルンのように実力があり将来有望な人は採用される。

また、繰り返しになるが不合格になった理由についてゼーリエは不合格者の1人に対し「1級魔法使いになった自分をイメージできていない」と述べている。現実の言葉に置き換えれば、そこで働く姿を自分なりに想像してない人、ということになるだろうか。その会社に入って自分はどうしたいのか、そして何ができるのか、面接官に説明できなければ、不合格になりえる。

年齢については、一般的には若い人に混じった年配者は面接で不利というのは現実でもよくあるケース。年配というだけで即不採用という場合もいるし、実力があっても仕事への熱意が欠けている人は不採用の場合もあるが、まだチャレンジ精神がある人は年齢を問わず合格するケースもある。

質問に対する回答も、面接官の心に響けば合格材料になる。

以上がマンガでのお話である。現実には魔法というのはないし、初めて会う人の能力を単純に面接官は見分けられないのだから、これをもって現実社会に当てはめる気はない。現実との区別がついていないわけではない。

ただ、その面接の合格基準に関していえば、現実の面接も似たようなものだと私はふと思ったのだ。

面接は能力、考え方、野心、精神力、年齢、質問への回答、自分が何ができるかという提示、それらを見て聴いて、最終的には直感で合否が決まる。戦力として雇う以上一定以上の能力があることを証明することは必須だが、単純な能力順ではない。そして合否は面接官が会ってすぐ、席に座るまでの立ち振る舞いや、第一声でほぼ決まるともいわれる。途中の会話のやりとり一つで不合格というの余程の発言でない限りはないと私は思う。ただ予想外の回答をしたことより、合格になる場合もたまにはある。

この会話のやりとりの中で合否が逆転する場合があるからこそ、面接対応というのが盛んになり、当意即妙な回答を餌に、転職エージェントや自称採用のプロが金稼ぎができる。

マンガの場合はその直感は当たるだろうが、現実では人間の直感があたるとは限らない。ただ、現実でも同様に直感で合否を決めるというのは一緒だと思う。

3000字以上も書いて結局何が言いたいのだ?と思った方は、上の3段前の結論(下線の行)を言いたいだけだと思ってほしい。この4行の説明のために3000字以上を要してしまったのは私の実力不足だ。