けーせらーせらー

仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

「頭のいい人が話す前に考えていること」は凄くスゴイです。

今回の記事は先週末本屋に行って購入した本の書評。青い装丁に惹かれて購入した。

結論から言うと、久しぶりにかなりの良書である。今年発売された本の中ではトップクラスである。

この本の良さは、多分書評とか動画での切り抜きのまとめではその良さを表現できないところだろう。部分を切り抜いてまとめるとこの本の良さは殆ど実感できないだろうし、内容と魅力が大幅減になると思う。

文章が流れていくように書かれいて、本を読み進める手が止まらなかった。文章の読みやすさ、説得力、構成力、具体性、次のページへの誘因力、どれもトップクラスである。

思えば昨今のビジネス本、自己啓発本は、自己の内面中心であったと思う。「他人の評価を気にしない」「自己肯定力を上げる」という2つのキーワードが中心になっていたと思う。職場のストレスに悩んでいる人がそれだけ多いということだろう。

また、著名で成功した実業家、経営者、テレビタレント、ユーチューバーの本も多い。一代で財を成したテクニックやその思考を知りたいということだろう。

しかし、「他人の評価を気にしない」「自己肯定感を挙げる」「成功者の立志伝」は、読者の仕事場においては有効活用しにくい。理由は簡単で、その本を読んだからといって自身の仕事で報酬と言う対価を得るために必要な、成果をあげる、仕事の評価を高めるという課題の解決には寄与しにくいものだからである。

「自己肯定感」「他人の評価を気にしない」ことは自己のメンタルの負担軽減を図ることはできかもしれないが、それをもって仕事ができるようになるわけではない。キツイ言い方になるが、仕事ができない、そしてそのために待遇が良くないからこそ、ストレスと疲労が溜まりメンタルが弱っているのであって、たとえ心理面や考え方一時的にメンタルの負担を弱めることに成功したとしても、仕事ができないという課題を解決できなければ、またストレスと疲労でメンタル弱体化になってしまう。

また成功者をまねても他の人にとっては成功の再現性は低い。経営者の本を読んでそのまままねをしても成功する人は殆どいないだろう。成功者発のものは主観性が強すぎるからだろう。

例えばYouTubeやチックトックで一発あてた人はそれは動画に関して先見の明があり、どういう表現をすれば閲覧数が増えるかということを掴んでいるという面で賞賛すべきだが、動画制作に携わらない人にとっては、仕事ができないという課題をおそらく解消できない。また、事務職は誰にでもできる仕事と発言している経営者の本を読んでも事務職の仕事には役立たないだろう。(そもそも事務職は誰にでもできると発言できる時点で、ビジネス本としてはその本を読む価値はないと私は思っているが。)

思えば、昨今のショート動画や切り抜き動画の流行を受けて、本はどこからでも読めるような毎日、毎週雑誌や新聞で連載しているものを合体させたような記事の集合体になっていた。読みやすいと言えば読みやすいし、読む時間も短縮できるが、中身が薄い。頭に残らない。悪く言うと、時間つぶしにしかならない。そもそも、ショート動画が流行ったのは待ち時間や通勤時間などの暇つぶしに持ってこいだからである。本で同じようなことをしても、無料でできるスマホに特化したショート動画を有料かつスマホ画面では小さすぎる本でまねてどうするのかという話だ。

前置きが長くなったが、そんななかでのこの本である。本を売り出すためであろうが、「論破」「自己肯定力」「人は話し方が…」ブームへの反論とか、昨今の流行言葉に対する反対意見のようなものを盛り込んではいるが、本質的にはこの本ではそこは殆ど重要でない。そもそも「論破」なんぞ、現実には使えないことは発言者とされる本人自身が言っていることだし、「論破」はテレビやネット上でのショーであることは、誰にでもわかる。

一応最後にこの本の内容を簡単にまとめると、以下の通りである。

「頭のいい人ほど、自己の能力を誇示する発言や、他力本願な発言はしない。つまり賢いふりをしようとしない。他人のことを考えたうえでの発言をする。その結果、他人から信用を得て、他人から頭がいいと評されることになる」

「他人の評価を気にしない」と「他人のことを気にする」ことは相反しない。それは本を読めばわかると思う。

尚、この本の書評がYouTubeでもあったりするが、そのなかのサムネイルに「頭のいい人は怒らない」と表示されているものがあったが、著者は頭のいい人が「怒らない」、とは言っていない。「頭のいい人は感情的になって発言をしたり決断をしない。感情的になった時は判断を間違えるからである」と言っている。この本に限らず書評だけ、一部だけ読むと誤ってしまういい例である。

後、この記事のタイトルはわざとこういう風につけた。この本を読んだ人にはわかってもらえると思う。