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雇用調整助成金の私見③ 令和6年4月以降の変更③ 教育訓練②

雇用調整助成金」令和6年4月改正版の記事3回目。教育訓練の2回目。

今回は教育訓練を実施した場合の助成率などの数字についてみていく。わかりやすくリーフレットが載っているのでそちらの数字を参照したい。

助成金の計算式

①初日から支給日数30日を超えるまでの判定基礎期間

実際に支払った休業手当×2/3(大企業の場合は1/2)

ただし上記休業手当の1人あたり上限は、基本手当(失業保険の手当のこと)日額上限(令和5年8月1日時点で8,490円)になる。

以前は前年度の労働保険料申告書の数字をベースに1人あたりの平均単価を算出していたが、令和6年1月1日以降からは実際に支払った休業手当額がベースとなっている。つまり実際の支払額がベースなので雇用調整助成金で利益が計上できる構造ではなくなっている。

支給日数が30日を超えた次の判定基礎期間の助成率

①教育訓練を1日もせずに休業した場合

実際に支払った休業手当×1/2(大企業は1/4)

つまり67%→50%(大企業は50%→25%)と大幅に減る。

②教育訓練実施率が1/10以上の場合

実際に支払った休業手当×2/3(大企業の場合は1/2)

つまり教育訓練実施率(※2)が1/10以上あればもとのままである。さらに実施率が1/5以上になると教育訓練の1人1日あたりの加算額が1200円から1800円に増える。

言葉の定義

(※1)支給日数

1つの判定基礎期間の休業等の”延”日数を対象労働者で除した数

と定義されている。具体的に計算すると例えば判定基礎期間は給料締切日で計算する形なので、休業等を対象労働者数10人で5日、対象労働者は20人とすると以下のとおりとなる。

10×5÷20=2.5日

これがわかりずらい。まず休業等の日数を数える必要がある。休業ではなく休業等である。そして対象労働者数を計算する必要がある。対象労働者が少ない所はいいが、人数の多いところ、月の途中で入退社が多い、つまり出入りの多いところの人数はどうかなど調べる必要がある。尚、この数字は多ければ多いほどいい、とはいいきれない。下記で述べるが、支給限度日数という助成される日数の上限があるからである。かといって少なすぎると休業等規模要件(休業等延日数÷対象労働者にかかる所定労働延日数)という下限に引っかかる。難儀である。

(※2)教育訓練実施率

休業等の延日数のうち、教育訓練を実施した日数の割合

と定義されている。簡単にいえば、休業等の日数が全員20日あるならば、全員の2日教育訓練をすればクリア、となるわけである。問題は休業の日数、教育訓練の日数が労働者でバラバラの場合、短時間の休業と教育訓練を実施した場合の計算方である。またこちらも上限下限の問題があるが、ギリギリの日数で計画を立てて助成率が下がるとか休業等規模要件で不支給とならないよう気をつけないといけない。

イメージ

さて簡単に書いたがイメージは掴めただろうか。ザックリいえば雇用調整の休業等を実施する場合は2か月目から教育訓練を実施することを計画してね、ということだろう。計算式はややこしいが休業等開始の3か月目に入る前までに教育訓練をする準備をすればいい、ということ。なぜ2か月目でないかというと、月の所定労働日数は最低週1日の休日が必要なので27日が最大。よって30日を超えるのは早くて2か月目の間になるから、30日を超えた次の判定基礎期間は3か月目になるからである。(休業開始日から30日後、90日後からではない)

課題

助成金の計算式はExcelで自動計算されるようになっている。要するにこれに数字をいれればいい、というわけで計算式のない助成金も多い中で親切設計ともいえる。しかし私はこの計算式の意味がまだ掴めていない。仮の数字をいれても、だ。上記の助成率の数字が変わるせいだろうが、ぜんぜんピンとこない。教育訓練の支払い率は原則100%だが100以外の数字も入力できるし(例外に対応するため)

だがこのピンとこないのは、コロナ特例のシンプルさに私が慣れたからでもある。今の様式は残業相殺とか特例の時になくなっていたものが復活したりしているせいでもある。コロナ特例の前と比べて計算方などがかなり変化したからでもある。でもある意味ピンとこないことで助成金額を最初から資金繰りに組み込もうとする危ない考えを避けられる、ともいえる。

私見(最後に)

また、支給日数30日を超えてからというが、支給日数の上限は1年100日、3年150日である。コロナ特例の令和4年11月末までの支給はこの日数に含めないということだが、仮に令和4年12月~令和5年3月末までほぼ休業していたところはすぐに支給日数3年150日に到達するだろう。だとすると教育訓練を計画するにしてもすぐに支給限度日数に到着してしまう場合もある。つまり教育訓練を開始してすぐに支給限度日数到達により終了ということも十分ありうる。能登半島地震の特例は別扱いなので、この助成金を使用する予定を組むものではないといえる。100日の間に3か月平均で売上10%以上も下がり、労働者を休業せざるをえない状況に追い込まれているのならば、その状態が100日を超えて続くことが確実ならば経営者は事業所の撤退などを、労働者は転職を視野に入れるべきなのだろう。

あとクーリング期間が終った通常の雇用調整助成金はどれくらいの利用があるのだろうか?能登半島地震の被災地はともかく、通常の場合、コロナ特例のイメージでまた利用を、と考えていたのなら難易度が跳ね上がって計画断念というところがあるかもしれない。利用件数は恐らく公表されないし、雇用調整助成金自体の予算案の金額も公表されてなかったはず。一応調べて記事にしたが、この助成金の需要は特例以外そんなにないかもしれない。ただ、ビッ〇モーター、ダイ〇ツ、小〇製薬の関連で影響がある取引会社もあるかもしれない。