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仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

「メンタルマネジメント大全」 メンタル管理の総まとめ (後編)

前回の記事では、「メンタル」関連の本のここ数年の傾向について書いた。

今回は、「メンタルマネジメント大全」についての書評である。

まず先に、この本をおススメしない方がいる。

1 今まさにメンタル疾患に苦しんでいる方。この本は結構なボリュームだ。そしてメンタル管理について深堀をした本だ。私の経験によるが、今まさにメンタル疾患に苦しんでいる時は頭があまり回らない場合が多いのでこの本を最後まで読むのは難しいだろう。

2 今まさに起こっている問題の解決策を見つけられたい方。メンタル疾患については、前回の記事でも書いた通り、読みやすい本が多数でている。マンガや、Twitterでまとめたものもある。それぞれの悩みごとに簡潔に回された本もでている。ひとつのテーマで解決策を求めている人はそういった本の方が良いかもしれない。

そしておススメしない方を最初に書いた理由は、この本は最初から最後までじっくりと時間をかけて読むのが良いと思うからだ。

もちろんこの本も目次があり、不安、ストレス、モチベーション、死への恐怖、などテーマごとにわかれていて、そこだけ読むのもアリだと思うが、私は1つの章だけ読むとどこかで読んだことのあることを書いてあるだけ、という感想を持ってしまうと思う。この本は「メンタル」に関する総まとめの本であるから、簡潔にまとめられた本の中で似ている箇所があるのだ。だからこそ、上記1、2に当てはまる人へはススメられないと思った。他には外国人著者であることから、日本特有の社会や文化に対する記述はないので、例えば日本特有の年功序列、終身雇用で転職が難しい職場の人間関係の改善、というテーマで問題解決を図りたいと思う人にもこの本は不向きであろう。また、結構なボリュームのため、ある程度まとまった時間が取れる人の方がよいと思うし、最近本を読んでいない人にはこの分量はハードルが高い。

さて、長々と前置きが続いたが、ここから本題。この本の一部について記述する。

まず、自分の思考や感情について。

この思考と感情というものは、”真実”に基づいたものから発生たものではないと著者は訴える。つまり自分の思考や感情は間違える。”脳”が生存することを最優先に今ある情報をもとに最速で導き出した答えが”思考”と”感情”である。そして、この生存のための思考や感情というのは、原始時代のような動物や種族との闘いの中、生きるか殺されるかという瞬時の判断が求められる状況下の中で、生き残るための最善の策を脳が提示してくるものである。その提示は現代の自分たちの現状を鑑みると、今戦地にいる人はともかく、大抵の人にとっては”過剰反応”なのだ。

だからといって、その思考や感情を無理に抑え込もうとすることは逆効果だと著者は主張する。無理にポジティブにしようとするのも同様。つまり、強引に自分の考えを修正しようとすればするほどその思考や感情からは抜け出せない。その思考や感情が脳から湧き出てくることは自然であり、避けられないことであり、止められないことである。その現実を受けいれて、思考や感情は止められないならば習慣などにより脳の反応を現代の自分の状況に合わせて上書きすることを推奨している。

不安は避けて通ろうとすればするほど不安は増大する。逃げずに前に進んでこそ、その不安は軽減される。

耳障りのいい、癒しの一言をきくだけでは、メンタルの根本的な解決は不可能である。むしろその問題に向き合う、その問題は発生するものとして一旦受け入れる、そして、その後、どうしてそのような問題が発生するのか原因を理解し、対応するという形がよいのだ。

上記の説明はこの本の一部である。正直、一部だけの切り抜きをすることはこの本の良さをひきだせていないないと思う。ぜひ本を最初から最後まで読んでもらった方がよい。この本は、これまでの研究結果から導き出された現在のメンタル対策として誤ったもの、既に認知されているもの、最新のものが網羅されている本である。