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「メンタルマネジメント大全」 メンタル管理の総まとめ (前編)

今回は「メンタルマネジメント大全」という本についての書評である。大作であり、最初から最後まで読むのに1週間はかかった。2023年2月発行のこの本が現在の「メンタル」関連の総まとめといってもいいだろう。今のメンタル関連の知見がふんだんに詰め込まれている。

この本の書評を書く前に、今回の記事はその前編として、これまで私が読んできた「メンタル」関連の本についての話をさせてもらいたい。この本の書評は次の機会に。尚、この記事はまず書き起こしを優先したので、今後文章を修正する予定である。

私はメンタル疾患にかかってから、「メンタル」関連の本はあらかた読んできた。

それは乱読に近いものもあり、目次から気になるところだけを読んだものもあり誤読しているところもあるだろうが、それでもここ10~15年ぐらいのメンタル対策の流れは大方掴んでいるつもりだ。

まず約15年ぐらい前に、マンガによる「うつ」患者やその家族による体験談、マンガによる心療内科の解説本、そして「うつ」心の風邪、と評するような、わかりやすい本で、「うつ」は誰にでも起こりうるものであって、”弱い心”の持ち主だけがかかるわけではないという本であった。また”セロトニン”という脳内物質が注目されるようになった。「うつ」は”心”ではなく”脳”が原因で引き起こされる病であると認識されるようになった。

それにより、「うつ」はタブーから脱却し始めた。心療内科、精神内科の敷居は下がった。「気の持ちよう」とか「頑張れ」と励ますことは逆効果だと認知された。

次に上記への警鐘を鳴らす本が出始めた。「うつ」を風邪”程度”、つまり”軽い”ものであると誤認すること、安易に薬を飲むことの警鐘本がではじめた。「うつ」精神科医と製薬会社によって金儲けの道具であり、「うつ」精神科医と薬では治せないという本も出始めた。また「新型うつ」という本人が都合のいい時にだけ発生する「うつ」が紹介されて、形見がまた狭くなった患者もいると思う。

「うつ」が市民権を得た後、今度は「メンタルが弱くなった」時への対処法に関する本が台頭し始めた。

もとよりメンタル疾患になると難しい本は読むのが難しくなる。そこで、マンガやわかりやすさを重視した本が中心となった。

ただわかりやすさは、根本的な改善にはつながりにくい。その時は覚えていても翌日には記憶から消えてしまう、ある種、栄養ドリンクのようなものだと評された。

その後、メンタル本は、宗教、学者、哲学者、臨床心理士、専門家ではない単なる著名人、自称カウンセラーなどにより各種出版された。一般化されるようになったが、単なる自慢話のエッセイも混じり始めた。

その中で、メンタル疾患の原因は、子どもの頃の親の愛情、または、完璧主義、自尊心の高さ、自己肯定感の低さ、レジリエンスの低さ、失敗を恐れないことなどが注目とされるようになった。つまり、本人の過程環境、本人の物の考え方という意識の問題がクローズアップされるようになった。”親が悪い”という本人にはどうしようもない答えが提示され、また本人の意識改革を求めるようになった。

その後、”マインドフルネス”が注目されるようになる。今この瞬間に意識を集中することで過去の痛みや未来への不安からの脱却を図ることを目指すようになった。

そして、ここ数年”脳”へと再び話がシフトしてきた。つまり”脳”が生み出す物質や思考への科学的なアプローチにシフトし始めている。しかも今回は”セロトニン””ドーパミン”などの脳内物質が発生するからという話だけで話がおさまらなくなった。

端的に言えば、”脳”の誤作動である。”脳”は原始時代の今日生きるか死ぬかの環境にない現代人(戦地は除く)でさえ、生命の危機への対処として、誤作動を起こす。それを解明し、対処法が重要視されることになる。

そして今その”脳”への対処法が提示されている流れである。解決策は、充分な睡眠と運動と休息である。誰にでもできる対応が、メンタル疾患の予防に効く。そしてそれらが”脳内物質”にアプローチすることができるということが科学的に証明できる、という論調が変わってきたのである。