けーせらーせらー

仕事、メンタル、労働法、転職、書評に関するエトセトラ

面接の質問:あなたを雇用した場合、自社でどんな成果をあげてくれますか?

今回は面接の質問の1つについての記事。

「あなたを弊社が雇用した場合、〇〇部門(志望した職種かつ経験あり)で具体的にどんなことを実施して、どんな成果をあげてくれますか?」

この質問をされた人は結構いるのではないか。現に私は何度か質問されたことがある。「あなたを雇用したら、うちの会社にはどんなメリットがありますか?」という質門と同じ趣旨でもある。「あなたのこれまでの経験がどう活かせますか?」と似ているように思えるが、そう易しい質問ではない。同業種で働いた(同じ物を売った)経験でもない限り数字には安易に置き換えれらないし、着実な業務遂行、協調性を活かして…といった話では抽象的な回答になってしまう。

「あなたのこれまでの経験がどう活かせますか?」という質問だと、「これまでこんな成果を上げてきましたので、これを活かしてどうこう…」と過去の実績から導き出す答えになるが、これは未来の話である。過去の経験を混ぜつつ話すとしたら、的外れな経験にならないようにしいないといけない。

本音をいえば、その現場に入ってみないことには予測すらできない。そもそも根拠もなく推測したものは的外れになる可能性もある。例えば安易に「売上前年比200%します」といっても根拠がなければ荒唐無稽。「では、どうやって?」と畳みかけられる。だからといってバカ正直に「実際入ってみないとわからないです」みたいな答えをしては当然ダメ。入ってみないとわからないことは面接官は百も承知。コンサルタントでもまず現場の状況把握とか数字とかの分析をしてからだろう。

この質問は正解をだせないことが前提。どうあなたが答えるかを見ている。

この時あなたはどう答えるか。この回答は前のマンガを題材にした面接の話でも引用したのだが、あなたがこの会社に入った時の「イメージ」が重要になると思う。「うちの会社に入ってあなたはどうしたいのか」。「あなたがわが社でどういう状態でいたいのか」を聞いていない。「to being」ではなく「to do」。そのイメージをどう表現するかを面接官は知りたい。面接官側もあなたが入った場合どうなるのかイメージができるような答えが聞きたい。

またそのイメージから、あなたがその会社、その部門を志望した動機が見えてくる。マニュアルを読んで参考にするのはアリだと思うが、マニュアルどおりそのまま答えてもすぐにバレるものである。マニュアルの暗記は質問を畳みかけたり、ズラした質問をすれば熟練した面接官なら容易に崩せる。

あなたのなかで答えが見つからない時は、おそらく「入社した場合こんなことをしたいから」という目的がないからであろう。給料、職場環境、雇用の安定性、人員構成、そこに入社することで得られるステータス、満たされる自尊心、出勤・勤務時間、雇用形態、休日、時間外労働の有無、転勤の有無、福利厚生などが本当の志望動機だからだろう。その会社の一員になりたいのであって、その会社で〇〇をしたいという具体的なイメージはしていない。

または「〇〇をしたい」という希望はあっても、会社にどんな利益をもたらすまでは考えていない場合もある。成果がなければ「今すぐに猫の手でも借りたい」ほど人が足りない法人以外は新たに雇うメリットがない。手が足りないだけならば、期間限定の雇用=非正規か派遣社員でよい。

別に給料等で志望してもいいじゃないか、そんな質問は同業種での経験や、その会社にいて正社員転換などを希望する人間、前から出入りしていた経験がある人間の方が有利じゃないか、そんな質問はコンサルタントに聞いてくれ、と心の中で反発するかもしれない。だが本音は本音。本音を面接で回答するのはふさわしくない。上記のような本音を初対面である面接官に話すような人間は、入社してもあれやこれやできない言い訳を常にいい、ちょっと問題があれば愚痴ばかりいい、文句があるなら辞めればいいのに居座り続けようとする。明かに組織にマイナスの影響をもたらす人間かと想定されかねない。ぶっちゃけ、そんな人間を欲しい組織はない。

それに仮にもしそこで働いた、出入りしていた経験のある人に対してこの質問をしたとしたら、求めるレベルが違う。その現場を知っている以上、より具体的な成果を示す必要がある。実力は面接前に知られているので、その人がその回答を実現できる能力があるかどうかが推測できてしまう。質問される側にとって決して有利な質問ではない。

だから志望動機が別だった場合は、この質問の回答は事前に想定しておいた方がいい。

ではあなたがその質問に対し何らかの答えをした後の話に話を進める。

面接官は想像するだろう。あなたが納得できる合理的な説明のできる話の上手い人間か、無謀でも壮大な夢を語るタイプか、当たり障りのない人かもしれないが堅実派か、無理やり過去の経験から答えを引き出しつつ自己の経験をアピールしようとする面接のマニュアル慣れした人間か、答えられない時はあたふたする人間か、何とか懸命に答えを絞り出そうとするか、そこで上手く答えられなかったら意気消沈してしまうような一度の失敗でめげるタイプなのか、なんにも考えてなくて「給料だけ見て応募してきて何も準備してないな」と思われるか。

どういう印象を持たれればよいかは私にはわからない。なぜなら、その答えをどう評価するか、そもそもその質問の回答にどれだけ合否の比重を置くかは会社の自由なのだから。

以上あくまで質問の一例の話。もしこの質問への回答がバッチリだったとしても、30分~60分ぐらい面接をすれば想定しないような質問がでてきてもおかしくない。そんな時あなたはどう答えるか。準備バッチリの回答よりも想定外の質問ほど人柄がでる。そこであなたが企業が求める人物像に合致するか確認しているわけだから、どう答えたからと言ってあなたが優秀かどうかが決まるわけではない。面接の質問のたったひとつで合否が決まると豪語する自称プロは、99%大したことがない。一発で決まる場合は、回答ではなく、面接室に入ってきてすぐの振る舞いと話し方と顔つき(イケメンか美女という意味ではない)だろう。

尚、当然だが、新卒面接や、極端な人手不足の会社の面接、最初から人間を使い捨てるつもりの会社の面接は除く。

ちなみに求人側、求職者側としての私の答えや考えはあるが、身バレしたくないから述べない。ただ、個人的には根拠の薄い「未来予測」は願望にすぎず、相手や自分に期待しすぎたり、想定外の事態に弱いなどの悪弊があると思っているので、私は好きではない。(仕事上必要な収支予測なぞ、社長の希望と形式に則った作業だと思っている)。起こった出来事について、感情での判断は避けて、現状を的確に把握し軌道修正したり、迅速に柔軟に対応するのが正解だと思っているからである。「予測」は「予測」。対応すべきは今起こっている「現時点」なのだから。

だから、この質問は「未来予測」能力の確認ではない。あなたの人間性とあなたが転職先でやろうと思っていることの確認をしたいから質問しているのである。