巧遅は拙速に如かず

仕事、自己啓発、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

経理事務員の99%がAIに仕事を奪われるという記事について(2/26)

今日、以下の記事をインターネットで見た。まずは内容をご確認いただきたい。

news.yahoo.co.jp

では、この”記事”について反論をしたい。珍しく、ヤフーの最初のコメントに完全に同意した。

まず、40代後半という世代が特に危険という認識について。

この世代で経理職として仕事をしたことが少しでもある人ならば、デジタル分野に無縁で業務をしてきた人などほとんどいないであろう。この記事の著者は経理職のほぼ全員がいまだに紙だけの業務に拘りを持っていると思っているのか?紙ベースの業務は残っているのは事実だろうが、それはあくまで法令の保存義務や証拠書類が紙であったことに起因するのであって、40代後半が好んで紙媒体を使っての業務を選んでいるわけではない。大半の経理職は紙の業務が電子媒体で代替可能になったならばそれを拒否しないだろう。(現状紙からの完全デジタル化へはそれなりの投資と学習と時間が必要である)紙の書類というのはフ、ァイリング、探す時間、保管場所の確保と非効率な業務が多いが、現状その手段を選んでいたにすぎない。税務当局等行政機関が紙媒体中心からやっとこさデジタルへ移行している現状である。今、紙媒体の業務が残っているからと言って経理職という職に就く人の大半がデジタル化に対応できない、苦手意識があるというのは話が飛躍しすぎている。

40代後半は、アナログからデジタル化に移行するときに若手としてその変化に立ち会っている世代でもある。アナログからデジタルへの移行期の苦労を知っている世代である。IT企業の創業者は40代後半から50代前半が多いのがその証左。逆に40代がデジタル化に抵抗をもっているという証拠がどこにあるのか聞いてみたい。それに過去にデジタル化についていけなかった人はおそらく経理部門から今は退いているであろう。これから経理がデジタル化からDXへ進んだとしても、40代後半は今や管理職として決定権限を持つことができる世代として、過去に変化を経験した世代として率先して取り組める世代である。20年前のIT化の時も当時の40代ぐらいが中心となって進めてきたと私は記憶している。DX化、インボイス、電子保存に対し40代の経理職が反発していると思っているのか。20年前のIT化の時と比べてついていけないほど難易度が高いと著者は思っているのか。経理が昭和から全く何も変化がない業務と思っているのか。むしろ、長く経理職に就いている人からしたら、変革のチャンスがきたと思っている人もいるはずだ。

尚、世の中色々な仕事があるし、色々な人もいるので100%、経理職の人間はこうだ、とはいわない。99%こうだ、ともいわない。だが、DXに経理職が99%が消極的というのは、経理職は20世紀の頃にどこか異世界に転移していた人か?経理職はみな異世界おじさんか?いくらなんでも”煽り”表現として無理がありすぎる。

次に、99%の経理事務員がAIに仕事を奪われる、という見出しについて。
断言する。100%それはない。経理職の人数が減る可能性は十分ある。経理業務の内容が変わる可能性も十分ある。将来何が起こるかはわからない。だが、だからといって99%いなくなる、つまり100人いて1人しか残らない、大抵の会社は経理職は100人もいないので、1人の専任もいなくなる、ということは100%ない。過去に製造業が機械化しても人が99%いなくなってはいない。そもそも経理という仕事がすべて機械でできると思っているのか?それは経理という職が、マニュアルどおりで、過去の取引データで全て完結できると思っているど素人の意見にすぎない。経理に携わる人間への侮辱でしかない。

99%経理の仕事がなくなるというよりも、この世の人間が行う仕事の99%がAIにとって代わるといった方がまだ現実味があると思う。

次にデジタル化に踏み切れない3タイプという記述について。一言で言って雑。

「現状維持型」。経理がどれだけ法令、税、会計基準の変更に対応してきたかわかっていない。全部外部にアウトソーシングしてるというのならわかるが、自社で経理をするならば現状維持で済むはずがない。調査不足。机上の空論にもほどがある。

「他力本願型」。世の中にはシステム関連で経理になんの権限もない会社もあるかもしれない。だが、それでは経理はまわらない。決算は組めない。伝票すらまともに切れない。決算ができませんでした~。次頑張ります、といえる業務と思っているのか?経理の判断でせっかく導入した高額なシステムを捨てるケースだってある。机上の(以下同文)

「慎重安全型」。経理が慎重で安全を重視しなくてどうする?不安を駆り立てるようなベンダーにのせられて拙速に未知のシステムを導入してどうする?DXとかいうトレンド(そもそもDXは単なるデジタル化、デジタルによる標準化ではない。業務の変革でありそう簡単なものではない)にのせられてどうする?ベンダーに従うがままの標準化ではない。自社、自社グループにとっての最適なものは何であるか判断する。「現状維持型」と矛盾している。変革である以上大胆な判断が時には必要だが、慎重さも持ち合わせないで、だれが決算の責任を取るのか?どんなシステムだって、1年目は前のシステムと並行して行うケースもある。それはなぜか?経理は決算を落とすわけにはいかないからだ。株主、税務当局に対し決算ができずに誰がどう責任をとる?DXで決算を落としてもシステム会社はその責任を取らない。経理が責任を取る。なんどもいうが、DXは決算が担保できてからの話だ。机上の(以下同文)

しかし、この著者は本当に経理業務を知っているのか…?きちんと取材をしたのか?それとも著作からの切り抜きがおかしいのか?

流石にこれは読者の目をひくための”釣り””煽り”か、または、DX、インボイス、電子保存で一儲けを考えて、この記事を書いたのではないかと邪推している。

3つの分類は、単なるぼくの考えた経理のイメージでしかない。「それ、何か証拠があるんでしょうか?」「それ、あなたの感想ですよね?」と、ひろ〇き氏に煽ってもらえるのを狙っているのか?

本当に釣り、煽りでなくて、このレベルの取材力と分析力で、自信をもってこの記事を掲載しているのならば、著者、編集者、出版社は自分達の仕事が経理職より先にAIどころか、どこかの素人にとって代わられないか心配した方がいい。