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雇用調整助成金の私見① 令和6年4月以降の変更① 提出書類

久しぶりに雇用調整助成金の記事。令和6年4月以降から変更があった模様。一番の変更点は「教育訓練」の実施状況により助成率が変わったことは令和6年度の雇用関係助成金の改正の記事にも書いたが、それ以外でもかなりの変更があった模様。

さて今回はその変更の中で提出書類が追加されたということで、ここに焦点を当ててみたい。その理由はというと、明らかに「コロナ特例」の時の「不正受給」を考慮したとしか思えない追加書類であるからである。尚、以下の事柄は「能登半島地震特例」には適用されないようなので注意されたい。

源泉所得税の直近の納付を確認できる書類(写)
(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書の領収日印があるものなど、納付を確認できる書類)

給料を支払った証拠書類をより高度により多く集める意図がある。源泉所得税の支払とともに支払った給料と報酬の総額もわかる。給料と報酬の総額がわかって何になるの?と思う人は正直に書いた方がいい。この書類を偽って作成提出した場合は助成金の不正受給のみならず、所得税法違反にもなりうる。普通の人は税務当局の調査能力を舐めない方がいい。

対象労働者全員分の源泉徴収簿(毎月の源泉徴収の記録等が分かり年末調整のためにも使用できる書類であれば、「賃金台帳」等により代替可能)

全員分の毎月の給料の裏どりをする気満々である。労働者が本当にいるかどうかもわかるだろう。単に「賃金台帳」ではなく、源泉徴収簿に反映される、つまり裏付け書類として一致できる賃金台帳でないとダメなのだろうと推測する。推測だが不正受給をしているところのなかには「賃金台帳」の記載金額と源泉徴収簿の記載が一致しなかったケースがあるのだろう。

尚、上記2つの書類については初回申請時のみの提出で良いらしい。  

給与振込を確認できる書類(写)(現金払いの場合は会社名・金額・労働者の住所及び電話 番号・受領日が明示され、労働者が直筆で氏名を記載した領収証) 

これでもかというぐらいであるが、給料を実際振り込んだかというお金の流れを確認できるところまでを求めている。おそらく不正をする輩が給料明細や賃金台帳を改ざんしているのだろう。また現金払いの場合は労働者の署名つき領収証。これもおそらく労働者に休業手当を含む賃金を労働者に渡していなかった不正事業主がいた、ということ。

他の助成金から察するに単なる領収証は金銭の流れを示す証拠書類として労働局は信用していないのだろう。本人署名は押印を求めない代わりなのかなと思ったが、労働者本人の住所や電話番号つきの本人署名を求めている。不正調査の際、事業所を通さず労働者本人に直接接触を図ることができるようにする気満々である。そして署名させて字の鑑定までもする、かどうかは知らない。

Q5.休業日に自主的な出社をしている従業員がいますが、この日も助成対象になりますか?

A.休業日に自主的な出社をした従業員の休業については、実態として休業しているものと認めることは困難であることから、助成対象となりません。その分を除いて支給申請をしてください。 

→上記はガイドブックにある41ページにある「よくある問い合わせ」の一つである。これも恐らく不正調査を反映したものというのが私の証拠なき妄想。

具体的な妄想:

不正調査の人「休業日に出勤した記録がありますが?」

会社の担当者「従業員が勝手に出社したのであって会社は休業を指示しています。」

そんな言い訳が通用するかどうかは知らないが(おそらく通用しない)もうガイドブックでその日は助成対象でないと明確に書いてあるのだから、今後はその言い訳は100%通じない、ということだろう。各都道府県の労働局のホームページに掲載されている雇用関係助成金の不正の理由として「実際に休業していないのにも関わらず休業と偽った…」という理由が多々あるので、まあここれまで実際休業してない証拠は押さえていて、今回のQ&Aは本当に休業だったのに出勤してきた場合は休業日じゃないのだよ、という改めて念押ししているのかもしれない。

他の変更点は別途記事にする予定。