けーせらーせらー

仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

転職してきた人たちを俯瞰してみて

「転職の思考法」というベストセラー本があった。そこの中で転職者の「マーケットバリュー」の話があった。ひとつは「専門性」(職種)と「経験」(役職)で構成される「技術資産」、ひとつは指名が取れる「人的資産」、ひとつは「業界の生産性」であった。この3つが重なり合って本人の”転職において”の市場価値は高まる。(と思う。要約すると文脈で著者が言いたいこととずれるともう。詳しくは本を読んでほしい。)

さて、私自身何度か転職を繰り返している。そして、転職先=中途採用をしている会社なので周りにも中途採用の労働者が多い。そんな中、ふと3年以上前に読んだこの本のことを思い出した。転職面接で採用されるのは「転職の思考法」にかかれているような人で、果たして、転職した後でも活躍できているのだろうか、と。転職本というのは面接で自分の望む企業に受かる能力が高まるかもしれないが、そこで活躍できるかは別の話だからだ。

尚、以下の分析は短期間で個人で成果をだす職場では一致しない。どちらかというとチームプレイで仕事をしていく職場や、管理部門でイメージしてほしい。

技術資産

職種の「専門性」と、役職での「経験」で構成される。これは確実に役に立つのは間違いない。仕事をするにあたって必要なスキルを持っていて損はない。

ただ、「転職の思考法」でも書いてあったと思うが、ここでいう「スキル」は他の会社に移っても使えるスキルだ。しかし現実的にはあまりうまくいっていない印象がある。

理由1:自社ルールに基づく「専門性」と「経験」を他の会社でも使える「スキル」だと勘違いしているから。

理由2:「技術資産」というのは面接ではわかりにくい。どちらかというと、その能力があるよ、というアピールの仕方の上手さの方に重点がいっている。

そしていざ職に就いてみると、やはりその技術持参が「自社ルール」だった人が結構多いのである。転職先で「自己ルール」を振りかざして、空回りして、痛々しいことこの上ない人を何人も見かけた。とくに管理職の「経験」はどこの会社でも使えるようで使えない。年齢性別国籍など構成メンバーにもよるところもあるのだが、今や「パワハラ」「セクハラ」にならない管理職としての対応が求められる。かつてのやり方が使えない場合もある。これに対応できる人が管理職として「使える」人である。

正直、このどこの職場でも使える「技術資産」というのは実際入社してみないとわからない。正直どこでも使えるのは「電話応対」とか「パソコン操作」ぐらいだ。良くバカにされる誰にでもできる事務職の仕事、これが案外一番どこでも役にたつのだ。専門性や経験は転職した後に、転職先の企業に、そして時代にあわせてカスタマイズ、バージョンアップできる柔軟性を持ってこそ通じるのだ。

特に1社で60歳定年まで勤めあげた人が「技術資産」の勘違いをしている比率が高い印象がある。もちろん未経験よりははるかに使える。ただ、1つの会社でしか働いたことがないから自分が持っている「専門性」「経験」が他社でも使えるものか、「自社ルール」なのか本人視点ではわからないからだ。長期間1つの会社で勤め上げてきた人の弱点ともいえよう。

それを避けるためにも「ポータブルスキル」がいい、というとそういうわけでもない。ポータブルスキルと言えば聞こえがいいが、抽象的過ぎて具体性に乏しい。それを気にしすぎると、なんとかマインドとか、なんとかメソッドとかいうわけのわからないセミナーの餌食になる羽目になる。

人的資産

どこの職場にいっても愛される人がいる。それが「人的資産」。あなただから、と選ばれるのが「人的資産」と「転職の思考法」では定義されていた。ただこれが活かされる職種が限定される。基本、顧客を引き連れていくのはご法度。意味合いとして営業職用に近い。よってこの記事ではどこの職場でも上手くやっていける人として以下文章を続ける。

愛されるというのは「組織の潤滑油」と新卒面接でのネタにされるが、言い換えれば職場で臨機応変に対応でき、人との無駄な対立を生まないということである。これが職場では重宝される。

さて、上記の「技術資産」がある人、持ちたいと思っている人には、相反してこれをもっていない人が多い印象がある。「技術資産」を磨き、「技術資産」で食ってきた自信があるからこそなのか、譲らない。周りと調整しない。上司にもお客にも譲らない。その思考が硬直化すると「技術資産」は「自己ルール」に変貌する。「自己ルール」は「技術・人的資産」ではない。

かつてリストラをしている際、この「技術資産」を持っているが「自己ルール」が強すぎて、周りと軋轢を生んだ結果、チームメンバーが退職し続けるケースがあった。こういう人をリストラした。正直、「技術資産」がどれだけあっても組織にとってマイナスになる人はいらない。人の代わりはいくらでもいる。

周りとあわせられるというのは、数値化かしにくいし、転職面接では表現しづらいので、あまり評価されていない。だが、チームとして周りと全く歩調を合わせられない人と言うのはやはり会社という組織にとって問題のある存在なのである。(尚、一人で突出して稼ぐ個人プレイの営業マンとかは別である。)

また、上記で60歳定年した「転職者」の「技術資産」は「自己ルール」であてにならないといったが、60歳定年の人はこの「人的資産」を持っている人が多い。特に「人事異動」や「転勤」の多かった人。異動や転勤をしながら、60歳まで勤め上げるというのは、それまでの組織でもまれながら、知らない人だらけのところにいきなり放り込まれても最後まで生き残った人。そういう人は「人的資産」を持っている。人の輪に入っていける。組織の中での立ち回りが上手い。融通が利く。結果、重宝される。

尚、「俺は、私は偉いんだぞ~」から抜け出せていない60歳超の人がたまにいるが、あれは論外である。

業界の生産性

業界が伸びていると給料は上がる。給料をあげたいなら自身の成果をあげるというより、成長している段階の業界、会社に入社するのが正しい。これは業界ごとの会社の人の給料賞与を見ることができると一目瞭然である。能力は個々人のことを知らないとわからないが、全体として基本給とか比較すると全然違う。給料が高い=仕事が厳しいではない。労働者なら入る業界、会社は給料水準を見て考えるのもひとつの手だ。

一方、給料が安い業界は構造上何らかの欠点を抱えている。同じ仕事でも業界の生産性によって給料が違う。給料が安いので退職者がでるため求人だけは多い。よって、求職者に上記の「技術資産」「人的資産」がなくても生産性のある業界に入れば、能力以上に良い給料と安定を手に入れることができる、というわけだ。

ただ業界の成長性という基準は正しいようで、自分が転職においてその業界にうまく乗れるかは別の話である。今、”誰もが知っている”成長性が高い企業や業界に入ることではない。”これから”伸びてくる業界に入社・転職することが必要だ。

誰もが知っている成長率の高い業界への転職は狭き門である。ではそこであえて中途採用で求められているのは何か?結局は「技術資産」「人的資産」か、前任者が逃げ出したハードワークか、あるいはギスギスした職場の調整役もしれない。つまり仕事が超しんどい可能性が高い。

”誰もが知らない”ということは、そんな業界に入って大丈夫?と知らない人に言われる可能性もある。そして、その指摘が当たっている場合も多い。急成長する会社は、時に労働者に無理を強いた結果の場合もあるからだ。

著名な経営者がいいよ、と公言した段階ではもう遅い。その見分けが難しい。

やっぱりダメな人は

さて長々と書いてきたが、「技術資産」「人的資産」はあって損はないものである。それに会社が潰れるときはどんな資産があってもクビである。逆に「技術資産」「人的資産」がかなり低い、というのはリストラ材料である。だが、欠点というか多少の難程度のものは誰でも持っているので、それが高レベルで備えていないからといってクビになるとは限らない。面接以上には求められない。受かってしまったら勝ち。その職場で生き残れると思う。

逆に、これは職場で真っ先にリストラされるな、と思う転職者は共通化できる。それは

「会った時の第一印象が非常に悪い人」

最初に断っておくが容姿が悪い人ではない。他の記事で書いたが「面接で直接会ってすぐこの人はダメだな、という印象を持たれる人」である。つまり、前〇氏の話は正しい。ただ、履歴書に書かれた「技術資産」が魅力的だったり、採用権を持っている人にだけ受けが良かったり、どうしても空いた枠を埋めたいときに紛れ込んだりしてくるのである。

具体的には何か。

  • 態度が非常に横柄。相手をしていて気分が悪い。
  • 態度が非常に卑屈。相手をしていて気分が悪い。
  • 不潔、だらしない。流行おくれのファッションや安物の服、独特のファッションセンスという意味ではない。科学的証拠がないが、仕事が非常にできない人にこの傾向がある。
  • 声が異常に小さい。何を言っているかわからないレベルで小さい。人と話さない仕事以外ならば、業務運営に支障を生じる。
  • 言い訳がましい。「他責」思考。リスクを伴う仕事を避ける。失敗を人のせいにする。私が大嫌いな言葉である「他責」なのだが、やはり仕事ではとても重要であると認識させられる。
  • 前職の会社に問題があった人。これは最近気づいた。労働者本人に問題があったわけではないのだが、(本人に問題があれば採用されない)前職が悪名高いところだと当然、入社時に周りが警戒するので最初で躓く。なにより本人の仕事のやり方が何かおかしい。悪名高いところはおかしなルールが蔓延し定着しているのだろう。そういう会社に長くい続けることでそのおかしな仕事のやり方が体に染みついてしまっているようだ。よって周りの警戒が解けない。だから仕事が振られない。

とまあ具体的に見ると、面接をすれば見つけることは十分可能。だから「面接ですぐにわかる」といわれているのである。

まとめ

要するに「人的資産」「技術資産」「業界の生産性」は重要であるが、転職した後のことを考えると、損ではないが、”絶対視”する項目でもないよ、ということである。

結論。正論であり間違っているとはいわない。ただし、それは考えれば誰でもわかることだし、別にそれを知っていたからと言って、それを実践したからと言って、転職活動が上手くいくかというと別の話。会社は個人個人を見て決めるのであるから、あくまで、転職エージェントが質問された場合に答える「評論」に過ぎない、というのが私見

四の五の言わず行動(経験、勉強、多くの人と会う)である。考えるのは行動しながらで良い。

あと転職するならば、1社で長く勤めるのは弱点になりかねないが、定年までそのままい続けること自体なんら問題はない。むしろ今でも推奨。そもそも大抵の人にとっては1社で定年まで働いた方が給料面でも待遇でも仕事の融通でも安定性でも退職金でもあらゆる面で良いことだと私は思っている。あくまで転職した場合の話である。(当然いわゆる「ブラック企業」は除く。)