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雇用調整助成金 特例分析① 要件の緩和、不適用(11/14)

令和4年12月1日追記…令和4年12月1日からは「経過措置期間」として、支給要領に別規定が新設されております。以下の記事では、令和4年11月14日に書いたものであり、最新のものとは異なる可能性がありますので、ご注意下さい。

 

前回の記事では、特例について箇条書きで抜粋しました。
今回から3回に分けて記事にします。
1回目は支給要領1106aの特例、2回目は支給要領1108aの特例、3回目は支給要領1109aの特例。
この3つの違いとはどこにあるかといいますと、最初の施行日が違います。
1106aは令和2年2月施行、1108aは令和2年4月施行、1109aは令和2年5月施行です。
他に違いがあるかというと、1106aは最初の緊急事態宣言が発出された令和2年4月より前の段階、新型コロナウイルスが日本で確認され始めた頃の緩和であり、緊急事態宣言や一斉休業の要請が出る前の段階です。なので、支給の要件項目を一旦停止する、緩和する、というような規定が多いです。1108aは最初の緊急事態宣言がでた後の特例。助成率など金銭に関係する規定が多いです。1109aは様式の簡素化の特例。入力する項目を簡単にする、という特例です。

では、このうち最初の1106aについて。

1106a 新型コロナウイルス感染症の影響に伴う事業活動の縮小に関する特例
(令和2年2月15日施行~略~令和4年9月30日改正)

生産量要件の特例

「3か月間」の比較が「1か月間」の比較に。しかも前年比較だけでなく例えばコロナ前の3年前比較などの規定が追加されています。特例期間が延びるにつれ、コロナ前との比較をするため3年前比まで延びたようです。そしてこの特例が12月以降新規のところはなくなる、ということかと。尚、この規定では比較対象となる月が「計画届の提出月」の前月のままです。これは計画届は5月頃まで残っていたためです。1109アaの規定で計画届がなくなり、読み替え規定がでてきます。

 尚、この規定の最初に「特例事業主」という言葉がでてきます。「特例事業主」とは「新型コロナウイルス感染症の影響に伴い事業活動の縮小を余儀なくされた事業主」です。以降の特例の中で「特例事業主」については…と対象が限定されています。厳密にいうと、新型コロナウイルスの影響でない事業主については適用外の特例である可能性もあります。(例えば、ロシア、ウクライナ関連、円安、物価高関連など)
 ただ以降記述する特例が「特例事業主」だけを対象としているかどうかは話がわかりづらくなるのので説明は省略します。

雇用量要件の特例

内容は過去記事参照。この要件が12月新規の会社から復活すると予告されています。

kesera22.hatenablog.com・支給限度日数の特例

支給限度日数は、1年100日(休業延日数÷労働者数)、3年150日です。これが特例によりコロナによる休業日数をこの日数とは別枠とすることになっています。恐らく、この規定ができた時に「通常版」の受給をしていたところの支給限度日数にコロナの休業日数を追加しないよ、という規定。

・対象被保険者の特例

 通常は、同一の事業主での雇用保険被保険者期間6か月未満の雇用保険被保険者は休業しても助成金の対象外です。それを特例で「これを適用しない」⇒雇用保険被保険者期間6か月未満でも対象にする、ということになっています。もともとは入社してすぐに休業、というケース、性悪説でいうと、本当に働かせる気があって雇ったのか怪しい人(働く気がない助成金で給料をもらおうとする人)を排除するための規定でしょうかね。 

クーリング期間の特例

雇用調整助成金を利用した後、1年間雇用調整助成金を利用できない期間のことです。現在適用されていません。
 支給限度日数とクーリング期間がどうなるかが今後の一番の注目項目です。

短時間休業の特例

過去記事参照。来年3月末まで特例継続です。

kesera22.hatenablog.com

・休業規模要件の特例

助成金として申請できる休業日数の最低ラインです。中小企業の場合、通常1/20が1/40に緩和されています。要するに、1か月間で1~2日だけの休業というのは、事業縮小を余儀なくされ雇用の維持が困難な状況の中の休業といえるのか、ということかと。

残業相殺の特例

過去記事参照。

kesera22.hatenablog.com

・所定労働日数が1年前と増加している場合の取扱

所定労働日数が1年前と比べて、合理的な理由なく増えている場合は、その日分、残業相殺のように休業延べ日数から差し引く規定です。休業しているのに所定労働日を理由なく増やすとはどういうことだ、という規定かと。これを特例で適用しないというわけです。

・簡素化の特例

労働組合等に関連する書類の簡素化

署名とかの省略です。コロナ禍で休業している中、労働者全員の署名を集めるのは難しいと判断したのかな?

②賃金台帳等に休業手当等の額を区分しないことを認める。

休業手当は、通常、賃金台帳等に明記する必要があります。
簡単にいうと、基本給20万円のひとで1か月全休し100%の休業手当を支給した場合ならば、基本給20万円、休業手当20万円、控除▲20万円 というように記載しないとダメ、休業手当を賃金台帳上明確にしないといけない規定です。しかし特例で、基本給20万円という表記だけでもいいよという規定です。
後段は、おそらく令和4年に追加されたもので、源泉所得税の書類や給料を支払った証拠は提出の省略OK、という意味かと。本則で書類を追加して附則で提出の省略を可能にする…。これ本則で書類を追加しているので、特例が終わっても本則部分はなくならないということでは…?

③重複する添付書類の提出を省略

同じ書類なら提出を省略していいよ、という規定。通常は申請ごとに全部つけないといけません。その理由は、その1回の申請書と添付書類だけで内容を確認できるようにするためでしょう。

④自動計算様式の活用を促す

通常版、Excelの計算式入りでなく、Wordです。

・対象期間の特例

雇用調整助成金が受給できる期間のことを「対象期間」といい、通常は1年間ですが、今延びに伸びて、事業所によっては2年半以上になりました。

平均賃金額の算定に用いる年度の変更

この規定は令和4年から追加されたものと思われます。労働保険料申告書から拾ってくる賃金総額は、申請の初回の時に使った数値をそのまま使うのが通常ですが、コロナ特例は対象期間が本来の1年から大幅に伸びたため、令和4年度の途中から労働保険料申告書の最新の数値に変更する規定が追加されたようです。

今回はこれまで。