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インボイス制度 所見① 1冊本を読んでの感想

先週、インボイス制度の勉強をしていると書いた。そこで今さっき1冊の入門編の本を読んだところである。それを読んだ感想である。

まず最初にお断り。インボイス制度の記事は、本や資料を読んでアウトプットしていきつつ自身の理解につなげたいと思っている。勉強すれば理解は変わっていくだろうが、書いた記事の内容は誤字脱字以外は変えないにしようと思っている。大きな間違いは取消線対応をしようと思っている。そうでないと勉強にならないだろうから。

あと自分の理解が固まってから、確定事項と思って記事にしているわけではないのでそこは誤解されないよう。また直近に発売された本での理解であって、直近の改正に基づいていない可能性があるかもしれない。そのあたりはご了承いただきたい。*1

以下本題にうつる。

お断り:免税事業者の個人事業主であって、インボイス制度導入後は消費税の申告の必要のある個人事業主を「個人事業主」、免税事業者の個人事業主と取引している消費税の申告義務のある法人を「会社」と簡略して表記する。消費税は非課税、不課税、免税とややこしいが、そこはこの記事で省略している。

1 個人事業主がメインで報道されているが、個人事業主と取引している会社もかなり重要ではないか?

インボイス制度でニュースになるのは、個人事業主で、個人事業主がこれから消費税を申告することによる売り上げ減がメインだが、会社も厄介である。個人事業主が登録番号を取ってもらわないと、個人事業主相手からの取引に関して消費税の控除ができない、(勘定科目)「仮払消費税」が計上できないわけだから、会社の消費税の負担増につながる話になると思う。

会社の方も何も手を打たなかったら経理処理上、仮払い消費税が費用になることに気づいた。

となると、個人事業主と取引をする会社としては個人事業主に登録番号をとってもらいたいところ。ただ、個人事業主からすると今のまま経理処理すると、売上のうち約10%は消費税となる。約10%売上が下がるのはキツイ。しかし売上を同じにしようとすると、売上は免税事業の時と比べて約10%値上げする形となり、逆に取引先の会社から見ると仕入れ値(費用)が値上げになる。それだと免税事業所の仕入れ分の消費税の控除がなくなるとの殆ど同じ効果になってしまう。

つまり、今までの売上、費用を維持しようとなると、個人事業主か取引会社、どちらかの消費税納付額が増える=利益が減る仕組みである。

当然、”益税”の仕組みというのはインボイスが話題になる前から知っているし*2、消費税を負担している最終消費者から見ると、自分たちが負担した消費税を免税事業者が懐にいれているという、この”益税”を解消するという仕組みは理解できる。

あと、税務当局からすれば、消費税を個人事業主、会社のどちらかが負担するということであり、納税額としては変わらないので、免税事業者がインボイスを無視しようが登録しようが消費税納税額は理屈上は同じである。つまり、個人事業主インボイスを無視しても国税庁はそこまでは困らないと思う。*3

要するにこのインボイス、かなり会社の負担も大きいというのが感想である。個人事業主に無理強いをするのは優越的地位の乱用といわれても、消費税の負担を個人事業主の分余分に負担するのはキツイ。

2 真面目に先んじて取り組んだ個人事業主が損をする、ということにならないか?

免税事業主は売上もそれなりなので、税理士にも依頼できない、経理担当も雇えないというところも多いのは今に始まったことではない。今でも青色申告書とかもかなり精度が低いものがある。源泉所得税をしていない個人事業主もあるそうだし。果たしてこのインボイスの登録、できるのか?やれるのか?個人事業主全員が?というのが感想である。できなかった場合の負担は、取引相手の会社がかぶるのか、それとも税務当局が指導とかしてなんとかするのか、今のまま続けるのか、このあたりが不透明。

ひとつの会社だけ取引している個人事業主なら話はわからなくもないが、完全フリーな個人事業主は、インボイス制度は知らない、知る気もない、調べる余裕も気力もない人もいるはず。その人たちをどうするのか、という話。

最悪のケースがインボイスを知らずに現在の免税事業主のままでいた結果得をした、という話にもなる場合。そうなると真面目に取り組んだ人が損をする。真面目が損をするのは世の常ではあるが税負担の公平性に欠けるのはあまりいい気がしない。税務当局が今後なんとかするだろうと思っているのだが、おそらくかなりの割合の個人事業主インボイス登録をせずに令和5年10月を迎えるのではないかと思っている。

3 会計ソフト選びは慎重に

私が読んだ本の中には会計ソフトのおススメが載っていたが、私はそれには賛同できなかった。会計ソフトの名称は言わないが、私は経理処理に簿記とかの知識はある程度必要だと思うし、どうしてこういう計算になったかという理解は必要だと思っているからである。会計ソフトの中には「借方」「貸方」がないものもあったりして、それはどうなんかなあ、と思っている。当然、事業によってはそこまで目くじら立てたり、わざわざ税理士に頼むほどでもない処理数や勘定科目が固定化されているケースもあるだろうが…。

あと、クラウド型がパッケージ型よりすべての面で優れている、という案内には異をとなえる。クラウド型を否定する気はないが、経理ソフトに限らずなんにでも弱点、デメリットはある。クラウド型はインターネット障害、マルウェアによる攻撃、情報漏洩、使用不可などがある。私はIT関連でない個人事業主ならばパッケージ型でインターネットに繫がないのもありだと思っている。パッケージ型がクラウド型より処理速度が遅い、というのはあまり同意できないなあ。インターネットが遅い、繋がりにくい所もあるし。

あと個人事業主にとっては不要な機能がある高額ソフトはいらないが、安ければ安いほど、なにかの機能は削られている、と思った方がいい。

自分にあった会計ソフトを選びたいところである。最初の利用は定番ソフトでいいと思うが。

4 極端なタイトルの記事・投稿を鵜呑みにしないように

最後は本以外の話。どうもインボイス制度は一部の人にとって税負担が増えることは事実であるため反対されるのは当然だと思う。ただ、制度の紹介自体が反対論をベースに紹介されているものがある気がしてならない。(国の説明はその逆)。特に動画サイト。自分の意見・解釈を言うのは自由だが、真面目にインボイス登録した人は損をしたと煽る動画も残念ながら見受けられる。趣味とかしてみるのならいいのだが、これは事業の損益に絡む問題。事業主・実務担当としては、事実なのかはきちんと確認したいところ。

根拠がない私見だが、先に登録した人、つまり真面目に国の方針に従った人が”損”をした(笑)と大々的に宣伝されて国が黙っているはずがない。絶対に何かしら動く。だから一部動画を見て不安に駆られて登録したものを取り下げしたりしない方がいいと私は思う。ぐちゃぐちゃになって本業に響く。

尚、登録するかどうか様子見するのは”あり”だと思っている。読んだ本が書かれた現時点の紹介がそのまま導入されるかどうか不透明だと私は思っているので。

*1:雇用調整助成金の記事にも散々言っていたので改めていう必要はないと思っているが、国がやることを最終確定するまで待ってから勉強を開始していては遅い。先んじて勉強し、改正があったら追っかけて行った方がいい。まにあわなくなってもしらんぞ~

*2:免税事業者は今まで益税をしていたからどうこうという正義の使者のような話はしない。取引先が個人事業主で免税なのに消費税と称して料金をとっている場合もあるらしいがそれも話が反れるので省略する

*3:無視した場合の色々なケースをまだ把握していないので、”思う”と現段階では表記した